ツラツラ小説。 残り香。

ツラツラ小説。 残り香。

動かない時計、留まる遺影。
また1人、また1人と消えていく世界に、

とある匂いが残っている。

あれは、香水。
あれは、朝ごはん。
あれは、蒲団の汗。

消えていったあなたが残していった、一つの匂いに、私は執着している。

私は後世になにを残せるだろうか。
また、何ができるだろうか。

今は何者でもない私、という存在に、あなた、という人物が匂いを残した。
私はその匂いを追いかける。当てもなく気の遠くなるほど遠い道。
ゆっくり歩いていくうちに。

あなたの残り香へと、たどり着いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?