ワンコの巡礼

ワンコが一人(一匹)で巡礼し飼い主のところに戻れた、そんなワンコ天国はどこの国だったでしょう?

昔ある国では、体が不自由等の理由で念願の巡礼にいけなかったワンコの飼い主さんが、代わりにワンコに一人で巡礼に行ってもらい、見事に巡礼の印をもらって帰ってきた、という信じられないことがそうは珍しくなかったそうです。

飼い主さんは、ワンコの首に”巡礼どこそこ”と書いた札、そして旅の駄賃を入れた袋をかけて、送り出したそうです。赤の他人の巡礼者はそのワンコに気づき、”おお~ 飼い主さんのためにお前さんが代わりに巡礼の旅にでたのか、お前さんは本当に偉い!なになに旅の駄賃に使ってくれだと?こんな賢いワンコからお金をもらったらバチがあたる。おいちゃんが駄賃を足してあげよう”、とお金をとるどころか、逆にお駄賃を追加してあげました。

そうして旅を続けると、だんだんとお駄賃がたまり重くなってしまい、ワンコは首も上げられないほどになってしまうと、親切な(お金持ち)おいちゃんが、”かわいそうに駄賃がこんなに重くなってしもうたか。よし、それならおいちゃんが金と変えてあげよう”と、あろうことか金貨に交換してあげたんだとか。

そうやってみんなに面倒をみてもらいながら、見事に巡礼をすませ巡礼の印までしっかりもらい、懐かしい飼い主さんのもとに戻ったワンコが結構な数いたそうな。

さて、こんなワンコ天国で、なんとも平和でおおらかな世の中だったのは、いったい全体この地球上のどこの国だったのでしょうか?

ひょっとして、信心深いチベットだったのでしょうか、それとも動物愛護の進んでいるドイツか、それとも経験な仏教徒の国であった昔のビルマ(今のミャンマー)だったのか?あるいは、私はよくしらないムスリム(イスラム教徒)の国だったのでしょうか?

みなさん想像してみてください。こんな国こそ、桃源郷(ユートピア)と呼べるのではないでしょうか?”そんな国あるはずないよ!ただの言い伝え、伝説、いや都市伝説だろう”、という声が聞こえてきそうです。

いや待ってください。決してただの言い伝えでも伝説でもないのです。その国に、きちんとした公式の書類として今も残されているのです。

閑話休題 少し英語が入るのを許してください。Chain of custody ”管理の受け渡し”とでもいうのでしょうか、実はこのフレーズは、2020年アメリカ大統領選のとき、あの民主党が コ ロ ナ にかこつけて、郵便投票を強行し不正の温床になった、と共和党筋が非難したとき、このフレーズをよく耳にしました。私は、勝手に”送り状=受け渡し状”と名付けました。実は、このワンコの巡礼の証拠とは、この公式の”受け渡し票”が何百通も残っているのです。

さて、その桃源郷ですが、、、、、、 そうなんです実は我が国日本なんです。江戸時代、”お伊勢参り”(ええじゃないか踊りものその一つ)が何回か大ブームとなったとき、関所から関所、宿場町から宿場町に、この”送り状”が書かれ、あろうことか、各宿場毎に、”我が宿場ではこのワンコにこれこれしかじかの接待をした”云々と競い合ったこともあったようです。

送り状を地道に調べあげ、本になったのが、仁科邦男氏の”犬の伊勢参り”という平凡新書です。(2013/03)幸いなことに今は再版されて新本を購入できます。著者の仁科邦男氏は、たぶん愛犬家だと思いますが、ワンコの物語を数冊上梓されており、私の愛読書の一つです。

老柴犬と暮らしている私にとり、愛犬は家族と一緒です。ワンコをそこまで大事にし、やさしく、親切に接した江戸時代、なんと豊かで平和で牧歌的な日本だったんだ、と涙を禁じえませんでした。浅学菲才の私ごとき、日本以外でこんな話がのこっている国、地域はしりません。

明治になっても、東大農学部教授の飼っていた秋田犬(アキタイヌ)、そうあのハチ公の話、ハチ公の亡骸に手を合わせているおばあさん、学生、おじさんたちの写真をみて、また、まだ私の記憶にある仲代達也氏の映画”忠犬ハチ公”(タイトルは違ったかもしれませんが、たしか奥様は八千草薫さんが演じておられたと記憶します)、そして私の好きなハリウッド役者リチャードギヤ氏の映画”Hachi”は何度見ても涙ボロボロです。ハリウッド版(多分舞台は、アメリカ東海岸の北の方と勝手に想像しました)も良かった。ハチが主人を待ち続けた駅の屋台のホットドッグ屋のオヤジが(だと思います)が、”He wants to wait." 彼は待ちたいんだよ、、、 というセリフに何回も泣かされました。

ただし書類記録は残っているものの実際にワンコ一人で青森から伊勢まで(記録としてのこっている最長のワンコ巡礼の旅)いけるはずなどなく、どうやって連れて行ってもらったのか、作者の想定も書かれており、”なるほどそれならあるかもなあ”と納得しました。

ちなみに、私がこの本を最初に知ったのは、百田尚樹氏の”日本国紀”でしたが、残念なことに出典は書かれていませんでした。その後、竹田恒泰氏の”天皇の国史”の出典が紹介されていたのですが、当時は絶版で、なんとか古本を探しだして夢中になって読んだ記憶があります(幸い今は再版されているようでうれしい限りです)

それからこれは本当に蛇足ですが、確かトルコ(黒海沿いのなんちゃらとかいう町)で、救急車で運ばれた主人の後を必死においかけ、主人が入院した病院の玄関で、主人を待ち続けたワンちゃんが世界的に有名になったことがありました。病院の人がそのワンちゃんに気が付いて、ご飯とお水をあげいたそうです。私はその英語版のニュースを読み、そして車椅子にのった主人がその愛犬と再会した写真も見ました。(また涙涙でしたが)

もしかしたら世界のどこかで、かつての江戸のように、ワンコの巡礼があった国、地域もあるのかしれません。

駄文かつ長文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
このワンコ巡礼は無理でも、みんなが豊かで、平和で、おおらかな日本を取り戻したいと切に願っております。

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