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『をばれう』

月神の水濁りしまま、
幼子は未ださ迷い留まり続けている
(前作『染まる手』ノーマルエンド前提)

導入
奇妙な体験から1ヶ月程経過した。
季節は夏の盛り。
町のあちらこちらの花壇から
目の覚めるような鮮やかな色の
向日葵を見ることができる。

今年の夏より
ぽつりぽつりと増えていく
子供の事故、失踪事件に
町は不穏な空気に包まれていた。

じっとりとした暑さの中、
探索者達に連絡をとってくる者がいた。
小説家の落合美琴だ。
『あかがね様の一件、実に興味深い』
『報酬は支払うため、
 詳細を聞かせてほしい』
『喫茶奥の院にて待っている』

未だ四肢に残る痣の跡に
軽い痛みを覚えるだろう。
暗がりに子供の嗤い声が聞こえる。
まだ物語は解決していない。

開いた喫茶店の扉の奥
見知った顔ぶれともう一人、
白髪混じりの女性があなたを待っていた。


推奨技能【オカルト】【交渉系技能】
使いどころがある技能【ナビゲート】

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落合美琴
年齢不詳、趣味で本を書いている
ジャンルは伝奇ホラー
ネットで調べれば
出てくるであろう程度の知名度
【オカルト】
界隈ではちょっとした有名人。
出版社を転々としているので
わかりにくいが、
少なくともここ70年程の
出版履歴がある、とされている。
奇妙な髪色と前傾姿勢が印象的。

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「子供の事故、失踪事件を
 調べているうちに
 あかがね様と呼ばれる存在を
 知りましたが
 池は凍りつき、社には
 なにもありませんでした。」
「図書館の利用者名簿と
 事故の調査資料を閲覧し
 あなた方であれば何かわかるかと。」

この喫茶店の名物だという
干し柿のミルフィーユをつつきながら
落合はゆっくりと語る。

【体験した話を伝える】
「それはそれは……」
落合は納得がいったように
頷いている。
「その痣、未だに消えていないのですね。」
「数年単位だった謎の失踪事件が
 ここ1ヶ月で増えていました。」
「ある意味、あかがね様が
 指揮していた亡霊達が
 無秩序状態になったとも
 読めます。」
「初めのうちは
 熱病で亡くなるケースも
 あったので、
 姑獲鳥の仕業かとも
 思いましたが少し違うようですね。」

【オカルト】【知識の半分】
姑獲鳥についてわかる
サプリ2010 p.76参照

【池について聞く】
「それが凍ってるんですよ。
 重機も通さないレベルでね、
 試してみたんです。」
「池の破壊も考えましたが、
 このぶんでは無理でしょうね。」
「知り合いの研究者に
 見てもらいましたが
 ただ凍っているだけとしか
 言えないらしいです。」
「サンプルすらも
 とれませんでした、
 残念でしたよ。」

「興味深い話が聞けました。」
「こちら、お約束の報酬です。」
探索者達に渡されたのは
怪談話の報酬にしては
分厚い封筒。
(20万円程を想定、鬼子母神のお札入り)
「私、ここの喫茶店にて
 執筆作業や情報収集をしておりますので、
 また何か面白い話があれば
 教えてください。」
「……尤も、その手を見る分には
 まだ怪異は終わっていないと存じますが。」

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喫茶店の外へ出ようとする探索者達と
入れ替わりで子供達が楽しそうに
笑いながら入店してくる。
【アイデア】
振り返れば誰もいない。
笑い声だけがお店に反響している。
SAN値チェック0/1
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夜まで自由行動。
お開きでも構わないし
池を確認しに行ってもいいだろう。

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【池を確認しにいく】
夏の森は植物の緑に溢れ、
どこがどの道に繋がっているかも
わからない状態だ。
【ナビゲート-20】で
無事にたどり着ける。

鬱陶しい暑気の中、
そこだけが異様な涼しさを孕んでいた。
水面は暗く、透き通っているのに
底が見えない。
池の表面だけ風が吹いてもそよぐことなく、
一種の絵画のように見える。
【触る】
冷たさより先におぞましさで手が縮む。
確かに冷たいがそれ以前に
人智を越えた存在を垣間見た気がした。
SAN値チェック0/1

池の表面は叩いても引っ掻いても
傷ひとつつかない。

社への入り口は完全に崩壊していた。
あの日歩いていった坂は
蔦や背の高い雑草に埋もれ
見当たらない。
【目星の半分】あるいは
【ナビゲートの半分】で道の名残を
見つけることができるが、
とてもじゃないが
素人が藪こぎするのは
不可能であるとわかるほどの
植物の群生地と化していた。
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やがて夜も暮れ、
探索者達が帰宅すると
家の中で何かが騒いでいる音がする。
バタバタと走り回る軽い足音、
キャッキャとさえずる子供の声、
足音から一人や二人ではない。

意を決して中へ踏み込むと
不気味なまでの静寂があなたを迎える。
家の中を確認しようと電気を付けたとき、
何か大きな鳥のようなものが
羽ばたいていく音が聞こえた。

家の中は大変なことになっていた。
壁紙は子供くらいの手のひらの跡が
泥まみれで付けられており、
家中を走り回ったかのように
同じような高さで
茶色の線が散らばっていた。
本棚からは本が全て落ちており、
その上を走り回ったのか
ページが折れていたり
裸足の足跡が残っていたりする。

冷蔵庫は開け放たれ、
中のものも噛られたり混ぜられたりと
悲惨な状態になっていた。

風呂場では誰もいない浴室で
シャワーが最大水量で暴れていた。

開け放たれた大きな窓から
破れたカーテンをなびかせる
湿気を帯びた風が入ってきた。

SAN値チェック0/1

【目星】
手形や足跡は一人のものではない。
手形だけでも数十人分の種類がある。

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今日あったことからだろうか、
不思議な夢を見る。
あの鳥居の奥、
朽ち果てた社があった場所。
汚れたシーツやカーテンで作られた
『巣』があった。
今は中には何もいない。

突然背中に重いものがいくつか
ぶら下がってくる。
首もとにぶら下がったそれが
気管を締め上げて
意識が遠退き始める。
子供のくすくす嗤う声の間に
女性の声が混じって聞こえた。
『をばれう』
SAN値チェック0/1

目を覚ました。
朝日が窓から差し込んでくる。
【アイデア】
女性の声がとても
優しい声色だったことに気づく。

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【落合に会いに行く】
「昨日ぶりですね」
彼女はさして驚いた様子もなく、
あなた方を迎える。
【目星】
彼女が座っていた席に
小説用の資料か、
分厚いファイルが
広げられているのが目に入る。
『かるなまごすの遺言』と
手書きで書かれている
水色の付箋が気になった。
【付箋について聞く】
「まあ、調べ事です。」
「小説のネタに困らないように
 書き留めているものです。」
「……ああ、中身は企業秘密ですよ。」

【落合に話す】
「そうでしたか。」
「それで首もとにも
 印がついているわけですね。
 昨日は無かったので不思議でした。」
言われて店内の鏡で確認すると、
朝はなかった太い二本の痣が
首もとにも浮かび上がっている。
思わず触れると冷気が伝わってきた。
SAN値チェック0/1

「それにしても、『をばれう』ですか」
落合はこころなしか
眉間に皺を寄せながら呟いた。
「出産時に亡くなった女性が成るという
 『産女』という妖怪の鳴き声が
 類似しますね」
「ただこちら、
 姑獲鳥とは違う妖怪ですが、、」
【オカルト】
姑獲鳥と産女、どちらも
出産時に亡くなった女性が成ると
されている共通項がある。
姑獲鳥は子供を喰う怪、
産女は子供をもたらす怪とされている。

「正体が何であれ、
 魅入られたのは間違いない」
「まずはその巣を確認してみるのは
 いかがでしょうか」

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【池に着く】
池は昨日と変わらず
冷気を孕んで其処にある。

【目星の半分】
あるいは
【ナビゲートの半分】
(昨日見ていれば自動成功)
道具を使えば三時間程の
藪こぎでたどり着けるだろう。
鳥居の向こう側には
不思議と草木が生えていない。
夢で見た通りの『巣』がそこにある。

【中を覗く】
そこにいたのは
名状しがたい異形の者だった。
ぐしゃぐしゃに絡まった
黒い髪を振り乱して
泥にまみれた鷹のような翼を広げ
あなた方を威圧してくる。
白濁した両目があなた方を睨み付けた。
SAN値チェック0/1d6
【目星】
羽毛は抜け落ち、
身体は痩せこけている。
その顔も目はおちくぼみ、
皮だけの印象を覚えた。

異形の者はあなた方に
猛禽類を彷彿とさせる脚を振るった。
(1回攻撃につき同じ対象へ左右2回、
 40%ずつ1d4の攻撃)
HP12,回避56%


戦闘終了(異形の者HP4で)
悲鳴のような金切り声を上げて
異形の者は池へ飛び去った。

池の中央に横たわる
異形の者の後ろから
子供達がわらわらと出てくる。
【目星】
子供達の身体はもやのように
形が定まらず透けて見える。

子供達はこちらを睨み付け
必死に異形の者を
守ろうとしている。

異形の者もふらふらと立ち上がり
子供達を守るように翼を広げた。

「助かりました。」
「話に聞いていた行動力、
 確かに拝見しました。」
「おかげさまで、
 全てを無に帰すことができます。」

あなた方とは反対側の岸辺から
一人の白髪まじりの女性が歩いてくる。

落合美琴が、そこにいた。

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落合はファイルを片手に
ゆっくりと詠唱を始める。
全く聞き覚えのない言語に戦慄が走る。
その詠唱が終わる頃には
空には灰色の渦が巻き、
光が池全体に降り注いでいた。

「池から離れてください、
 巻き込まれますよ。」
「この子供達は
 あまりにも人を殺しすぎた。」
「祓うにはあまりにも
 強く大きくなりすぎた。」
「ですから、私の命を使って
 無かったことにするのです。」

光線の中から
干からびた胎児のような
異形が降りてくる。
髪も顔もないその異形は
手を広げ足を揃え、
静かに落ちてきた。

クァチル・ウタウス
塵を踏むものの招来です。
SAN値チェック1d6/1d20

子供達が怯えた顔で
羽根の異形にすがり付く。
異形は子供達を抱きしめるように
擦りきれた両翼を広げた。
その頭上から塵を踏むものが降ってくる。

ゆっくりと音もなく異形が、
子供達が、池が崩れていく。
悪い夢でも見ているような光景だ。
池の上で落合があなた方に手を降るが
その手さえもぼろぼろと崩壊していく。
塵を踏むものは池の底まで沈みこむと、
来た時と同じくすべるように
天に昇っていった。

あとにはすり鉢状にえぐれた池の跡と
そこに溜まる塵が、
風にさらさらと飛ばされているだけだった。


【目星自動成功】
塵の中に白い結晶のような塊を見つける。
持ち上げると崩れ、
手のひらに小さな白い山を作った。
ひんやりしていて甘い香りがする。

AF:細雪(ささめゆき)
すこしばかりの変若水の結晶
食べれば10ターンの間HPが1ずつ回復する。
また、不定の狂気に落ちたものに食べさせれば
現世に連れ戻すことができる。

ふと、手を見やればもう痣はない。
子供達の笑い声も聞こえない。
全てが終わったのだと
あなた方は悟った。

ノーマルエンド
『姑獲鳥の夏』
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真相
汚染される前の変若水を
飲んだ娘が落合美琴。
長い彷徨の末最期を求めるが、
せめて変若池を無くしてから
死にたいと考えていた。

あかがね様がいなくなった後に
変若池の子供達が暴走していることを知り、
かるなまごすの遺言の一部、
くあちるうたうすの招来を使い
全てを無に帰すことに決める。

かるなまごすの遺言を手に入れたのが
今年の春頃であったため、
あかがね様の一件には
関わることができなかった。
(ちなみに落合は不死を消すものを
 探す旅にあり
 阿品町在住ではなかったため
 帰ってからは
 喫茶店に間借りしていた。)

姑獲鳥はあかがね様の一件の後に
阿品町へ飛来。
当初は子供を喰っていたが
変若池の子供たちを不憫に思い
面倒を見ていた。
そのため、途中から子供を食べておらず
痩せ細っている状態。



終了条件
落合によるクァチル・ウタウスの招来

バッドエンド
戦闘時の死亡、あるいは
キーパリング上のタイムリミットによる
MP切れによる死亡

キーパリングのコツ
ぐだりがちなので首に痣さえつけば
容赦なくMPで絞っていきましょう。
(隻狼の変若の御子が落合のイメージです。)

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