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風鈴が知らせるのは恋の季節。








この時期になると…

家の縁側に風鈴をかざる







チリン… という音は、


わしに毎年、『 夏 』を知らせてくれている








そしてもう1人、
わしに『 夏 』を教えてくれる子がいる


彩:じぃじー!

爺:はいはい!彩ちゃん、よくきたね!

彩:うん!あっついね〜!




孫の彩がこの時期に帰ってくるのだ
この時期は近くで縁日があり、その日にじぃじの家に来るのが毎年の流れになっていた。



娘のおさがりの浴衣を着た彩

年々、会うたびに成長している
そしてそれを毎年見るのが生きがいであった





爺:ほら、この後また友達と縁日いくんじゃろ…?



彩:あー、うん……そう……かな〜。






どこか違和感のある言い方をする孫

その違和感ある物言いとは反対に赤い下駄を脱ぎ捨て元気に縁側を走り回っていた

彩:あっついなぁ〜!


彩は持っていたうちわで風鈴をパタパタと煽ぐ




チリン…チリン…チリン…





チリン チリン チリン チリン





突然の風に一生懸命に音を鳴らす風鈴






爺: 彩ちゃん



彩:うん?なぁに〜?



爺:そんなに煽いだらアカンよ…



彩:えー、なんでー?



爺:風鈴はね…自然に風が吹いたとき、初めて音が鳴る。それが綺麗で美しいんだよ…



彩:なるほどねー!風おきないかなぁ……




縁側に腰を下ろし、わしの横に座る孫

じーっと風鈴を眺めている

今時の子には珍しく、彩は素直な子だ












……








ドンッドンッドンッ



風鈴の音ではなく太鼓の音が響き渡る

近くの縁日が始まった合図だ





彩:あっ!お祭りはじまっちゃった!!!


爺:うん、いっておいで!


彩:風鈴…鳴ってほしかったなぁ……


爺:なぁに、またくればその時鳴るさ…







おーい!!あーやーちゃーーん!!!






庭の柵の向こうから孫を呼ぶ声が聞こえたー





彩:入ってきていいよー!





声から分かってはいたが、
今年の彩は女の子の友達ではなく、男の子を連れてきたようだ






〇〇:あ、どうも…こんばんは!



爺:あー、こんばんは!



彩:じぃじ、私の彼氏の〇〇くん!



爺:お、そうかそうか!縁日楽しんでおいで!


彩:ほら、○○いくよっ!

○○:うんっ!!!



彩:じゃあいってきまーす!



〇〇:失礼しましたー!




孫は相手の子の腕を掴み走って行った




爺:ふふふ…今時の子だったな……笑






その時……




ヒューッと風が吹き






チリンッ





と風鈴の音が鳴った





長年使ってきた風鈴が、


初めて我が家に
『恋の季節』を知らせてきたのだった

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