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【ゲーム感想】ラストオブアス PS4リマスター版【総プレイ約18時間】

【はじめに】

注意:この記事には作品のネタバレを含みます

 一昨年の年末にAmazonのセールで続編と合わせてお手頃価格になっていて購入したものを意を決してプレイした次第である。加えてドラマ化も決まり、ずるずるプレイを引き延ばしていたら放送が開始して、慌てて積みゲー各種棚から引っ張り出した。
 アクションゲームは不得手中の不得手であり、始めるまでに大きな覚悟が必要だったことも事実である。難易度は初級である。

【システムについて】

○良かったところ
 一番は敵を全て倒さなくても良いところである。接近すればコマンドも出てくれるのでアクションが苦手な自分でもなんとかなった。大概の敵は視力が弱い、または無い設定のため、暗所でライトを付けていても敵には気付かれず突破口を探すことが可能だ。対人間の場合には迂闊にライトを付けられないが、感染者が近くにいればレンガや瓶をわざと投げて誘導し、相打ちを狙うこともできる。
 この隠密行動に欠かせない聞き耳システムがとても面白く、相手側が隠れている時は聞き耳を立ててもシルエットが見えず、調子に乗って突っ込んで攻撃を喰らってしまうこともしばしばあった。自分はチキンなので、逐一レンガを投げて全滅したか聞き耳チェックして進んでいた。怖いので。

 道中で部品を拾って行えるクラフトが楽しい。探索して拾えるものがたくさんあった時のワクワク感がたまらない。
 各所にある作業スペースでの銃の性能アップも楽しみの一つだった。ストーリーを進めるとこうさくれべるが上がってやれることが増える。主人公のひとりであるジョエルの「やるか・・・・・・」「少しはマシになったな」のボイスも渋くて格好良く、武器の性能だけではなくプレイヤー自身の気分も高揚させてくれた。

 ストーリーとキャラクターについては後述する。素晴らしい。

○悪かったところ
注意;決して作品を貶しめるものではなく、いちプレイヤーとしての感想である。しかもそのプレイヤーはアクションがド下手のプレイヤーである。

 弓はかなり難しく感じた。あまり素早いAIMはできないので照準補正をつけていたが、弓を引き絞りながら敵を狙うという平行作業がどうしてもうまくできずほとんど宝の持ち腐れと化してしまった。きっと銃に比べて音が小さく、さらに弓矢を回収することができる大変コスパの良い武器であることが売りだと思うのだが、接近してナイフを使ったほうがてっとり早かった。
 書き置きやメモなどをチェックする際に、いちいちバックパックを下ろしてチェックことに手間を感じた。詳細の文字も小さく読みやすいとは言えないと思った。加えて、後半で入手できるボイスレコーダーは聞き取りにくかった。字幕オフでプレイしていたが、字幕オンにすればレコーダーの声にも字幕がつくのだろうか。
 クリア後のリザルトを確認したところ、各種遺物は1/3ほど取り逃していたらしい。

【ストーリーについて〜プロローグ〜】

 パンデミックものにありがちな導入だがこれぐらい簡潔で良い。変に斬新さを狙ったり、パンデミックの原因に近かったりすると、のちの伏線回収が大変になるイメージがある。

 以下からストーリーの流れに沿った本編の感想となる。○はキャラクターについて、◇は場面の感想とする。

【ストーリーについて〜夏〜】

 いきなりSUMMERとだけ出てきて驚いた。季節の流れは春夏秋冬だという日本人特有の固定観念があっさり覆された。
 隔離地域である街中を歩きながら、世界観が描写されるが、かなりわかりやすかったと思う。満足な量はない配給や、軍の統制、書類や身分証がないと行き来できない隔離地域に、軍の圧政と感染者の恐怖からから逃れ希望を追い求める反政府組織。悲の打ちどころのない世界観の説明だと思った。
 主人公が運び屋という役にいるのも絶妙だと思う。良くも悪くも行動範囲が広く、街の勝手を知っていて、表の顔も裏の顔も持ち合わせるキャラクターにしたのは見事だと思う。街の様子を説明するのも、借金(?)の取り立てに行く道中で、という話の展開も良かった。

○ジョエル
 娘であるサラからのプレゼントである時計が壊れても肌身離さずつけている、それだけで過去に囚われがちな男であることがうかがえる。テスとは恋人という感じではないように見えたが、単に大事なものをもう作らないことにして一線を引いているのかもしれない。信頼している相棒というスタンスかも。大事なものを持つことに大きな不安感がありそう。
 感染したテスを置き去りにしたことを責められるが、合理的な理由を述べるでもなく「もう二度とテスの話はするな」と怒りをあらわにするあたりに、苦渋の決断であり、テスの願い(希望)を叶えたいという責任をひしひしと感じる胸打たれる別れのシーンだった。

○テス
 好戦的にみえたが、あの環境下でうまく交渉をしてるあたりかなり頭の切れる強かな女性だと思った。自分が噛まれたと告白した後も、決断が早く、言うべきことを伝えて相手を送り出せる。潔くて格好良かった。
 道中のギミックに手こずっているとヒントをくれることが多くて頼もしかったので離脱してしまって本当に残念だった。

○エリー
 本作のもう1人の主人公。
 出会ったばかりでかなりピリピリしている。同性だからかテスには少し心を許している雰囲気もある。
 パンデミックものの最重要人物となる免疫持ち。通常はガスマスクが必要な胞子の舞う場所でも平気。
 道中鼻歌を歌ったり、口笛の練習をしたり、ノームに目を輝かせたり、年相応の子供らしい一面もある。
 初対面の相手にもかなり口が悪い。出会ったばかりのビルに「デブ!」とか普通に言う。みてるこっちがヒヤヒヤする。ビルの私物を断りもせず奪ってきたり、指示されたことに対して中指を立てて返事をしたりする。
 下ネタもかなりイケるタイプであり、これにはジョエルもタジタジ。

○ビル
 殺傷力の高いピタゴラスイッチをたくさん作っている防御力高めの男。
 突然やってきたジョエルとエリーにほとんどのトラップを破壊されたり、別れたパートナーが探索先で自殺していたり、安息の地を離れざるをえなかったり、彼も散々な目に遭うキャラクターだった。パートナーの遺体を見つけてしまうシーンでは近くにパートナーの手記が残されていて、プレイヤーはひどいショックに打ちのめされた。ドラマ版で二人の掘り下げ(かなり評判が良い)があったらしい。
 バッテリーを得るために身を挺して奔走してくれたり、「好きなもん持ってけ」と資材や物資をくれたり、爆弾の作り方を教えてくれたり、ショットガンくれたり、このゲームにおけるバトルの基盤を整えてくれた。
 どうか生き残ってほしい。

◇ホテルでのハンター戦
 主人公二人の親愛度アップイベント。もういないサラを重ね続けているエリーに銃を持たせたくないジョエルと、自分の身は自分で守れるから対等でありたいエリーの葛藤と苦悶が感じられた。
 エリーがハンターを撃ってジョエルのピンチを救った時。さらにエリーに援護射撃を頼んだ時。ジョエルの目から見たエリーはだんだんとサラの面影が薄くなって“エリー”としての個人を見れるようになっていくきっかけとなったイベントだと思っている。
 作中トップクラスに好きなイベントである。「あの時は、確かに、お前に助けられた。お前のおかげだ」「言えるじゃん」の流れ本当に素晴らしい。

○ヘンリーとサム
 久々の話せる生存者に出会う。
 軍の戦車戦はかなり苦戦した。『プライベートライアン(1998)』で戦車の主砲に火薬を詰めた靴下をからめて発砲と同時に主砲を破壊させる描写があったのでそれをやれー‼︎ってひとり悪戦苦闘していた。火炎瓶や爆弾も手当たり次第に投げた。ただの歩兵が戦車に勝てるはずもなく、ただ無闇矢鱈に居場所をバラし、散々撃たれて倒れた。あの場面は戦わずやり過ごす場だと気づくまでに多くの時間を要した。
 ヘンリーが一度ジョエルのことを見捨てようとした場面は憤りを覚えたけれど、その後「お前も俺の立場だったら同じことをしただろ!」と言われたのと、エリーが降りてきて隣に立ってくれたのでなんとか抑え込んだ。
 二人の最後はとても悲しかった。兄が弟を撃っても、弟が兄を撃っても胸が締め付けられることには変わりはないが、なにも撃った方も自決することないではないか。
 エリーが内緒で持ってきてくれたロボットのおもちゃをサムが床に投げ捨てるシーンは、耐え難い気持ちになった。フィクションにおいて「感染者に意識はあると思うか」「人は死んだらどこへ行くのか」の問いを抱えたキャラクターは大抵辛い最期を迎える。彼も同じ道を辿ってしまった。

このチャプター、失うものが多すぎる。

【ストーリーについて〜秋〜】

 ジョエルの弟のトミーに出会う。二人は喧嘩別れしたようだったのでもっと険悪な出迎えかと思ったがそんなことはなく、再会してハグをしてくれて、さらに奥さんまで紹介してくれた。嬉しい。グループのリーダーである奥さんも素敵な人で、夫が危険に晒される無謀な依頼にはきちんと制止をかけてくれる理知的な女性であった。

○ジョエル
 夏を終えて新しい季節を迎え、エリーのことをかなり信頼していることが丸わかりである。免疫持ちでこの世界を救う希望だとかそういったことは抜きにして、一人の人間として大事にしている様子が随所にうかがえる。
 トミーとマリアが揉めている原因が自分であることに勘づいてエリーが牧場に抜け出した場面では、二人の本音が垣間見えて素晴らしかった。エリーのためを思えばトミーに任せたいし、しかしやっと掴んだ小さくて大事な手を離すのも嫌。ジョエルの迷いと決断が見えて良かった。

○エリー
 エリーもジョエルに隠していた弱さや本音をぶつけていて信頼しているのがわかるチャプターだった。子供っぽいとかそういうものではなく、ひとりの人間として対等でありたい、一緒にいたいという思いが溢れていて良かった。
 トミーとマリアのやりとりをみて、自分の存在を疑問に感じながらも自暴自棄にならないところが強くてすごいと思った。「私がいるからみんな争うんだ」「私なんていないほうがいいんだ」と銃口を決して自分に向けないあたりにあの環境を生き抜いてきた強かさを感じる。
 今季では馬に乗ることができる。エリーはかなり独特なネーミングセンスらしく、馬の名前は「タコ」である。ちなみに気になって調べたところ、このタコは海中生物のタコではなく、足にできる魚の目のタコであるらしい。

○馬(タコ)
 かわいい!えらい!おりこう!有刺鉄線をジャンプで飛び越えてくれる。きらきらの毛艶でぷりぷりのお尻がとってもキュート。美味しいものたくさんたべさせてあげたい。

◇コロラド大学
 トミーに教えられたファイアフライの拠点であり目的地である。つい最近まで生き残りがいたことが各所に見えるが、生存者はいない。ことの発端らしいボイスレコーダーを入手できるが肝心のファイアフライはおらず二人の旅はまだ続くことになる。
 探索中に火炎放射器を手に入れた。火炎放射器あるところに厄介なボスありってね。しかしブローターも火炎放射器の前では形無しであった。
 ハンターとのせんとうでジョエルの腹に穴が空き瀕死になる。腹に穴が空いて一言めが扉から入ってくるハンターからエリーを守るための「どけ」である。本当に痺れる。格好良かった。
 なんとか難を逃れて馬にのって脱出するが、ジョエルが意識を失ってしまう。その時のエリーの「どうしたらいいの!」はこれから自分はどうしたらいいのか、そしてジョエルを救うにはどうすればいいのかの2つの意味が聞き取れて胸がいたい。絶望した。

【ストーリーについて〜冬〜】

 一番苦戦したチャプターである。
 特にカフェ?飲食店?のデビットとの戦闘と最後の緊迫の追いかけっこは難しかった。デビットは話が進むほどに狂気が増していて怖い。
 しかし、一番好みのチャプターでもある。ジョエルとエリーのしてんが交互に切り替わり、やがて二人が再会する。とても綺麗にまとまっているチャプターだと思った。

○ジョエル
 病み上がりに無茶をする男。武器は奪られておらず弾薬もそのまま繰り越しだからなんとかなった。
 あまりにも拷問が手慣れすぎる。エリーには見せない別側面の怖さがあった。「話さないならこのまま膝を割る」「アジトはどこだ、刺せ(血のついたナイフを咥えさせる)」そしてきっちり情報を得たら全員殺す。喋らないと頑なだったハンターに仕方ないなと鉄棒を振り下ろすシーンの「そうか、じゃあ仕方ないな」が拷問してた時の低い声ではなく、退屈さや諦観のような声色でとても怖かった。情報収集の手際が良すぎる。 
 歩き回っている間、ずっとエリーのことを気にかけていた。

○エリー
 とても頑張っていた。口が悪いのはご愛嬌だが、使えるものは愛嬌でも何でも使う逞しい女。自分が感染者(免疫持ち)であることをギリギリまで明かさないところ好感が持てる。ジョエルが倒れてかなりいっぱいいっぱいだったみたい。
 交渉もお手の物。デビットにまるめ込まれてしまったが手練れの交渉術である。視点が切り替わると同時にジョエルの交渉(拷問)も見れるので、成長するとああいった交渉する未来が容易に想像できる。怖い。
 手持ち(初期装備)が薄いのが大変だったが、ナイフが無限に使えるのは助かった。

○デビット
 物腰の柔らかそうな話のできるやつで、一緒に戦えて、脱出経路を示してくれて、前季にトミーに会ったこともあて正直かなり信頼していた。が、こんな極限状態でまともな人間がいるはずもなく・・・・・・。「俺は全ての出来事は運命だと思ってる」「街で俺の仲間のほとんどがイカれたひとりの男にやられちまってな。その男にはもうひとり連れがいたって話だ。女の子だ」でめちゃくちゃ鳥肌たった。策士すぎる。こんな展開があっていいのか。地獄みたいな巡り合わせだ。な、言ったろ?全ては運命だって・・・・・・
 デビットの拠点ではぼかされているがカニバリズムを想起させる描写がある。大きな肉をナタでぶつ切りにしていたり、「何の肉?」「シカの肉だ」「他の肉も混じってるでしょ」のやり取りや、倉庫に吊るされた人間の死体など。極限状態において生きるために人間性を捨てざるをえないストーリー展開が好きなので、かなり性癖にグッときた。
 デビット戦は最初のブローター戦と同じくらい倒すのに手こずった。ハンターに襲われるのとはまた違った恐怖があり、相手も隠れては走って追いかけてくるので弱った。レンガや瓶がたくさん落ちているのはそういう意味があったのか。

○馬(タコ)
 何も撃つことないじゃん。貴重な足だから、ハンターたちも「上のガキだけ狙え!」って言っていたのに。可愛がっていただけに残念だ。
ひどいよ(´・ω・`)

【ストーリーについて〜春〜】

 終章。目的であったファイアフライと会う。目的達成と思いきや、免疫が脳と結びついているとかでエリーを殺すことが世界を救うことになるらしい最悪の展開に。
 ジョエルが一年をかけて育てたエリーへの激重感情が遺憾無く発揮される章である。
 冒頭でエリーを託した張本人のマーリーンに再会する。必要だとは、希望だとは、わかっているが、エリーをここまで連れてきたのにあっさり殺すことに賛成しているように見える節がある。結構ギリギリまで反対していたようだけど、最終的にその選択を採るのならジョエルは撃ちます。

○ジョエル
 対人であれ、エリーのためなあら容赦を許さない男。本当なら殺さず通り抜けられるのだろうけど、アサルトライフルの魅力に惹かれて全員撃ちました。正直言って高揚した。敵が連携して挟み撃ちや回り込みをしてきたのは堪えたがなんとか切り抜けた。
 エリーを手術室から救い出してエレベーターで降りた先にマーリーンがいて、説得も虚しくマーリーンを撃つ流れは予測できなかった。予想外すぎてこのムービーはずっと限界オタクみたいな声を出すことしかできなかった。((;゚Д゚)))「あっ・・・・・・あっ・・・・・・」

○エリー
 わかってはいたが泳げないの可愛いし、道中の会話で全てが片付いたら水泳を教えて欲しいとジョエルにせがむシーンが良い。彼女は泳げないのでルート開拓が必要だと思ったが、ありがたいことにエリー専用通路のような細道を用意してくれている。
 免疫が脳と同化していて切り離せないから殺すしかないとかそんなのってあんまりだ。血液から作ってくれ。
 ジョエルが意識を失っている間のマーリーンとのやりとりがあれば良かった。きっと彼女はジョエルのことを心底心配していたんだろうな。

○ジョエルとエリー
 最後のあの残酷で切なくて相手のことを考えすぎた嘘のやり取り。こんな、こんなエンディングってある?こんなの仮初の幸せだし、絶対に歪みが生まれる日が来る。その時のことを考えると頭も胸も痛い。胃も痛くなってきた。
 エリーもジョエルの話が彼女を救い出すための嘘だってわかっていそう。しかしジョエルはエリーの人生の中で唯一エリーを残して置いていかなかった人だから。そして二人の旅が始まった時に「俺の指示には従え」って言われていたから。思うところはあるけれど、ジョエルとエリーにとって、二人が共に生きるためには最善の選択であった気もする。きっとそうだ。そうであってほしい。
 眠らされて手術台にまで乗せられて殺される寸前までいったのに、ファイアフライの元にはエリー以外の免疫持ちがたくさんいて、エリーはもうお役御免だから解放された、これからは自由に生きていいなんてそんな都合の良いお伽話のような夢物語があるわけないのはジョエルとエリーがいちばんよくわかっていると思う。でも他の誰でもないジョエルからそう語られて、ジョエルなりの選択だと知って、「誓ってよ、今までの話が全部本当だって。誓って」と言われて間髪入れず目を見て「誓うよ」と答えられるジョエル。このたった四文字に、これから先に何があってもエリーを守り抜くと自分への覚悟も感じられて胸が締め付けられる終幕であった。

【サイドストーリー(残されたもの)】

 時系列はジョエルの腹に穴が空いた直後と、二人が出会う前のエリーが感染するまでの過去編を交互に辿る。操作は終始エリーであり、過去編は基本的に攻撃ができない。

◇現代編
 激しく吹き付ける吹雪の中、ジョエルを救おうと奔走するエリーの姿を見ることができる。
 戦闘ではハンターと感染者を鉢合わせさせて相討ちさせて、残った感染者を一掃する戦法が上手くいった。救急キットを手に入れてジョエルの元に戻る間のハンターとの戦闘は、複数のハンターたちが一斉にエリーを狙ってくるので厳しい戦いだった。挟み撃ちを何度もくらったので煙幕がキーアイテムだった。個人的に作中トップクラスの難所であった。
 ジョエルが危機に瀕していて余裕がないからかエリーの殺意がかなり高い。普通に「くたばれ!」とか言う。火炎瓶を投げながら言うとさらに怖い。焦燥と憎悪がひしひしと感じられるスリルがあった。
 初期装備のナイフが回数制限なしであることに何度も助けられた。殴りや格闘は分が悪いし、弾薬も満足にあるわけではない。その点隠密からのナイフは重宝した。しかし一体ずつ各個撃破しないと仲間を呼ばれて一転して大ピンチになる。
 ガソリンを探して発電機を起動させるところはギミックが満載で面白かった。水中は感電してしまうので通れない、高所を登るには届かない、すぐ閉まってしまうシャッター、本編でやったことのある謎解きの総集編として復習しているみたいで解きごたえがあり楽しかった。じっくり見ることはできないがネコちゃんもいる。

◇過去編
 会話の端々に名前だけ登場していたライリーという親友との交流が描かれる。
 意外だったのが同性愛描写があるところ。本編におけるビルの話があったので、女性の同性愛もストーリー上で異質さを覚えることはなく全く問題ない。たしかにただの友人止まりなら、わざわざ全寮制の軍の教育施設を抜け出して、テロリストの一員となった友人と共に、感染者や軍などの危険蔓延る街に出向いたりしない。
 ライリーが結構掘り下げられていて良かった。本編に入れずにサイドストーリーとして配置したのも巧みだと思った。ファイアフライに拾われる前で生き抜く術をあまり覚えきっていないエリーは基本的に感染者からは逃げることしかできずダッシュとジャンプが基本コマンドであることも、本編やサイドストーリーの現代編との対比が現れていて面白い。
 年相応の悪ガキエリーが見れて楽しかった。イマジンゲームはとジョーク本はちょっと首を捻ってしまったけれど。メリーゴーランドに乗っている時、『デトロイトビカムヒューマン(2018)』でも女の子が乗って喜んでいたのを思い出して胸がいっぱいになった。プリクラがとても楽しかったので写真機が壊れずに一枚くらい二人が一緒にいた証を形に残してくれてもいいじゃないかと悲しくなった。
 あのジョーク本はどういった需要があるんだ。コンビニに置いてありそう。

【総評】

 ちなみに、リザルトによると総死亡回数は53回であった。

 売れてて賞をたくさんとっているだけあって、ということは抜きにしても本当に面白かった。
 リマスター版ということで、ロードも短く、グラフィックも息を呑むほど綺麗だし、オプションやコンフィグの設定も親切で非の打ち所がないと思った。敵を倒さなくてもクリアできることがなによりありがたい。
 キャラクターも魅力的で、全員が全員死んでしまって悲しいだけの別れではないところが特に素晴らしい。別の道を生きる者、運がなくて死んでしまう者、大事なものを失う者などメインキャラクターの生死のバランスが絶妙だったと感じる。主人公たちの未来を案じてくれるキャラクターがいることがプレイヤーにとっての救いになる。

☆お気に入りのシーン
 ビルがパートナーの遺体を見つけてしまうところは感情が滅茶苦茶になった。そのパートナーがビルと同じことを考えてバスのバッテリーを先に奪っていたことや、ビルに宛てた手紙の口調からお互い不器用そうであることも読み取れて、よりやりきれない気持ちになってしまった。似た者同士だったのかもしれない。
 サムとエリーの最後の会話は、守られる立場にいる者たちはその立場なりに、時には守る立場にいる者たちよりも多くのことを思案していることがわかる。ジョエルの指示のもととはいえど、対等な二人を羨ましそうに見るサム。生きるためだとはわかっているが、兄ヘンリーの言いつけ通りにしか動くことのできない自分に責任や劣等感を感じていたのかもしれない。とどめに自分が置き去らざるを得なかったあのロボットをいとも簡単に手に入れてきたエリーを見て、エリーの生き方に思いを馳せたのだろう。自分にはもう数刻の未来さえ許されていないというのに。
 キリンの群れを見つけるシーンは作中で一番心が躍った。『ジュラシックワールド(1993)』が好きで何度も見ている自分は思わず鳥肌がたった。その直後、ジョエルの「ここで引き返してもいいんだぞ」という確認に対して「今までのことを無駄にはできない」と答えて扉のさきにすすむエリーを見せられて、クライマックスに向かう覚悟ができた。思えばこのシーンですでにジョエルはエリーを生かしたかったし、一緒にいたかったんだろうな。

 誰もかれもあの環境下で生きるうえで最善の選択をしているとわかる重厚で考えさせられる良いストーリーだった。奪うことも、殺すことも、逃げることも、戦うことも、生きるためには必要だし、それができないやつから死んでいく。辛い。

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