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ふくしまの、まちをつくる人たち#2

ecru    梶原映実  -Kajiwara Eimi-

___ecruを知った日。

はじめてecruのことを知ったのは、今から4年前、ecruがスタートした日のこと。

福島の友人から、「今度、友達がフリーランスでウェディングプランナーをやるんだって」と教えてもらった。その時見たHPの世界観や、同い年(当時26歳)で独立して事業を立ち上げたことへの驚きを今も覚えている。

残念ながら、その時自分の結婚式はもう終えてしまっていて、梶原さんには依頼できなかったんだけど、結婚式を終えた今でもecruのインスタやFBを見ては、どんな素敵な結婚式が福島で行われたんだろうと、気になって見てしまう。自分が結婚式をすることはもうないのに。笑

もう、結婚式を見たいというよりは、どんなセンスのいい夫婦が生まれているんだろうとか、次はどんな新しい空間が生み出されたんだろうという、人や空間を見たくなる。1回1回、結婚式の数だけ、素敵な空間が増えて行く。新郎新婦の想いと、梶原さんのセンスがぎゅっと詰まった空間が、写真を通して伝わってくる。

___ウェデイングプランナーという仕事。

梶原さんは、フリーランスのプランナーとして仕事を始める以前、県内の結婚式場に勤めていた。子供が生まれたことをきっかけに、子育てしながら自分のやりたいことを続けるにはどうすればいいかと考えた末、フリーのウェデイングプランナーになることに辿り着いたんだそうだ。

子育てがきっかけだったとは言え、梶原さんの当時の想いを聞くと、それ以外の方法はなかったように感じた。というのも、梶原さんがつくりたいウェデイングは、組織に勤めていては多分できないものだから。

梶原さんは、結婚する2人が好きなこと、好きな場所、好きな人と作り上げる、オーダーメイドのウェデイングをプロデュースしている。

結婚式を挙げたことのある人ならよく分かると思うんだけど、日本の結婚式のスタンダードは、式場選びから始まって、式場で契約している花、衣装、司会、料理が半自動で決まっていくシステムになっている。もちろん、それが悪いということは全くなくて、すごく便利だし、多くのお客さんがこれまでの結婚式のあり方で満足すると思う。

ただ、これから結婚式を挙げる世代のニーズの中には、今の形態の結婚式では満足できない人たちがたくさんいる。アウトドアで式をしたい人もいれば、自分の知り合いの作家に衣装を頼んだり、お気に入りの花屋に装飾をお願いしたりしたい人もいる。

ウェディングに対する新しいニーズに対して応えてくれるプランナーは、特に地方ではそんなに多くない。結婚する2人の感性を大切にしたウェディングをプロデュースする、それが梶原さんの仕事なんだ。

___仕事を通して感じた福島のこと。

ecruがスタートしてから数年、福島を拠点にしているにも関わらず、その周辺地域からの問い合わせが多くて、むしろ福島の方からの依頼が少ない、という状態が続いたのだという。

梶原さん自身、福島のことが大好きで、この土地を拠点にプランナーとしてやっていきたいと思い立ったものの、実際は県外を回ることが多くなった。数年かけて実績を積んで、HPやInstagramなどで情報発信をするうちに、口コミで評判が伝わっていって、今では県内のお客様の方が多いという状態まで持っていくことができたのだそう。

この経験を通じて、梶原さんは、個人を信頼して仕事を頼んでもらうことの難しさや、知り合い同士を通じて広がっていくネットワークやコミュニティの強さなど、福島独特の地域性を実感したんだって。

この地域性は、例えば新規でビジネスを始めたい人や、既存の枠組みの外で何かを始めたい人にとっては、ハードルが高い地域ということが言えるかもしれない。反対に、伝統的なものや老舗と呼ばれるようなお店などは、安定的にビジネスが行える環境と言えるかもしれない。

ecruが提案するウェデイングは、レストランであったり、キャンプ場であったり、これまでの結婚式の概念にはなかった場所で行うことも多い。一見、奇抜な印象を受ける人もいるかもしれないけど、その会場を選ぶことはそもそも2人が希望した場所であるとか、2人のイメージを受けて梶原さんが提案したものなので、結婚する2人にとってはすごく自然な会場になっている。

そういう会場では、そもそもウェデイングができる機能をもっていない場所なので、会場として使わせてもらう交渉から始めないといけない。福島の土地で、いままでやったことのないことを受け入れてもらうのは、きっと難しい場面もあったと思う。そんな環境の中で、ecruはこれまでになかったウェデイングの形を模索し、提案し続けている。

___一緒にecruをつくる"パートナー"

ecruは、立ち上げから4年目を迎えた今年、初めてアシスタントを1人採用した。結婚を控えたもっと多くの方に、ecruの考えるウェディングの在り方を届けたいという想いからだ。今、ecruは次の展開に向けて動き出している。

近年では、結婚する人の50%は、結婚式をしない"なし婚層"とよばれる層ができているんだって。実際、自分の周りにも結婚式はせずに婚姻関係にある友人も少なからずいる。ecruの提案は、結婚式に対する新しい価値観を提供することができるので、この"なし婚層"にもアプローチできる可能性がある。

ecruのウェディングなら、式場ありきではない結婚式を求めている人や、そもそも結婚式をしたくない人など、既存の仕組みでは対応できていなかったニーズに応えていくことができる。

梶原さんがアシスタントとして採用した橋本さん。梶原さんは橋本さんのことを"パートナー"と呼んでいるんだそう。自分ができることを代わりにしてくれる"従業員"は、今のecruには必要ない。それよりも、自分にない感性を持っていて、自分には付かなかったファンを獲得してくれる人と一緒に仕事がしたい。そうすることで、ecruとして新たなニーズにアプローチしていくことができる。だから、梶原さんが上という上下の関係性ではなくて、フラットな関係性を表す言葉として"パートナー"と呼んでいるんだって。

フリーランスのウェディングプランナーは、当然ながら式場などのハードを持っていない。だから、売れる商品という意味では、自分自身の感性や知識や人柄しかない。パートナーの橋本さんにも自分自身のファンを育めるようなプランナーになってほしい。そうやって、梶原さんはこれから新しいecruを2人でつくっていくつもりだ。

福島に1日限りの素敵な空間をつくり続けているecru。これまで仕事としてはほとんどなかったフリーランスのウェディングプランナーという形を実現しているのがすごい。現代の多様化した感性に合わせるように、ウェディングの在り方もどんどん多様化している。そこに、梶原さんのやりたいこと、子育てしながらという働き方のこと、きっと自分にもできるという想いが重なってecruが生まれたんだ。福島に、次はどんな素敵な夫婦と空間がつくられるのかな。

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ふくしま空間創造舎 上神田健太

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