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ふくしまの、まちをつくる人たち #9

Kumando Yasai  菅野雄一 -Kanno Yuuichi- 

1.地域の飲食店とイタリア野菜をつなぐ

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 私は今回、kumando yasaiという屋号でイタリア野菜を作っている菅野雄一さんにお話を伺いました。

 菅野さんは、伊達市にある料理店で働いていたとき、シェフ達からイタリアの郷土料理について学びました。一緒に働く中で、そのシェフから「トスカーナ地方の冬の煮込み料理には、特有の苦みを出す黒キャベツが必要不可欠なんだけど、この辺では作ってないんだよね。」という声を聞きました。それなら、黒キャベツを自分が作ることが出来れば、シェフの力になれるかもしれないと考えたことがきっかけで、イタリア野菜を作り始めたそうです。

 菅野さんがつくるイタリア野菜は、福島市から伊達地域まで、近郊の個人料理店に多く卸しています。イタリア料理店でのサービスの仕事を通じて得た経験や知識が今も活きていて、このシェフはこの地方の料理を得意にしているから、この野菜が必要だろうと予測して、野菜をつくることもあるそうです。
 その独自の販路を通じて、時にはシェフの要望に応えて野菜を作ったり、時にはこのシェフにこの野菜を使ってもらいたいと思って提案したりしているそうです。このような、地元の飲食店との連携のきめ細やかさが、農家としての菅野さんの魅力です。
 私が普段、ご飯を食べに訪れる「食堂ヒトト」や「Trattoria da Martino」にも、菅野さんの野菜が使われていると聞いて、ますます興味が湧きました。

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2.イタリア野菜を日常の食卓へ

 私にとってイタリア野菜は、あまり馴染みのない野菜で、なんとなく手に取りにくいものでした。しかし、今回取材を通じてわかったことは、一般の家庭でも身近に使ってもらえるように、菅野さん自身が考えて販売しているという事です。
 例えば、ギリシャが原産の”ゼブラナス”は、一般の消費者にもわかりやすいように、”しましまナス”という名前で売っています。ネーミングがかわいくて手に取りたくなりますよね。日常的に使えるようにという視点では、ネーミングだけでなく、価格も日々の料理に使えるような設定になっています。
 私の暮らしの中にあるイタリア野菜のことを思い返すと、例えばズッキーニを初めて見た時、何このキュウリ!?と驚いたことを思い出します。そんなズッキーニも、今では我が家の食卓に欠かせない夏野菜になっています。

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 菅野さんの「イタリア野菜を身近なものにしたい」という想いは、もっとたくさんの種類のイタリア野菜が家庭の食卓に広まって、家庭料理のバリエーションを増やす事につながって行くはずです。
 私は、イタリア野菜が今の日本の地方でそれほど流通していないことを考えると、この地域で採れるイタリア野菜をブランド化した方が良いのではないかと考えていました。しかし、菅野さんの感覚は違っていて、ブランド化してしまうと一般家庭から遠くなってしまうため、それは自分のやりたいことではない、ということでした。イタリア野菜をブランド化してしまうことは、菅野さんがよくインタビューの中で言っていた「地域に根付いたサービス」が提供できなくなってしまうのだと思いました。

 この取材の最初に「イタリア野菜はおしゃれで作っているわけじゃない」と言っていた菅野さんの言葉には、「自分が惚れ込んだイタリア野菜が、この地域でもっと一般的に扱われる食材になれば」という強い想いあるのだと知りました。この話を聞いて私は、卸し先の道の駅や産直に行ったら、菅野さんの野菜を率先して買いたくなりました。ぜひ、たくさんの人に食べてもらいたいです!

ライター:宮崎みさ

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