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限局性激痛−ソフィ・カル(原美術館)

1999年~2000年に原美術館で開催したソフィ カル「限局性激痛」を、フルスケールで再現した展示。原美術館の閉館のニュースもあったし、自分の周りでも話題になっていたので、行くことにした。

自身の「人生最悪」の失恋体験をポイントに、それまでの日々を、恋人への手紙や日々の写真でカウントダウンさせた第1部と、失恋の痛みを人に話し、相手からも最も辛い出来事を話してもらうことで、徐々に癒されていく過程を追う第2部で展開されている。

原美術館ではすぐに2階にに行く癖があって(本能的に人混みを避けたくなる)間違えて2部から見てしまった。印象が通常と逆転してしまったと思うが、それも良かったようにも思う。(だって誰もが順番通りに見進むとは、思ってないでしょう)

ということで、2階から。オープン直後だったせいもあり、2階から見てるのはほんの2、3人。おかげで集中して没入できました。

繰り返される本人の記述は、視覚化された感情の変化もさることながら、最終的に残っていくのは部屋の細部の描写であることも印象的だった。当初の激情は薄れ、語ることすら面倒になっているのか。それとも、繰り返すことで、細部の方が際立つという現象を起こしていたのか。
しかしここでは、いや、展示全体を通しても、人々の人生で最も辛かった記憶のほとんどが、なにかを失ったことに繋がっている、ということが、一番興味深かったかな。

後から見ることになってしまった1部は、ちょっとしたロードムービーを見ている気持ちで見進められた。べったりと乗っけられた赤いカウントダウンがまるで呪いのように「そのとき」に向かって強制的に歩かされる。女の執念みたいなものすら感じられて、ちょっとこわかったな。。そして日付通りの写真が割り当てられているわけではないと、ここで大体の人が思うはず。
おもしろかったですが、2部で世界観にどっぷり没入していた分、1部の方は個人的にそこまで響かなかったのです。2部で想像していたものが、1部によってよりリアリティを持って眼前に現れる、という刺激はあったけれど。


あと、フランス語版の図録をパラ見していたら「63」の写真が、展示と本で違っていたのが気になった。(たいした理由はないかもしれないけど)

実は思ったよりも夢中になれなかったなというところがある。前評判を人に聞きすぎて、勝手に想像を膨らましてしまったせいかもしれない。
けれど展示自体とても面白かったし、ゾワゾワして良かったです。
原美術館にも行けたし◎
同時開催中の六本木と銀座のギャラリーの展示が、内容的に気になっているので、楽しみに見に行こうと思います。

(でもやっぱり順番通り見ていたら、別の感想だったのかな)

「ソフィ カル ─ 限局性激痛」
会場:原美術館
会期:2019年1月5日(土)〜3月28日(木)

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