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西野は僕が怒られる理由を知らない。

僕らは駅の改札にむかって歩いていた


時刻は0:15

西野がのる電車の終電まで残り5分を切っていた




〇〇:ほら、西野急がないと

西野:ちょっと…まって

〇〇:終電に間に合わなくなるよ…

西野: ……。

〇〇:え!?どうしたの…急に座り出して

西野:もう動けへん…

〇〇:まじか…

西野: ……ぶ…//

〇〇:ん??

西野: …おんぶ…///



座り込んだ西野は両手を前に出し

頬を赤らめ上目遣いで 僕 を見ていた。





《西野は僕が怒られる理由を知らない。》





時刻は1時間ほど前に遡る



この日もやっぱり 西野 は怒っていた。



西野:なんでそんなんで怒られなきゃあかんねん


西野とは会社の同期でウマが合うのか…
月に一回、居酒屋で飲むのが習慣になっていた


そしてこの日の西野はいつも通り


西野:なぁ〇〇!話し聞いてる?!

〇〇:あぁ、ごめんごめん。きいてるよ…

西野:ウソや!絶対きいてなかったやろ!


怒っていた。





怒っている内容はというと…


西野:だからなぁ、
  なんで〇〇が怒られなきゃあかんねん!

西野:〇〇はちゃんと仕事やってるやんっ!!

〇〇:わかったよ、西野、ありがとう。


きまって僕のことだ 

職場で部長が理不尽な文句を僕に言う

それで西野は怒っているというわけだ。



西野:〇〇はガツガツ言うタイプじゃないし、
   言い返せないに決まってるのにっ!

〇〇:まぁ上司だし職場の空気を悪くするわけにはいけないからね。

西野:せやろ、どうしたらええの…もう!

人のために怒るってのはすごくエネルギーがいる事だと聞いたことがある

そう言う点では西野の性格の良さを感じ取れる瞬間でもあった



まぁ部長の理不尽な文句の理由は、

西野と僕の仲の良さを『嫉妬』しているからだ

それは職場のみんなが知っている


目の前の酔っ払い…ただ1人を除いて 笑




西野:にゃぁ〜にぃ…ジロジロみてさ…//

〇〇:いや、それよりさ、西野 飲み過ぎだよ!

西野:だいじょ〜ぶぅ… みゃだいけまぁ〜す



そーいって4杯目のジョッキをカラにした西野

顔は真っ赤っか、口は回らなくなり

普段の凛とした目はトロ〜ンとしてきている

○○:(良い子なんだけど…酒癖が…笑)

目の前にある最後の
揚げ出し豆腐を食べる西野

美味しそうに食べる西野
それをみると、こっちまで笑みがこぼれる…





ふと時計をみると
日付が変わろうとしていた




〇〇:うわっ、もうすぐ0時じゃん!!

西野:え、もうそんな時間なん…

〇〇:そろそろ帰ろう、西野

西野:いややっ!!

〇〇:だめだよ。
  終電で帰るってルールで決めたでしょ。

西野:え〜、いや…




このルールが出来たのにはワケがある

初めて一緒に飲んだ時、
お互いに帰るタイミングを失った大の大人2人はカラオケで朝までオールしたのだ。

慣れないことをした2人は案の定、次の日体調を崩し、貴重な土日という休みを寝込んで過ごすだけになったのだ



〇〇:西野…帰ろう

西野: ……。

〇〇:また来月、会って飲もうよ




名残惜しそうに目をうるうるしながら、
西野は「わかった…」といってコートを羽織る

僕はその間に会計を済まし、外で待つ


これが毎月の月末の金曜の流れだ


西野:お待たへしました…///


〇〇:(口が回ってない笑)うん、行こうか…



おぼつかない足取り。

千鳥足…または酔拳のお手本と言わんばかりにふらつく西野

だいたいこう言う時は…



西野:〇〇〜

〇〇:うーん、どうしたの?

西野:ん…


右手をだす西野


〇〇:はいはい。

左手をだす僕

西野:あったかぁい…///

僕らは、手を繋いで駅に向かって歩き出す

でもいつもと違う…

西野は少し下を向きながら…じっと黙っていた


そしてこんな時に思うことがある…


僕はよく職場で、
付き合ってるの?と聞かれたりする

決してそんなことはない。


正確には、そう聞かれている西野が

『そんなことないですよ!』

と言っていたのを聞いてしまった…



西野がそうなら
きっとそうなんだろうなって思う。

じゃあ…

僕らの関係はなんなんだろうか…

たまに【西野】を遠くに感じることがある



隣にいるのに…

手を繋いでいるのに…

こんなに近くにいるのに…

とても遠くに感じる 西野 との【距離】




そんなことを考えながら
僕らはゆっくりと駅にむかっていた…




ふと時計を見ると…


時刻は0:15

西野がのる電車の終電まで残り5分だった




〇〇:ほら、西野急がないと

西野:ちがう…ちょっとまって…

〇〇:終電に間に合わなくなるよ…

西野: ……。

西野は座り込んでしまった

〇〇:え!?どうしたの…急に座り出して

西野:もう動けへん…

〇〇:まじか…

西野: ……ぶ…//

〇〇:ん??

西野: …おんぶ…///



座り込んだ西野は両手を前に出し

頬を赤らめて、上目遣いで 僕 を見ていた。





〇〇:西野…?

西野: ……だ…め?///



場所は駅へつづく大通り
周りの人にちらちら見られる。

たった数秒、たった数人、なんだろうけど…

恥ずかしかった…


いや…

ドキドキしていた。





〇〇:終電まで時間ないし、いいよ

西野: ……ありがとう。



一瞬、どこか切ない表情する西野…

それでも僕は
ドキドキを隠すのでいっぱいいっぱいだった。



西野の前でしゃがんで…

西野を背中に背負い…

再び歩き出す…




西野:おもい?

〇〇:ぜんぜん。むしろ軽くてびっくりした。

西野:〇〇って背中もあったかいんやね///

〇〇:ありがとう…///





恥ずかしくなって

目線をすこし下に向けて歩き始める。



いま

西野はどんな表情をしているのだろう



笑っているのかな、嬉しいのかな…



西野:zzz…


そんな思いとは裏腹に答えは予想外だった

あったかいと言った背中の上で西野は眠っていた


〇〇:寝ちゃったか…

西野:zzz…

〇〇:おやすみ…



さっきよりも慎重に歩く

そしてまた考えがよぎる。


そして…たまっていた想いが

言霊となってあふれでる




〇〇:僕たちってどんな関係なんだろ…

   ずっとドキドキしていたけど…

 西野は寝れるってことは、やっぱり僕には…




考えを振り切りたくて、再び腕時計をみた


〇〇:あっ!!


時刻は0:22

西野が乗る終電は無くなっていた



〇〇:どうしよう…

西野: …zzz

〇〇:タクシーに乗せよう。
  最寄駅は聞いたことがある…


西野: …ッ!


そのとき西野の呼吸が不規則になった気がした

〇〇:西野…起きてる?

西野: …!…zzz

〇〇: !?(やっぱり)…西野?

西野: !!……おきてる…



〇〇: ……


西野: ……



〇〇:えっと…いつから?

西野:〇〇が「あっ!」って叫んだとこから…

〇〇:そっか………よかった…

西野: !!………おりる。


そういって、背中からおりる

ふらつく西野


〇〇:大丈夫?


とっさに手を差し伸べたが、

西野は首を横にふった



西野:なぁ本当によかったの?

〇〇:え?





西野:ななに聞かれてなくて…
          本当によかったの…?


〇〇: …!?



西野は泣いていた

凛とした目から涙がこぼれていた



〇〇:聞いて…たの…?

西野:うん…ぜんぶ

〇〇:ね…ねてたんじゃ

西野:寝れるわけないやん…


ボロボロとこぼれる大粒の涙


〇〇:に…西野?



西野:ななだって、ななだってな…

     めっちゃドキドキしてたんやから…


〇〇: ……ッ

西野: ……


〇〇: …う…そ?

西野: ……ほんま…。



〇〇: え?でも…前に職場で聞かれてたよね…

西野:聞かれるよ…たくさん。

〇〇:『そんなことないですよ』って言ってたよね…

西野: 「付き合ってるの?」って聞かれたらね…

〇〇:えっ…




西野:「好きなの?」って聞いてきた人には…

   『  はい。』 って答えてるもんっ…///




〇〇:そうだったんだ…。



知らなかった
こんな気持ちでいてくれたなんて…



目の前でボロボロに泣いている西野

僕は…どうしたら…





西野:〇〇は…?何も言うてくれへんの…?

〇〇:僕は…さっきおんぶしてるときに…

西野: 寝てたっ!!!

〇〇:え?!

西野: なな…寝てたもん…


じっと見る西野
ここまできたら 僕 でもわかる




〇〇: ……西野…あのさ…

西野:う…うん…///



〇〇: ずっと好きです

西野: ななも〇〇が好きです



〇〇: ……

西野: ……



〇〇: …付き合ってください…

西野: …はい///




〇〇: ……

西野: ……


〇〇西野:笑





僕らはただ手を取り合って見つめ合った

抱きしめたり、
キスをするわけでもない

何度もあった、このやりとりだけど

今まででと変わらないのに

1番近くで【西野】を感じる




『…行こうか?』『うん。』

と会話をして、駅に向かう





西野:まって…〇〇…

〇〇:うん?どうしたの…

西野:あのね、まだね…

〇〇:うん。


西野:足ふらつくから…おんぶして…///


〇〇: …いいよ///

西野: …やった




これでもかってくらいに嬉しそうな西野を背負う

背中越しに小さく漏れてくる笑い声



〇〇:めちゃくちゃ嬉しそうだね。

西野:むっちゃ嬉しいもん///

〇〇: ……

西野:どうしたん?


〇〇: な…なぁちゃんさ…///

西野: …/// う、うん…なぁに?


〇〇:いまさ、どんな顔してるの?

西野:だめ!!
 いま恥ずかしいからこっち見んといてっ///

〇〇:大丈夫だよ。

西野:え…?

〇〇:だって僕も、


 なぁちゃんと同じ顔をしてると思うから…///


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