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砂利道の先へ

今日も砂利道を歩く。

背負っているものの重量で、肩にかけるストラップが思い切り食い込んでいる。
足のつま先までその重みがどっしりとのしかかり、足を数センチ地面から浮かせるのも容易い事ではない。それでも一歩ずつ進んでいくしかない。
立ち止まっても、その重さが軽くなるわけではなく、むしろ動かない事で、荷物が肩に食い込んでいく不快な音が骨に響き、耐え難い痛みへと変わっていく。

この荷物の中には、絶対に無くしたくない大切な宝物もあれば、私の意図に反して入れられた重く固く不気味な塊もある。その不気味な塊を取り出して捨てたいのだが、それを捕まえる事は出来ない。

明確な目的地はあるのに、今の自分が正しい方向へ歩いているのかさえ分からない。でも恐らくこの方向が、私が進むべき方向だ。そう信じたい。

「壁は、それを越えられる人の前にだけ現れる。」と言う人も居る。ならいっその事、無能な人間になりきってしまった方が楽なんじゃないか。
なんだかんだでこの荷物を持ててしまう自分に腹が立つ。
結局自分で自分を苦しめているのか?

私は有能なのではない。そんなわけがない。私が自分の事を一番分かっている。
どうにかこうにか生き残ってきただけで、その間に手に入れたスキルがあるだけだ。
有能とは程遠い、ただの張りぼて。

砂利道は永遠と続く。少なくとも私が見える限りでは。
白頭鷲の甲高い鳴き声が聞こえる。
その姿を見付けようと辺りを見回し、空を見上げる。至近距離にいるはずだが、姿は見えない。
どこかの高みから私を見下ろし、何を思って鳴いたのだろう。私を励ましたかったのか、嘲笑したのか、それともただ独り言を言いたかっただけなのか。

背後から白頭鷲が猛スピードで私の方に飛んできて、尖った黄色いくちばしで一瞬にして私の首根っこを掴み、あっという間に夕焼けの中へと連れ去っていく。

そんな光景を想像しながら(いっそのことそうなれば良いのにと思いながら)、空を見上げた私の頬を、夕陽が薄っすら赤く染める。
私は冷たい空気を思いっきり吸い込んだ後、鼻歌交じりにまた歩き始める。

なーんだ、結局自分は相変わらずこの重い荷物をちゃんと引き受けて歩いていくんだ。苦しくて吐きそうになる事もあるけれど、むしろ幸せな時間の方が圧倒的に多いのだと改めて気付かされる。
まぁ、それもいつも分かっている事。
ちょっと腹を立ててみたくなっただけ。自分に腹を立てつつも、やっぱり一番信頼出来る存在は、どんな時でも今までずっと寄り添い続けてくれた自分自身なのだ。

この荷物は1人では到底持てないはずなのだが、それが逆に私を奮い立たせ、前に前にと押し続けてくれる原動力になる。
不気味な塊も、幾分その手助けをしているのだから、諦めてこのまま共に歩みを進めていくしかなない。いつかふと消えてなくなる事を心から願いつつ。





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