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〜もし彼女が0になっても僕は1を足していく〜



美月:〇〇!!ちょっときて〜

史緒里:ちょっと、やま!

〇〇:うん?どうした山下?

史緒里と仲の良いクラスメイトの山下が僕を呼ぶ
隣の史緒里はというと…


史緒里: ///


顔を真っ赤にしていた
それをみて僕はすぐに悟る

〇〇:(あっ、史緒里話したな…)

美月:史緒里から聞いたよー

〇〇:な、なにをー!。。

美月:あ、隠す気だーー笑

〇〇:だ、だから、、、なにを?

美月:2人付き合ってるんでしょっ!!!笑

史緒里:ちょっと、やま!!!
〇〇:山下、声でけーよ!!

美月:あ、ごめんごめん笑


山下のでかい声で周囲からもクスクスと声が聞こえてくる

まぁ山下の言うとおり、
僕と史緒里は最近、付き合い始めた。

史緒里とは自他共に認める仲の良い幼馴染、だけどそれ以上でもそれ以下でもなかった

その関係が晴れて1歩近づいたのである。



美月:それで…キスしたの?笑

史緒里:ちょっ、、、ちょっと
〇〇:ば、ばか!!

美月:えーまだしてないの?

史緒里:だって付き合い始めたばっかだよ

〇〇:山下!!また史緒里をいじって笑

美月:あはは、史緒里はいじりがいがあるから笑

史緒里:もうっ///

史緒里は顔を真っ赤にしながら美月に振り回されている、この光景はいつもの事ではある笑


美月:でも良かったね、史緒里!

史緒里:え?

美月:ずっーと、〇〇くんのこと見てたもんねー笑

史緒里:ちょ、ちょっと///

〇〇:え…そうなの?

史緒里:う…うん///

〇〇:あ、そう、だったんだ///

史緒里:いわないでよー///

美月:かわいいなぁ、史緒里は!!

史緒里:もう!!!

美月:そうそう、〇〇!!

〇〇:うん?

美月:史緒里のこと泣かせたら私怒るからね!

〇〇:当たり前だろ!絶対泣かせないから!!

史緒里:〇〇…///


この時の僕らは、
この平和な日常が毎日続くと思っていたんだ…



〜もし彼女が0になっても僕は1を足していく〜



高校を卒業した僕らは
一緒に生活をするようになった

いわゆる同棲ってやつだ

最初の頃はお互いにソワソワして、
慣れたら2人でテレビで映画を見ながら夜更かしをして…

史緒里がいつもいてくれる生活は楽しくて、僕の中で史緒里はどんどん大きくなっていった



でも…その日は少し違った



〇〇:ただいま〜

史緒里:えっと…おかえりなさい…?

いつものように玄関のドアをあけて「ただいま」と声をかけると史緒里が「おかえり」と返してくれるのだが…少し違和感だった


〇〇:うん?史緒里、どうしたの?

史緒里:あの…なんでもないです

〇〇:うん(なんで敬語?)

史緒里:あの

〇〇:なに?

史緒里:えっと…その…

〇〇:言いにくいこと?

史緒里:あっ、その

〇〇:いいよ、何でも言って笑


どうせまた無くしものをしたのだろうと僕はたかを括っていた
でも、それは全然違くて…

いや実際は無くしものなんだけど…

そんな僕の表情を伺いながら史緒里はつぶやいた

名前が思い出せなくて…



〇〇:へっ?

史緒里:どうしても思い出せなくて…

〇〇:僕の名前を?

史緒里:ご、ごめんなさい



彼女が無くしたのは僕の名前だった


最初は何を言われているのか分からなかった

ドッキリだ!!とも思った

でもそれは事実で、
史緒里の記憶の中に僕の名前は消えていた


〇〇:頭とかどこかぶつけたりした?

史緒里:いえ…

〇〇:体調わるいとかは?

史緒里:少しぼーっとはしますけど…

〇〇:病院いこうか。

史緒里:はい。

〇〇:車をアパートの前につけるからアパートの前で待っててくれる?

史緒里:わかりました


その時の僕はなぜか冷静だった
いや違う、実際はとても動揺していたけど史緒里の前で強がっていただけだった






〜〜






??:タクシー!!

私は左手をあげてタクシーをとめ、飛び乗る


運転手:どちらまで?

??:乃木坂総合病院までお願いします!

運転手:はいよ、ってかお姉ちゃんどこかでー?笑

??:あ、たまーにテレビとかでていて…笑

運転手:あー、女優の山下美月だ笑

美月:あ、そうですー笑

高校を卒業した私は進学ではなく、女優という道を選んだ

仕事が増えたのもあってか史緒里や〇〇とは久しく会っていなかった、
そんな中、昨日の深夜に〇〇から連絡が入った


【史緒里が入院した、乃木坂総合病院。】


私は居ても立っても居られず、「明日行く」と返信した。


乃木坂総合病院につき、史緒里が入院している部屋に向かう。

その部屋の前には…ベンチがあって、
ポツンと人が1人座っていた


美月:〇〇?

〇〇:山下か…

美月:久しぶり。史緒里は?

〇〇:この中にいる。今は落ち着いていて、史緒里の両親がついてる。

美月:そう…なにがあったの?


〇〇の両目にはっきりとクマが出来ていた

〇〇:昨日…突然、僕の名前が分からなくなった

美月:え?なにそれ

〇〇:先生は健忘症による記憶障害だろうって

美月:健忘症?

〇〇:記憶が部分的、または完全になくなる事。
史緒里の場合は私生活をする分には問題ないみたいだから部分的だろうと思うって…

美月:な、治るの?

〇〇:一過性によるものなのか…それ次第だって先生が言ってた

美月:そんな…

〇〇:大丈夫。

美月:え?

〇〇:山下のこと覚えてたから…

〇〇:くぼしたは健在だよ。

美月:そう…ありがとう。

素直に喜べるわけがない
1番辛いのは〇〇なはずなのに…


美月:〇〇は…

〇〇:うん?

美月:大丈夫なの?

〇〇: ……

美月:寝てないでしょ?目の下に大きなクマできてるよ。

〇〇:僕だけ名前忘れられてさ…落ち込んでたら…

美月:うん

〇〇:先生に言われたんだ

美月:なんて…?

〇〇:記憶障害の時って新しい記憶から無くしていくことが多いんだって…

美月:じゃあ、、、

〇〇:だから僕から忘れたんだろうって…

美月:〇〇…

〇〇:でもやっぱり納得できなくて…

美月:そうだよね…

〇〇:今度は親にいわれたんだ

美月:なんて…?

〇〇:苦しくなったら帰っておいでって。 

美月: ……

〇〇:少し考えさせて。

美月:無理しないで…私は史緒里に会ってくるね

〇〇:ごめん

好きな人に自分の名前だけ忘れられたら…


〇〇の親の立場からしたら、
それは子を守る正しい言葉なのかもしれない





……



美月を見送った僕は疲れていたからかうたた寝をしていた



〇〇:史緒里…

史緒里:う、うん///

〇〇:大好きです!!付き合ってください!!

史緒里:ねぇ…本当に私でいいの?///

〇〇:当たり前でしょ!

史緒里:で、でも美月とか可愛いよ…

〇〇:僕が好きなのは史緒里だからっ!

史緒里:う、浮気したら許さないから!!

〇〇:するわけないだろ笑

史緒里:うん…信じてる



これは夢…?
こんな時にも夢に出てくる史緒里って…

僕にとって史緒里ってなんだろ…



美月:〇〇!!!!

〇〇:!!!?

美月:ちょっと入って!私は先生呼んでくる!

〇〇:えっ、まさか…史緒里!!!


僕は飛び起きて病室にはいる。
史緒里は体を起こして、両親と話をしていた

〇〇:(よかった…無事か…)

久保母:史緒里…本当にいってるの?
久保父:私は反対だ。

〇〇:(えっと…揉めてる?)


美月:先生、連れてきました。


久保母:先生!

医者:一度、落ち着いてください。
史緒里さん、ご両親に言ったこと僕らにもう一度話してくれるかい?


史緒里:私、退院できるんですよね…

医者:うん、1日検査入院してもらったけど、私生活に問題ない。退院したいのなら出来るよ。

史緒里:なら…

史緒里:私、またその人と一緒に住みたい…///

〇〇:え…

美月:史緒里…


史緒里が指を指したのはだった

久保父:だめだだめだ!!
次なにかあったらどうするんだ!!

医者:お父さん、一回落ち着いてください。

久保父:しかし…

〇〇:(どうして…)

医者:史緒里さんは〇〇くんの名前はちゃんと思い出したのかい?

史緒里: ……


史緒里は首を横に振る

〇〇:……

医者:じゃあ、どうしてかな?


史緒里:〇…〇〇さんとの小さいころからの記憶はあって…寝ていた時も…〇〇さんと一緒に楽しく映画を観ていた夢を見て…


〇〇:史緒里…

医者:なるほど。

久保父:でもそれもまた忘れるかもしれないんだ

久保母:お父さん!!

久保父:だって娘が辛い思いをするかもしれないのに…黙っている親がいるか!

〇〇: ……

医者:〇〇くんは?

〇〇:え?

医者:キミはどうしたい?

〇〇:僕は、

史緒里: ……

〇〇:先生、記憶障害は新しい記憶から無くしていくって昨日教えてくれましたよね

医者:うん…その事例が多いね。


〇〇:だったら、僕は史緒里にずっと新しい思い出を作ります。

美月:〇〇…

〇〇:史緒里…史緒里が元気になれる思い出をいっぱい作るから…

医者: ……

〇〇:だから、史緒里が嫌っていうまで僕と一緒に住まさせてください!!!

史緒里:〇、〇〇…///


久保父: ……

久保母:お父さん…

久保父:わかってる。史緒里、

史緒里:う、うん。

久保父:何かあったらすぐに連絡するんだぞ!

史緒里:う、うんっ!!!

美月:それじゃあ!!

久保父:母さん、〇〇くんに連絡先交換するように、すぐに連絡が取れるようにな…

久保母:わかりました笑

〇〇:あ、ありがとうございます!

美月:やったぁ!!!良かったね、史緒里

史緒里:うん…

〇〇:これから宜しくお願いします。

史緒里:わ、私のほうこそ…///






……



数週間後…



僕と史緒里はお花畑へ遊びにきていた

〇〇:史緒里、花きれいだね。

史緒里: ………

〇〇:史緒里?


少しずつではあるけど健忘症が出る様子が少しずつわかるようになった


史緒里:あれ?私えっと…

〇〇:大丈夫だよ…深呼吸してごらん。

そっと手を繋いで安心させて深呼吸を促す。
そして深呼吸は一緒にする。


史緒里:うん…えっと…

〇〇:私の名前は〇〇っていいます笑

史緒里:そうだ、〇〇!ごめんなさい、また…

〇〇:大丈夫だよ、すぐに思い出せたじゃない

史緒里:うん…

先生にも言われたけれど、史緒里は前よりも記憶を取り戻すことが早くなってきていた。
それが治療に向かっているのかは分からないけれど…きっとそうだと僕は信じている


史緒里:ねぇ…

〇〇:どうしたの?

史緒里:どうして…こんな私の隣にいてくれるの?

〇〇:当たり前でしょ。だって…

史緒里:だって…?

〇〇:僕は史緒里のことが大好きだからっ!

史緒里:わ、私も〇〇のこと大好き…///


僕は向き合って行く

大好きな彼女と
幸せな思い出を足していくために…


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