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蔵前のまちのこと#4

Ayano Fukumura glass art jewellery 福村彩乃さん

台東区小島には、台東デザイナーズビレッジというクリエイターの育成施設がある。
おもしろいのは、閉校となった旧小島小学校を活用して、元の教室をアトリエとして若手作家に貸し付け、作家は自分の製作活動を通じて家賃を支払っていく、という仕組みだ。
その中で、214号室にアトリエを構えていらっしゃるグラスアートジュエリー作家の福村彩乃さんにお話を伺ってきました。

ステンドグラス作家の父親と音楽家の母親の影響を受け、幼少期にピアノをはじめたという福村さん。名門・桐朋学園大学に入学、海外での演奏会にも出演するなど、ピアニストとして活躍をされていました。
そんな福村さんは、大学生の頃、音楽を通じて人と人がつながっていけるようなことができないかと考えるようになり、自分でイベントを企画するようになったそうです。そこから、アートマネジメントの分野などに興味を持ち、大学院では音楽をより学術的に学ぶため、東京藝術大学の音楽文化学を専攻しました。


この時期、福村さんに転機が訪れます。大切なご家族が病気で亡くなられたのです。
深い悲しみの中、葬儀に参列してくださった方々のために何かできることはないかと考えた末、昔から家族で慣れ親しんでいたガラスで箸置きをつくり、それを贈り物にすることを思いついたそうです。


この時の箸置き製作を通じて感じた家族のつながりや幸福感から、ガラスが自分や家族のアイデンティティーではないかと感じて、ガラス作家としての道に進むことを決めたそうです。


今では、ピアノを演奏する中で見えてくる音の印象や旋律が持つ世界観を一枚のガラスの板に映し出し、それを細分化したものをアクセサリーにしています。音楽だけでなく、モネの睡蓮をイメージした作品も見せて頂き、当時、東京都美術館で開催中のモネ展で見た睡蓮のイメージと重なり感激しました。


そんな福村さんに、台東デザイナーズビレッジがある小島周辺のまちについてお聞きしました。


__デザイナーズビレッジに入居されたのはなぜですか?
私は、音楽の世界からファッションの世界に入ったので、最初はわからないことが多く、作ることはできてもそれを多くの人に知ってもらう方法などはわからないという状況でしたので、まずファッション業界のことを学びたいと思いました。
その中でもここを選んだのは、東京藝術大学の卒業生がいたり、建物が素敵だったりということと、何より村長の存在が大きく、的確なアドバイスと優しい人柄がとても魅力的で、この人のそばで3年間製作をしたいと思いました。


__デザイナーズビレッジ周辺のまちは、ものづくりに良い土地柄だとおもいますか?
はい、1つは材料のお店がたくさんあることです。例えば、アクセサリー製作でも、ガラスの部分は自分で製作していますが、それ以外の部品などは台東区内で仕入れています。それから、モノマチというイベントを通じて、ものづくりに携わっている人とつながることができたり、情報交換できたりするので、クリエイター同士が密接に関わっていて、仲間が多いことも魅力です。


__デザイナーズビレッジ周辺のまちで、誰かに紹介したい人・モノ・コト・場所はありますか?
バンバールさんという近所のピザ屋さんはとてもおいしいですよ。それから、結わえるさんという玄米のご飯のお店もおいしいです。昔からこの辺りでものづくりをされている方といえば、江戸切子ガラスの木本ガラスさんは、私も親しくさせていただいています。

このまちは、クリエイターのとって製作しやすい環境が整っている。作るための材料がすぐに調達できるっていうこともそうだけど、一番大きいのはネットワークだ。ものづくりという同じ夢に向かって、共感の輪が広がるネットワーク。そうやって、このまちの人たちはつながっている。


ふくしま空間創造舎 上神田健太

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