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〜 ザル平 の大冒険 〜Momo's house




ボンッ



〇〇:ぐっ……んんっ…



カーテンの隙間から日の光がもれるころ

僕の顔は何かに押し付けられた


どうやら隣で寝ている寝相の悪い桃子が原因

抱いていたぬいぐるみを僕に押し付け、いつもの枕に引っ越しをしたらしい




〇〇:うーん…ザル平か…




寝ぼけながらサメのぬいぐるみ🦈

通称 "ザル平" に声をかける


もちろん、返事が返ってくるわけでもない…


桃子:ん…?〇〇ぅ…

隣で寝てる桃子が僕の声に反応してきた



〇〇:だいじょーぶ…まだ寝てていいよー

桃子:んー…わかったぁ…



すぅ…すぅ…



昨日は夜更かしして映画を見ていた桃子

再び眠りにつくまでに時間はかからなかった





僕はザル平を適当に枕元の上に戻し、

桃ちゃんを追うように眠りにつく





コテンッ




置き方が悪かったのか、再び倒れてくるザル平




(あぁ…寝ようとしてたのに……)



さっきみたいに桃子を起こすわけにはいかないので、心の中でザル平に怒る


仰向けに寝る僕はザル平をたかいたかいする




(ザル平か……)




サメのぬいぐるみ…

桃子はクマのぬいぐるみがとにかく好きだ


遊びに行く時にたまについてきたりもする

理由を尋ねると、


かわいいし…かわいいし…かわいいだもんっ///


と少し照れながら謎な答えが返ってくる

どう言う理由だよ笑 と思いつつも…

かわいいのは事実だったので相槌はした…///




というわけで桃子は、
クマのぬいぐるみはたくさん持っている

でもサメのぬいぐるみは1つ


"ザル平"しかいない



なぜ桃子がサメのぬいぐるみを持っているのか

それには" 深いわけ "がある




〇〇:(懐かしいなぁ……)



僕はザル平を抱えながら

ゆっくりと" 深いわけ "のことを思い出し始めた












〜〜







Momo's House

〜 ザル平 の大冒険 〜









いらっしゃいませー!
ケーキまだ売ってますよー!
チキン1つサービスしますよー!



この時期の駅前はいろんな人でごった返している


付き合って3度目のクリスマス

桃子とは2時間後に、
この駅前で待ち合わせすることになっていた



だが…この日の僕は"ハプニング"の連続で…

とんでもないことにこれから巻き込まれていく





〇〇:なんで15%しかないんだよっ…




ごたつく駅前の商店街の中でひとりごとを呟いた

どうやら昨夜、桃子と電話をしていてそのまま寝てしまい充電をし忘れてしまったようだ。




〇〇:とりあえずぬいぐるみを取りに行かないと…


仕方ないので、
最低限だけしか触らないようにして節約をする


そして予約したクリスマスプレゼントをとりに人の流れに逆らってお店へ向かう


桃子へのクリスマスプレゼントは、
毎年、"くまのぬいぐるみ"と決まっている。


桃子が好きなのもあるが、
僕が1年目のプレゼントが大はずれだったからだ


1年目のクリスマス喜んでもらえると思って、
"赤と白のボーダー靴下"を買っていった




そしたら、、、


  桃子はウォーリーじゃないもん!!!!

と怒られてしまった


それ以来、変なのくれるなら
クマのぬいぐるみにしてと言われている



店員:いらっしゃいませー


そんなことを考えながら目的地である百貨デパートにつく


〇〇:あの…予約した〇〇です。

店員:はい、少々お待ちください。

〇〇:はい。



今回は桃子が持っていない
どでかいクマのぬいぐるみを予約した

そして、この後会う桃子の顔を想像する


ぜっっったいにうまくいくっ!

俺は心の中でガッツポーズをした!!!




しかし……




店員:えっと……〇〇様…

〇〇:はい


怪訝な顔をして店員さんが戻ってきた


店員:予約のメール見せていただけないでしょうか?

〇〇:あ、はい。これです


メールの内容をみせる
確認した店員さんが頭を下げた


店員:申し訳ありません。
 こちらの予約は来月の25日になっております。

〇〇:え?

店員:はい…こちらに……


店員の指差す先を見ると…
1月25日に予約と確かにかいてあった


〇〇:あ、ほんとだ……

店員:たぶん、日程を合わせる時に1つずれてしまったものかと…

〇〇:あの今日欲しいんですけど、無理ですかね?

店員:残念ですが受注販売のみとなっており…

〇〇:そうですよね…
  じゃ…じゃあまた来月取りにきます………






どうしよ……

自分の考え全てがパーになり頭が真っ白になる

とりあえずプレゼントを買わなきゃ…




○○:他のぬいぐるみってどこに売ってますか?

店員:でしたら、向こうのコーナーに、

〇〇:クマのぬいぐるみってありますかね?

店員:少し小さいのでしたらございますよ!

〇〇:ありがとうございます。



差した方へ向かうとそこはおもちゃコーナー
家族連れが多くかなり混み合っていた



〇〇:ない……


くまなく探してみたが、
クマのぬいぐるみは売り切れていた


そして隣には…

たくさん売れ残っているサメのぬいぐるみ……




仮に…


仮にだ……



サメのぬいぐるみを買って桃子に渡すとする…





〇〇:桃ちゃん!メリークリスマス!!

桃子:わ〜い!〇〇っ、あけていい?///

〇〇:う…うん……いいよ……

桃子: ……

〇〇: ……

桃子:ねえ!なんでサメなのっ!!
 サメってこと?!桃子そんな怖くないもんっ!

〇〇:え、いや…(それならクマも怖いじゃん)

桃子:変なの買うなら、
  クマのぬいぐるみって言ったよね!!

〇〇:ごめん…

桃子:もう…〇〇なんてしらないっ!!



〇〇: ……








うん、やめよ…
ぜったいやめだ…

手に取っていたサメのぬいぐるみをそっと戻す


クマのぬいぐるみすべきだと確信した僕は、店員さんに聞いてみることにした。


〇〇:あの…売り切れていたんですけど…
   もうクマのぬいぐるみってないですよね?

店員:少し在庫調べてみますね…


店員さんにお願いすると
カタカタとキーボードを叩き在庫を調べてくれる


店員:あの少々お待ちください。


そう言い残し、
今度は受話器を取り電話をし始める

電話を切ると、店員さんはこちらへやってきた



店員:どうやら、店内に在庫はないようです。

〇〇:そうですよね。

店員:ただ調べたら、違う店舗にはあるようです

〇〇:え?ほんとですか!!?

店員:ここから5駅離れておりますが…

〇〇:いきます!!

店員:わ、わかりました
  では取り置きしておきますね。

〇〇:ありがとうございますっ!!!!



背に腹はかえられない


桃子の笑顔がみれるなら、
桃子と楽しく過ごせるなら、


僕は全力で駅に引き返した









……




30分かけて電車に乗り、僕は別店舗のデパートについた

そしてエレベーターに飛び乗る



ピロンっ


LINEの通知音 

みると桃子からだった



桃子:(早めに着くー、〇〇はー?)

〇〇:(ギリギリになりそう…)

桃子:(わかったー!近くの喫茶店いるねー)

〇〇:(了解!)



こういう時って相方は何故早めに着くのか…

そんなことを考えていると目的の階へ



ダダダっ



〇〇:すみません…

店員:はい。どうされました?

〇〇:あのクマのぬいぐるみを予約した〇〇です

店員:あ、はい。少々お待ちください。

〇〇:はい







……



店員:こちらで大丈夫ですか?


店員さんがクマのぬいぐるみを持ってくる。

桃子に似合う可愛らしいクマのぬいぐるみ

〇〇:ありがとうございますっ!!!


はぁ……よかった…

やっと僕は、ひと息をつくことができた


店員:実はもう売り切れてるんですよ。
  電話してくださって本当に良かったです。

〇〇:良かったです!ありがとうございます!!


僕はお金を払い、
包んでもらったクマのぬいぐるみを受け取る


店員:素敵なメリークリスマスを。

〇〇:ありがとうございます。




ぷるるるるるっ

今度は僕の携帯に着信がきた



〇〇:もしもしー、桃ちゃんどしたー?

桃子:ねえねえ、どこにいるのっ??


〇〇:△△駅だよー

桃子:大丈夫?間に合う?

〇〇:うん、こっから30分あれば着くし、
  時間まであと50分はあるから!

桃子:もぉ〜やっぱり…電車遅延してるよ!!!

〇〇:えっっ!?ほんと?

桃子:うん、まってるから気をつけてね…

〇〇:うん、急ぐ!!




ぬいぐるみの入った紙袋を持ち、出口へ向かう

女の子を連れた夫婦と一緒にエレベーターへ



その夫婦の女の子はなぜか、
今にも泣きそうな顔をしていた

僕はエレベーターに乗り1階のボタンを押した



女の子:ひっく…ひっく……

母:ごめんね、売り切れてたんだもん…

女の子:サメじゃ…やだぁぁぁぁぁ

〇〇:!!?


まさか…とは思ったがよくみると、
女の子はあのサメのぬいぐるみを握っていた

女の子:クマさんがいいいぃぃぃぃ……

父:そうはいってもなぁ……



5…


4…


3…



エレベーターが1階へと向かっていく

その間もずっと駄々こねる女の子



チン



1階につきエレベーターの扉が開く


開くボタンを押す


父:すみません。


こちらに会釈をして去っていく親子
泣いていた女の子はお母さんに抱っこされていた



女の子の隙間から
サメのぬいぐるみが顔を出しこちらを見ている

サメ: ……


なぜだろ…とても寂しそうに見えた




〇〇:あの……


父:はい?













……








電車は遅延どころか復旧の目処もついてなかった


バス乗り場、タクシー乗り場は、
どちらも長蛇の列でとても乗れる状況ではない





結局、待ち合わせ場所には、
約束した時間から1時間遅れての到着だった




〇〇:桃子ごめん!

桃子:う〜…おそいっ!!


〇〇:ほんとにごめん!

桃子:連絡も取れないし、、、

〇〇:携帯の電池、途中で切れちゃって…

桃子:もぅ……

〇〇:さ、寒いよね…どこか入ろ……

桃子:もうどこもいっぱい…あと…

〇〇:あと?

桃子:寒くないもんっ!!これっ!!


桃子は紙コップを渡してきた


〇〇:これは…?

桃子:アイスココア!!!

〇〇:ありがと……え、アイス…?

桃子:も…文句あるの?

〇〇:ないです…


コップのフタをあけココアを一口飲む


桃子:つめたい…?

〇〇:いや…なんか……

桃子:ふ…ふん/// もっと冷たくすればよかった…



ふん…といいながら目を背ける桃子

桃子が隠し事をするときによくやる行動だった



(蓋つきの紙コップ…氷が溶けている?……)



〇〇:桃ちゃん…

桃子:な、なに?///

〇〇:いつから外にいたの?


桃子: ……さっき…


〇〇:うそ…だってこれホットココアだよね…

桃子: ……

〇〇:こんなに冷たくなってるし…


桃子:〇〇と連絡取れなくなってから…ずっと…


〇〇:え!!?(ってことは1時間半ちかく…)

桃子:昨日の電話後、充電忘れたんだろうなって。

〇〇:それは…正解。

桃子:すぐここには来れないとは思ったけど…

〇〇:けど…?



桃子:どこかで〇〇とすれ違ったら…嫌だからっ…

〇〇:俺のせいだ…

桃子:〇〇は?

〇〇:うん?

桃子:ここまでどうやってきたの?
  だって、電車まだ動いてなかったよ。

〇〇:あぁ…その…走ってきた…

桃子:え?5駅分?!

〇〇:うん…それが1番早そうだと思って、
   結局1時間遅れたけど…

桃子: ……ねぇ、なんであんな所にいたの?

〇〇:それは、、、



僕はクマのぬいぐるみを
買おうとして予約を失敗したこと

違う店舗なら売っていて
それを買ったことをあらいざらい説明した


途中から桃子はずっと下を向いていた





桃子:〇〇のバカっ!!!!!!!




〇〇:えっ…?

桃子:本当にバカ…もう知らない!!!


テクテクと先へ歩いていく


〇〇:ま、まって…桃子!!

桃子: ……


無視して桃子はドンドン進んでいく


〇〇:つ…次はちゃんと用意するから!!

桃子: ……


桃子:  〇〇は何もわかってないよ。

    桃子は " 〇〇 "といれれば幸せなの!!


〇〇:桃子…


桃子:寒いから帰ろ…〇〇、汗で冷えちゃうよ


〇〇:うん…本当にごめん


桃子:ううん。2年前の桃子も悪いから…
  あの時、この事伝えればよかったのに…


〇〇: ……

桃子: ……

〇〇:て…手繋いでいい…


桃子:いつもより冷たいよ?


〇〇:ずっと繋ぎたかったから…


桃子: ……はい///

桃子はそっぽ向いたまま
そっと僕の方へ手を差し伸べた








……




この日、初めて手を繋いだ2人は、
途中でクリスマスケーキを買い家に着いた





桃子:〇〇〜!笑

〇〇:どしたー?笑



お風呂に入り、ご飯にケーキも食べて

上機嫌になった桃子が隣にちょこんと座ってきた


桃子:えへへっ…///

〇〇:うわっ、なんかすごい嫌な予感…笑

桃子:あー、桃子おこるよっ!!

〇〇:えええ、なんでよ〜

桃子:1時間も遅刻してきたのに!!

〇〇:あ、いやそれは…ごめん。笑

桃子:ってなわけでプレゼントちょうだい!!笑

〇〇:あ〜、はいはい。この紙袋がそうです笑

桃子:わ〜い///



ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現する桃子

こういうところはすごく子供っぽい



桃子:どんな、クマさんですかね〜!

〇〇:お店の人に取っといてもらったんだから!

桃子:ワクワク!ワクワク!笑

〇〇:5駅分一緒に冒険してきた仲間だから!笑



ビリビリと梱包を外していく

突如、静かになる桃子



桃子: ……?

〇〇:あれ?どしたの?

桃子:〇〇…、何買ってきたの?笑

〇〇:え?クマのぬいぐるみだよ。

桃子:どうしてサメのぬいぐるみなのっ笑



ガサガサっと桃子がだしてきたのは、

サメのぬいぐるみだった

ポカンとしている僕を見て桃子は爆笑している

そしてここでようやく僕は思い出した


〇〇:あっ!!女の子と交換したんだっ!!!

桃子:女!? ねぇ、どういうこと!!

〇〇:女の子!!女の子がね、サメじゃなくて
 クマのぬいぐるみが欲しいっていってたから…




………





〇〇:あの……

父:はい?

〇〇:これクマのぬいぐるみなんで…
  (桃ちゃん、ごめんね…)

母:いえ、そんなわけには…
父:そうです。

〇〇:いいんです…その子喜ぶと思うんで…

女の子:お兄ちゃん、いいの?!

〇〇: ……うん…、クリスマスプレゼント!!

女の子:ありがとう!!

父:あの…お金だけでも。

〇〇:あ、いや…そんな…

母:支払わせてください。

〇〇:だったら、そのサメと交換しませんか?

女の子:この子?

〇〇:うん、お兄ちゃんとプレゼント交換!

女の子:うん、いいよ!

父:本当にありがとうございます!
母:すみません、助かります。

女の子:お兄ちゃん、メリークリスマスー!

〇〇:メリークリスマス!!




………



〇〇:ってことがありまして……

桃子:ふ、ふ〜ん…

〇〇:えっなに、そのリアクション…?


桃子:べつにっ…な、、なんでもないっ///


桃子は何故か頬を真っ赤にしている


〇〇:なんだよ、それー

桃子:と、と、とにかくー!!
  この子が〇〇とずっと一緒に走ってきたんだ

〇〇:まぁそうなるね。

桃子:陸なのにたいへんだったね…

〇〇:(いやまぁ、サメだけども…)


サメのぬいぐるみを撫でながらぎゅっと抱く桃子

桃子:ザル平!!!

〇〇:え?ざ、ざる?

桃子:ザル平!!この子の名前!!!

〇〇:わかった(これ以上はふれないでおこう)

桃子:今日のことはザル平に免じてゆるします!笑

〇〇:え、ほんと!!

桃子:だから、〇〇はザル平にお礼いって!!

〇〇:え?

桃子:はやく〜






〜〜













〇〇:ザル…ヘイ…ありが…と…zzz……


桃子:〇〇が珍しく…寝言言ってる笑

ザル平を抱きしめながら寝る〇〇を

横で桃子は嬉しそうに見つめていた




桃子:朝ごはん作らなきゃ…


〇〇:う〜ん…桃ちゃん…あさ…?


桃子:おはよう…まだ寝てていいよ…///


〇〇:わかった…




〇〇が寝たのを確認し、さっきのことを思い出す


ザル平ありがとう…って…

ぜったいクリスマスの日のことだ 笑





仲良く眠る2人を起こさないように台所へ向かう

季節は冬、家の中とはいえ、やはり寒い。




桃子:上着を着ようっと…




上着を着る桃子は

何かを考えて立ち止まり、

う〜ん…と少し考えていた


桃子:きょ、今日だけだからね…///


そう桃子はひとりごとを呟き、タンスを開けた



そして、



桃子:うぅ…恥ずかしい…///

桃子:なんでこの色合いの買ってくるかな…

桃子:普段から履きたくても履けないじゃん…。


と文句を言いながらも嬉しそうに



" 赤と白のボーダー靴下 " を履く桃子であった





おわり。

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