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映画館が一つになって笑い泣き拍手する

待ちに待ったこの映画が我が街にもやっと来てくれた。家内に紹介してみたら彼女も見てみたいというので、ひさしぶりに二人で映画館に足を運んだ。(むろん、大手をふってシニア割引をつかって)

みなさんに伝えたい。
この映画見逃したら一生後悔しますよ!

”いやどうせ後からネットで見れるだろうか”
”DVD買ってみるから映画館行かなくていいや”

そんな事言わないでください。
映画館で見ず知らずの人が、一緒に笑い、泣いて、そして拍手する、これ映画館だからこそですよね?こんな映画をみたの私は初めてのように思います。

まず何はともあれ、次のカナダでの映画祭の模様を見てください。
英語字幕の、そしてなによりコテコテの時代劇(実は現代劇でもある)をみて、ここまで、笑い、泣き、拍手しているのを素直に見てください。
そして上映後、主演の山口馬木也さん、観客のスタンディング・オベーションに思わず、手を合わせ目を赤くしているのが分かりますよね?
マドンナ役の沙倉ゆうのさんの、なんとも艶やかで凛とした着物姿、めちゃくちゃ映えてますよね?

とにかく低予算で、映画好き、そして時代劇好きの監督が、役者さんとスタッフを”その気”にさせて、さらには東映京都撮影所まで巻き込んで、まさに心血を注いで作ったのがこの映画。一言で言えば、”奇跡の映画”、だと思います。当初は、池袋のたった一館だけでの上映が、口込みで人気がひろがり、今はなんと全国180館での大ロードショー公開になったのです。

映画パンフレットには、監督・脚本・撮影・照明・編集・車両他、安田淳一とあります。他ってなんでしょう?安田監督はお米作りのかたわら、このどうしても作りたい映画を創生し、その映画作りはむろんのこと、なんと、SNSでこの映画の評価をしてくれたポストに、夜通しで”いいね”を押すという草の根(?)の広報活動までされたそうです。

私がこの映画を知ったのは、居島一平氏とサンキュー・タツオ氏、そして映画評論家の松崎健夫氏が毎月放送している、映画談話室だった。居島氏と松崎氏は絶賛していた。(居島氏は、虎8というネットのニュース番組で知ったが、その番組では居島氏の博識ぶりの一万分の一も出ていなかったと思います)

私の貧弱な語彙ではこの映画の面白さを伝える自信はないのだが、一番記憶に残ったセリフは、映画の後半に出てきた以下のシーンだった。

”われら、一日一日を懸命に生きてきた。それで良いではないか”
”しかしそんな我らのことも、我らの時代も忘れ去られるだろう、、、、”
”そうかもしれないな、、、 でもそれは今日じゃないぞ”

この”それは今日じゃない”、というセリフ、私はあの”トップガン マーベリック”の、トム・クルーズのセリフと重なった。

将軍:ジェット機をパイロットが飛ばす時代はなくなるんだぞ。”
トム・クルーズ:でも、それは今日じゃないでしょう?

この”今日じゃない”のセリフは、この映画の中では二つの全く違う意味で使われている。一つは、マーベリックでのセリフと同じ意味あいで、”まだ俺たちの時代が終わったわけじゃない”、とポジティブなもの。

それと全く逆に、英語でいうと”procrastinate" 何かやるべきことを先延ばしにする、という極めて人間的な感情。たしか、このproscastinateの意味での”今日じゃない”は、2回ほど使われていた、と記憶するが、ネタばれになるので、どんな場面で使われたのかは英語をみて、確かめて頂きたい。

以下、映画の公式サイトです。

そして、映画の名シーン等を集めたサイトも紹介しておきます。

なおどれくらい低予算だったかの数々の逸話があるようです。
主演の山口氏は、東京から京都の撮影所まで新幹線ではなく車で移動した。
女優の沙倉氏は、映画の中での役柄と全く同じに、女優、助手、雑用係を一人でこなした。

時代劇をこれほど愛し、映画を愛す人がいるかぎり、時代劇はなくならない、と思いますし、私は時代劇、時代小説を慈しみたいと思います。
何か、日本映画の時代劇再ブームがおこりそうな予感もしています。
例えば、山田孝之氏の”11人の賊軍”、そして役所広司氏の”八犬伝”等々、必ず映画館に見に行くつもりです。

恥ずかしながら、私はこの年になるまで、時代劇も時代小説もあまり興味をもてず、”食わず嫌い”でした。先の居島氏の紹介で、五味康祐氏の分厚い”柳生武芸帳”にやっとたどり着き、今は山田風太郎氏の”柳生忍法帖”を楽しんでいるところです。そして同氏の八犬伝もぜひ読まねば、と読みたい本がたまるばかり。残りの人生を、懸命に楽しもうと思います。

”何かが終わるのかもしれないが、それはまだ今日じゃない”
”われら、一日一日を懸命に生きてきた。それで良いではないか。”

このセリフを胸に留めよう。


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