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倒産したタオル屋さん


まだ独身だった頃、事情があって本業の他に単発でアルバイトをしていた時期がありました。荷物の仕分け作業、ウエイトレス、コンパニオンなど色々していましたが、コンパニオンをしていた時に出逢ったおじ様たちのお話。

コンパニオンといってもイベントコンパニオンやピンクコンパニオンではなく、宴会やパーティーなどで接客するコンパニオンです。主に宴会の仕事が多く、酔っ払いの相手は苦手だなあと思いつつ、お金の為に続けていました。幸い、当時はお酒が強かったのと仕事だという緊張感があったので乱れたり暴れたり記憶を失う事にはなりませんでした。

数々の宴会の中で印象に残っている宴がありました。タオルを製造する会社の宴会で、男性客4、5人だったと思います。コンパニオンの人数は私を含めて3人でした。おじ様たちはコンパニオンを利用するのが初めてだったようで、最後まで羽目を外す事なく穏やかに宴は終わりました。終わりの挨拶を終えたあと、おじ様たちが私たち一人一人に大きな紙袋を手渡してきました。中を見ると、紙袋いっぱいに入った大小様々なタオルでした。話しによると、タオルの会社は倒産してしまって最後に皆でお金を出し合ってコンパニオンを呼んでぱーっとやろうって話になったようです。会社にあった最後のタオルは私たちにお土産として持ってきて下さったとか。

その話をきいてなんだか切なくなり、胸がきゅうとなりました。お店の前でおじ様たちのお見送りをしましたが、哀愁漂う背中に胸が締め付けられました。

家に帰り、もらったタオルを紙袋から出しました。ざっと20枚くらいあって、ミッキ◯マウスやクマのプ○さんの刺繍が入っているものなど色々な種類のタオルがありました。どのタオルも丈夫でいいタオルでした。どんな想いでこのタオルを私たちにくれたのか。そんなことを考えたらまた更に胸がしめつけられました。

結婚する時に迷いましたが、まだまだ使えそうだったのでタオルも一緒に嫁入りしました。子供が生まれ、大きくなって保育園でそのタオルは活躍しました。次男も生まれ、大きくなって幼稚園でそのタオルは活躍しました。私も出かける時にカバンに入れていました。

だんだん硬くなって、雑巾になって捨て、だんだん硬くなって、雑巾になって捨て、だんだん硬くなって、雑巾になって捨て、そうやって20年以上使っていました。タオル屋さんもあの時のコンパニオンがそんなにも長くタオルを使ってるなんて、ましてや嫁入りするなんて想像していなかったと思います。普通なら結婚する時に捨てるんだと思います。でもなんだか捨てられなくて。今考えると、なんでそんなに長く使っていたんだろうと。とっくに硬くなったタオルを子供たちに使わせたんだろうと。よく考えたらとんでもなかった。とんでもない母親だ。この記事を書きながら本当にとんでもないなっと思えてきました。いくら丈夫なタオルだからと20年以上使うなんてとんでもない。物を大事にするのはステキな事だけれども流石にしすぎるにもほどがある。とんでもない。

最後に捨てたタオルは確かピンク色のミッキ◯マウスの刺繍が入ったハンドタオルだったような。ドナルドダック◯の緑のタオルだったような。





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