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もも、いい方に捉えるんだぞ。

まもちゃんは、いつもわたしの目をじっとみつめて、
真剣な表情でそういう。

「前向きにとらえるんだ。いいようにとらえるんだぞ」って。

まもちゃんと出逢ったのは、昨年の夏だ。
まもちゃんは猟師で、毎週山に入っては何時間も歩き続ける元気なおじいちゃんだ。猟師としての腕前も、猟師仲間たちに一目おかれている。
毎週末になると、小屋で酒盛りがはじまる。近所の人たちや知り合いもふらっと集まってきて、鹿やイノシシの鍋や焼き肉をつつく。

何度かおじゃましていたけど、緊張してしずかなわたし。
12月のあるとき、帰り際、まもちゃんはわたしにしっかり目を合わせて、力強く声をかけてきた。
「もも、もっとこころを開くんだ。ここには、人生の先輩がい~っぱい、いる。いろいろ質問してみるんだ。好きにしていいんだから、もっと明るくなれ」
しずかなのはもともとで、わたしなりに楽しんでいたつもりだから、困ってしまった。
だけどなんだかその日から、次第に、小屋のおっちゃんたちとこころを通わせられるようになってきた。
行けばあたたかく満ち満ちた感覚になり、たけじいはわたしをみてはいつも、「あかるくなったな~もも~」といった。
その度にわたしは、「いや、打ち解けただけですよ~」と笑って返すのだった。

これも12月、女性のひきこもり特集でテレビに出た。
「テレビみたよ~」てたけじいが言った。それを知ってか、たけじいはいつも、「明るくいないと~こうやって人と繋がって、楽しくやっていかないと~いっけないじゃん!」と言ってくれたり、沈みやすい繊細な子なのだろうと気を使って、よく心配してくれるのだった。

まもちゃんは、「もも、病気だかなんだか知らないけどな、気にすることないからな。み~んなおんなじだから。俺も障がい者だから(足りないところばっかりだから)若い頃、俺もいろいろ苦労した。食うに困ることもあった。だけどな、仲間が助けてくれて、ほんっとにありがたかった。
いいか、いい方に捉えるんだぞ、ぜったい、なんとかなるから」

まもちゃんは、オーラがあるのだ。
言動に意思があり、瞳がきらきら輝いているのだ。
とてもかっこいいのだ。あたたかくて、遊び心があって、ひとつひとつにこだわりを持っていて、人としての器がでっかいのだ。
まもちゃんの持っている熱と魅力が空間いっぱいに広がっていて、それがいろんな人を惹きつけているのだろうし、わたしは大きく守られているように感じられるのだ。安心して頼り、元気をもらい、またがんばろうとエネルギーチャージするのだ。
それは、言葉だけで再現できるものではない。
ここ最近で、いちばん熱を感じる人だ。

それで、最近はまもちゃんのその言葉をお守りみたいに抱きしめて、あれこれわるい方に考えたときに、ちがう見方やいい方を考えてじぶんに声かけしてみる、ていうのをやっている。
まもちゃんにはとても、守られている。まもちゃんのような、いくつになってもきらきら輝いていて、遊んでいて、本気で、あったかいでっかさをもっている、その空気と思い出でだれかを守れるような人に、なりたいな~と思う。

また、会いにいこう。

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