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孤島のキルケ(完結済)

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【男を獣にする呪われた美女キルケと六十人目の『生贄』】  呪いにより過去の記憶を失い、孤島に一人寂しく暮らす妖女キルケ。島に漂着して一目惚れされた「私」は、男を獣に変える化け物と…
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#伝奇小説

孤島のキルケ あらすじ

【男に狂う。男を惑わす。されど決して愛されぬ孤島の妖女】  ギリシア神話のキルケとバビロ…

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『孤島のキルケ』(21)【完】

 船が大波にさらわれたのだと思ったが間違いだったらしい。 「何も心配は要らぬ。ワシはこう…

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『孤島のキルケ』(20)

「私は彼らの言葉が分からないのです。旦那さまが羨ましい」  きるけえはふらんそわを強く抱…

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『孤島のキルケ』(16)

 ふらんそわが出て行った部屋にしばしの沈黙が訪れた。 「もうすぐ夜が明けるな」  洞窟の奥…

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『孤島のキルケ』(14)

「鏡が無い理由、ですか」  海豚の顔をした男は、大きく張り出した額から紫色の光を放射させ…

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『孤島のキルケ』(13)

 朝が握り飯だったせいか、経木を開くと見慣れぬ物体が鎮座していた。 「懐かしいな。お偉い…

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『孤島のキルケ』(12)

 口づけの先をせがむきるけえを制してくれた事で、とむへの借りがさらに増えた。  細い窓から朝日が差し込む頃には、とむは大きな伸びをして私の腹にのしかかった。 「起きろよ。腹減った」  オオヤマネコだと言うのに、昼行性だか夜行性だか判然としない。  四六時中寝ているのか起きているのか分からないが、寝ているように見えて水神の話を聞いていたようだから、はた目からは判断できないだけなのだろう。 「起きてる」  私は緩慢に起き上がり、身じたくを整えた。  リンゴ酒の香りのする口づけを

『孤島のキルケ』(11)

「二瓶様、午後の訓練は拙僧が担当いたします」  海豚の顔をした男の一声で、磯遊びをしてい…

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『孤島のキルケ』(10)

 海の中で目を開けるのは、風呂や洗顔時に目を開けるよりも数段難しい。  潮と砂で痛む目を…

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『孤島のキルケ』(8)

 工場近くの空き地で、海豚の顔をした男は難しい顔をしていた。  竹とんぼのような部品を太…

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『孤島のキルケ』(7)

 水神から水を分けてもらった私は館に戻った。  きるけえは泥と擦り傷だらけの私の足にひど…

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『孤島のキルケ』(6)

「ギルガメシュの孫の中でもとりわけ仲の良い二人の王子はの、同じさやに入った二つの豆の如く…

『孤島のキルケ』(5)

 湧水目指して軽快にしろばち山を登っていくとむに対して、私は葦《あし》に幾度も足を取られ…

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『孤島のキルケ』(4) 

「所で、どうやらあなたは私よりずっと後の世を生きていたようだ。だが私がここに来た時にはあなたは既にきるけえの館の住人だった。これはどういう事だろうか」  とむはふうっと大きくため息をついた。 「本当に全部あのくそったれ女のせいだ、最低だぜ」  トムはふんと鼻を鳴らすと、床をだんっと黒いかんじきで踏みしめた。 「俺にゃ全く分からねえ話だが、時間や空間や俺たちが『有る』って思っている全ての物や概念は、本当の所はただの幻影なんだと」  海豚の坊さんの受け売りだがなと、とむが苦笑した