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ある優しき殺人者の記録

2014/日本、韓国 上映時間86分

韓国映画? と思いきや、監督は日本の白土晃士という人。86分のワンカット長回し、新たな密室スリラー! というキャッチフレーズに惹かれて観た。正直、さほど期待せずに観はじめたのだが、これがもモキュメント(疑似ドキュメント)という手法で、ある汚らしい下町の通りを背景にレポーターのキム・コッビとその姿を撮るカメラマン田代(白土監督)が登場する。レポーターとカメラマンのやりとりの中で、これから連続殺人鬼の取材を行うのであり、その殺人鬼が実はレポーターの幼馴染であるということが分かってくる。

なんだか最初からご都合のよい設定であるなと思いつつもこのまま本当にワンカットですべてが進んでいくのだろうかという好奇心で見続ける。

犯人は廃墟となっているマンションの一室に隠れており、そこにレポーターを呼び出したのだが、同行者は日本人のカメラマンにするように指定されていた。廃墟マンションという設定ですでに恐ろしい予感がするのだが、正直、こういう美しくない映像の映画はあまり見たくないなーと思いつつも先へ進む。

この殺人者、すでに18人を殺しており、その訳が次第に明らかになっていくのだが、包丁を振り回しながら話す殺人者の言葉が幼馴染のレポーターには理解できない。すべての殺人は神の声に従っており、その目的はかつて事故で亡くなった二人の共通の友達をよみがえらせるためであるというのだ。

神の声に従って、後二人を殺せば、共通の友達のみならずすべての被害者が生き返るというのだが、そんなことがあるはずがない。だが、雑誌の頁やレポーターにかかってきた電話等から神の言葉が伝えられるという、偶然とも奇跡とも思える出来事が相次ぐのだけれども、それでもレポーターには信じられない。やがて、殺人者が予言したとおりに、全く無関係な日本人カップルがこの廃墟の部屋を訪ねてきていよいよ物語りは佳境に入る。

カメラマンは殺人者から「全部撮影しろ」と言われてカメラを回し続けるのだけれども、なぜ犯人はそんなことを強要するのか、途中でカメラは床に置かれてしまうのに、ちゃんと写っている、ラストではなぜそんなところにカメラが転がっているのかなど、細部では突っ込みどころも多々あるけれど、全体としてよくできたプロットだと思う。

ネタばれになってしまうが、オチは途中から想像できた。甦りいうか、やり直しというか、とにかくハッピーエンドであり、本当は心優しき男だったことが明らかになる。

白土監督のことは知らなかったけれども、「ノロイ」は聞いたことがあるような……九州出身の監督なんですね。

最近、モキュメンタリ―手法で、身近な若者が超能力を持ったり、ヴァンパイアになったりという映画が増えてきた中で、本作もなかなか凄い映画だと思った。おススメです。

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