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ぽかぽかと陽が差したので、第1回笹井宏之賞応募作品のうち自選30首を

「笹井宏之賞」とは

26歳で早逝した歌人・笹井宏之氏の没後10年を迎えるにあたり設立された賞。「新鋭短歌シリーズ」をはじめ、魅力的な書籍を手がける福岡の書肆侃侃房が主催しています。

アツすぎる短歌ムック『ねむらない樹』

「興奮しすぎてなかなか読み終わらない」で知られる『ねむらない樹』。
現在はvol.2が発売中です。こちらには「第1回笹井宏之賞」受賞作品も掲載されていて、詳しくは別記事で触れたいと思いますがとにかく内容が濃い。
『ねむらない樹』は、本そのものが家に置いておきたいと思わせる魅力的な仕上がりなので、ブックラバーの皆さんにもおすすめです。

「笹井宏之賞」は設立の経緯から何からあまりにも素敵だったので、とにかく少しでも関わりたくて応募しました。第2回では「連作としての構成を練る」ことと、「タイトルも含め、作品内に通底するテーマを常に意識する」ことに注力したい。

以下は「第1回笹井宏之賞」応募作品から自選30首です。
春の陽射しが気持ちよかったので、勇気を持って見直して選ぶぞ。

第1回笹井宏之賞応募作品のうち自選30首

地震後と祭りの前はよく似てるみんなふらふら出歩いている
言霊がこだまするたび投げられた言葉はブーンと夜間飛行す
腹いせに力の限り閉めた鍵急に平手を打つ時の音
(奇跡って実は近くにある)なんて嫌だったでしょでもあったでしょ
ばからしい喧嘩が明けて向き合って味噌汁ご飯かきこんでいる
買ってきた枝が突然葉を出してなんかごめんねでもありがとう
グラグラと醤油とみりん混ざり合う絶対ひとりぼっちにしない
ブルゴーニュ色のまぶたが羽ばたいて今日は一人でおやすみなさい
もしかしていらない眉毛を抜くときの痛みを失くし三度目の冬
君は誰 君は僕らの人生に急にイントロ流しだす人
自転車に乗らなくなって本日も思ったよりも寒い日でした
青い鉢が窓辺にならぶ日曜日次の週こそ立派に生きる
ワンピースの裾まとわりついたまま肌が冷え切るまでのお仕事
ロンドンの路線図をじっとじっと見てじっと見ながら食べる朝食
今日やけに真っ赤なスポーツカーに乗る地味な男と目が合ったから
最近の真理としてはそのひとのかおがすきならたいていはすき
おかゆって情けなくなるほどうまい人の心に入るのがうまい
広々とした庭園ですがこちらでは無断駐車は禁じています
北国じゃ木漏れ日なんて信じない南の国のことは信じる
いつまでも生きていくからパーカーの色は黒?紺?白がいいかな?
「てのひらにてのひら重ねて握ることを手を繋ぐなんて粋じゃないすか」
完璧な君の秘密をそのままにしてあげるから枝豆茹でて
彼が着る「I'mfish」のTシャツはあまりに赤く直視できない
真夜中に君と並んでインフェルノ半分消えたでんき眩しい
貝殻がトイレの床に埋められてきらきら光る街で生きてる
おめかしっていい言葉よね生涯にわたり使うと誓うアーメン
テイクワン 「天気予報は予定なの外れるなんて許されないの」
革ジャンにファーのブーツにこの天気絶好の非動物園日和
ハンプティダンプティなら喜んで君をダンスに誘ってくれる
歯ぎしりをするための歯がすり減ってあいた穴から産まれ出た僕

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