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〜 しおりと隣の席の「本の虫くん」〜






32ndシングル
「人は夢をニ度見る」の活動も落ち着いてきた頃





珍しく数日の休みをもらった私は…

宮城の実家でぐうたらな生活をしていた



ピロンッ




1通のラインが届く…



携帯を手に取り見ると○○と表示されていた





ッ!!!?




私はガバッと体を起こした









〜 しおりと隣の席の「本の虫くん」〜









『○○のことが好きなの…』




私は過去に一度だけ告白をしたことがある


言葉を言い換えると…


"一度だけ異性に恋をしたことがある"







乃木坂というアイドルになることが決まり、

東京の高校へ転校することも決まった中…




私は隣の席の「本の虫くん」に屋上で告白した。





ただ、

それは叶わなかった






もし叶っていたら…アイドルとしてどうなのよ…


そんなことも思うし…




それに…


もしかしたら…


もしかしたらだけど…





○○は私がずっと "夢" と語っていた


【アイドルになりたい】


それを応援するために振ったのかもしれない


そんな甘い考えを東京行きのバスで考えていた





少し遡ってみると…

○○とは最初はまったく興味がなかった



地元が一緒!家が近い!

だから小中高と一緒の学校!



話はするけど、それ以上でもそれ以下でもない。


そんな関係…関係というにも
おこがましいなと言えるくらい何もなかった





高校1年の2学期

夏休み明け…
席替えをしたところ、隣の席になった



同じクラスになることは何度かあったけど、隣の席になったのは初めてだった


かといって興味がある相手でもない

挨拶を交わす…中身の無い会話…ただそれだけ。



私がどうこうというよりも、
○○も私に興味がなかったと思う




本を読むことが好きな彼は…

窓際の席で暇があれば、よく本を読んでいた




私も本を読む

本を読むけれど…彼は異常…


『本の虫』という言葉は彼のためにある

そんなことを隣で思っていた






1ヶ月が過ぎたころ…


親友:ねえ、しおり

久保:うん?なぁに?

休み時間に本を読む私に親友が話しかけてきた


親友:なんでさ…

しおり:うん

親友:2人して同じ本を読んでるの?笑


久保:え?
○○:え?


隣の彼とお互いに表紙を見せ合う

同じ作家、同じタイトルが私の目に映る


久保:ほんとだ…

○○:いっしょだね


親友:な〜にそれ〜お似合いじゃん笑


久保:ちょっと…やめてよ…

○○:駅前の本屋でオススメされてたんだよね…

久保:あ、私もそれ!一緒だっ笑


親友:ほんとにお似合いじゃん笑笑





きっかけは些細なこと…


駅前の本屋で、
オススメされていた本を読んでいただけ…



でもそれからはトントン拍子で仲良くなった




久保:○○、これありがとう!面白かった!

○○:ほんと、それならよかった!

久保:また何かオススメあったら貸してね

○○:うん、いいよ!




私と彼はお互いに本を貸し合うようになり、

彼が駅前の本屋へ行く時はよくついていった



○○:え、久保の夢ってアイドルになることなの!

久保:ちょっと…声が大きい!!

○○:あ、ごめん…

久保:う…うん、皆んなには内緒ね…///

○○:もちろん。でもすごいね!かっこいいよ!

久保:えぇ…/// ま、まだなれてもいないから…

○○:久保ならなれるよ!応援してる!




彼に言われると、
本当になれるんじゃないかって思う


私はこの頃から、
○○のことが好きだったのかもしれない





それからも彼…○○とはどんどん仲良くなり…





久保:ねえ…本の虫くん

○○:しおり、その呼び方やめてよ笑

久保:それでどうですか…その本は…笑

○○:うん、かなり面白そう。
 やっぱり、この作家さんの情景の表現は凄いよ

久保:お、それはようございました笑

○○:ごめんね、ずっと読んでて…

久保:いいよ、私も本読んでるから!笑


駅前の本屋で本を買って…
駅前の喫茶店で少し本を読んでから帰る



会話をほとんどしない時だってある

だけど「本の虫くん」の本を読む表情、姿をみていると、なんでか…とてもホッコリする


私はこの時間がすごく好きだった





親友にはよくイジられた

ずっと本を読み続ける「本の虫くん」
その隣でそれを楽しそうに見守る「しおり」

お似合いの本カップルって言われている






正直…






まんざらでもなかったり…する…///







それからさらに月日はたって…






久保:ねえ、○○!

○○:どうしたの?突然、屋上に呼んで…

久保:実はね…これみて!!!




私は一枚の手紙を「本の虫くん」に見せる


○○: ……乃木坂46…合格……!!!!

久保:いぇーい!

○○:凄いじゃん!!夢が叶ったんだ!!!

久保:うん!そうなの…ありがとう!!!




嬉し涙を流しながら喜ぶ私に
「本の虫くん」はハンカチを渡して私と同じくらいに喜んでくれた





でも当然…乃木坂46に受かったということは…

あの喜びからさらに数ヶ月がたって




私は再び、「本の虫くん」を屋上へ呼び出した





○○:東京へ行っても頑張れよ!

久保:うん…ありがとう…

○○:どうしたの?元気ないじゃん…笑

久保:だって寂しいもん。


○○:出会いもあれば、別れもある。


久保:え?


○○:今回のしおりの場合は別れからだけど、このあとたくさんの素敵な出会いがまってるから!大丈夫だよ!



久保: …ねえ、○○の夢ってなに?

○○:え?

久保:○○って夢あるよね?

○○: ……うん、あるよ

久保:私ね…もう1つ夢があって…

○○:そうなんだ!



『○○のことが好きなの…』



○○:え…?

久保:○○と付き合いたい…私のもう1つの夢。

○○:そうなんだ…

久保:だめ…?

○○: ……



「本の虫くん」は
本を読むときとは違う表情していた

そして色々考えながらゆっくりと口を開いた



○○:俺の夢はさ…「小説家になる」ことなんだ


久保:小説家…?



○○:うん…本を読むのが好きでさ…

その気持ちを、
他の方にもたくさん持ってもらいたくて、

でも俺なんかがなれるのかなぁって思うんだけど

そんな時、しおりと仲良くなって…

しおりが夢に向かって叶えていくのをみてさ、

よし俺も頑張ろう!やるぞ!ってなれるんだ…





久保:うん…


○○:だからごめん…
  俺はしおりとは付き合えないよ。



久保:そっか…そうだよね…















……







はぁ……

何年も前のことだけど…


思い出すと色々な気持ちが蘇ってくる



あれから「本の虫くん」とは連絡を取っていない

それぞれが1つの夢に向かって頑張っていると信じているから…





そんな中きた、「本の虫くん」からライン

私は覚悟を決めてそのラインに既読をつけた








久保、久しぶり。いきなりラインごめんね

小説家になるっていう夢をもってやっていたんだけど、

ぜんぜん上手くいかなくて諦めようと思ってたんだ…



だけど、『人は夢を二度見る』を聞いてからさ



その…久保が頑張ってるのみて

もう少しだけ頑張ろうって思えてさ…

そしたら先日"すばる新人賞"を貰うことができました。


俺も1つ夢を叶えることができたんだ!

ありがとう!久保のおかげです。



○○










久保:え、すごい…おめでとう



私はいてもたってもいられなくなって

『おめでとう』と返事をした




しばらくして…

○○から『ありがとう』返事がきた




私もまた返事をする、

昔の○○とは違いレスポンスが早くなっていた


きっと…色々なことがあったんだろうなぁ…



でも…

あの時みたいに中身の無い会話をしている


きっと「本の虫くん」のままなんだろうなぁ…




そう思うと、なんか嬉しくなって

胸がギュッとなった…


「ねぇ…」


『うん?』


「覚えてる…私のもう1つの夢…」


『うん…覚えてるよ…』




「もう一度…夢見ていい?」





『…いいよ』





「会いたいかも…」


『東京は厳しいなぁ…』


「今、宮城に帰ってるよ」


『え?ほんと?!!』


「うん…」

『そうだったんだ…!』


「ねぇどこで会う…?」


『それは…もちろん…』





私は携帯を握りしめて全速力で家を出た


目的地は「もちろん!」







『駅前の本屋』





〜Fin〜

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