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マッツ・ミケルセンに会って4次元を理解した

2023/5/6(土) コミコンレポ

愛してやまないマッツ・ミケルセンが大阪にやって来るということで、コミック・ブック・コンベンション、略してコミコンに行ってきました。
コミコンというのはアメリカ発祥のイベントで、漫画(主にアメコミ)や映画のファン、クリエイター、専門家なんかが集まって交流しようという催しらしい。オタク特有の脊髄反射でチケットを取ってしまったので、入場用のQRコードが届いてからイベントの概要を調べ始めた。私はインドアな性格のくせにたまにこういう爆発的な行動力を発揮することがある。

ちなみにマッツとツーショットを撮るには2万5千円の課金が必要で、たっか…と数秒固まったものの、冷静に考えてみたらマッツの人生のうちの数秒を私のような平民が買い取れるなんてとんでもないことだ。そりゃそんぐらいの値段はするよな、と納得して速やかにチケットを取った。
(争奪戦だったという噂も聞いたけど、なぜか販売開始時間より2分早く購入ページに進めたので私は全然スムーズに取れた。ラッキーだった。)

9:00

イベント当日、同じく来日するミリー・ボビー・ブラウンのファンの友達と共に早朝から会場入りを果たした。真っ先にオーランド・ブルームのステージへ向かい、それでも座席には座れなかったので立ち見席から観たのだが、オーリーはめちゃくちゃハンサムで終始ニコニコしていてかわいかった。幼い頃に金曜ロードショーで死ぬほど観たウィル・ターナーが数十m先にいることが信じられず、めちゃくちゃ高揚した。ちなみに私はパイレーツシリーズだとワールド・エンドが好き。戦闘中に船上でプロポーズするくだりが本当に良くて。私自身は結婚願望ってさらさら無いんだけど、どうしても結婚しなきゃいけないのならあんな風に船上で誓いの言葉を言ってほしい。(海賊?)

話が逸れたが、とにかくオーリーは日本のファッションが好きだと言って日本のブランドで全身コーディネートして来ていたり、去り際も腰を折って深くおじぎしてくれたりと、日本の文化をすごくリスペクトしてくれているのを感じた。何ていい人なんだ。『ロード・オブ・ザ・リング』の名台詞"What about side by side with a friend?" も聞けたし、オオサカダイスキ!みんなダイスキ!と言ってくれて、わずか30分弱で凄まじく幸福度が高まった。途中で会場に入場規制がかかったようなので、頑張って早起きして並んで本当に良かった。

13:30

コスプレショーやNMBの女の子たちのトークショーを観ながら時間を潰し(コスプレイヤーに混じって私服の速水もこみちが現れました)、昼過ぎから始まったマッツのステージもそれは凄い賑わいだった。ステージが始まるまでの繋ぎの時間には巨大なスクリーンで最新映画の予告が流れていて、マッツが出演しているインディの新作の映像が流れただけで会場がどよめいていた。眼鏡をかけた悪役マッツは震えるほどかっこいいので無理もない。

予告時間からすこし遅れて登壇したマッツは、歓声を浴びながら投げキッスを会場中に振りまいたり指ハートを見せてニコニコしたりと、妖精としか思えない立ち居振る舞いで全てのオタクを魅了していた。そして用意された椅子にすぐ座るのではなく、司会の方と通訳の方に寄って行ってガッシリと握手しており、この人のこういうところが愛されるんだろうなあと既に涙が出そうだった。

ようやく座ったマッツが持参したペットボトルの天然水をひと口飲むと、私の横に座っていた女性が「天然水……」と呟いていてめちゃくちゃ笑いそうになった。マッツ・ミケルセンには天然水を飲んだだけでオタクに「天然水……」と呟かせるパワーがある。肌がキラキラつやつや光っているのが遠目にもわかり、普段から4Kで撮影される人間は肌質も4K対応になるんだなあと感心した。

この日のマッツは紺色と黒の中間ぐらいのシックなシャツをお召しになっていたのですが、第3ボタン(胸の真ん中あたり)だけが開いていて、身動きするたびにその隙間から肌色が見え隠れしていて正直全員そこしか見ていなかったと思う。気が気じゃなかった。わざと開けていたとしたらとんでもない悪魔だし、閉め忘れだとしてもそれはそれで可愛すぎて悪魔的だ。丸椅子に座るときも高さの変え方がわからなかったのか沈み過ぎてワタワタしていたし、座った後も脚を組もうとして失敗していたりと、あのお茶目さ・ドジっぷりを踏まえると閉め忘れた可能性が高い気がする。え?かわいすぎる……。

インディ・ジョーンズの最新作について訊かれ、マッツは穏やかな表情で「言ってもいいんだけど、そうするとみんなを殺さなきゃいけなくなっちゃうからね」などとジョークを飛ばしていた。殺してもらって全然構わんのですが……と本気で思った。あと海外の俳優って大体そうかもしれないけど、マッツってボケ側なんだなあとも思った。真顔で冗談を言って、相手の反応を見て口の端でちょっと笑うタイプ。かと思えば会話の変なところで急にウケ始めて周りを置いてけぼりにするようなところもある。みんなああいう男を笑わせることが出来たら嬉しいから頑張って面白おかしく話すんだけど、マッツは誰も意図していないところで1人で笑う。誰も彼のツボを掴めない。みんながあの人の特別になりたいのに、マッツは空中を漂うケサランパサランとかを目で追ってニコニコしている。彼はそういう人間だ。私は何の話をしていますか?

マッツのステージは体感5分ほどで終わってしまったけど、最後に日本のファンへ向けてメッセージを残してくれて、それが本当に素敵だった。きっとあの言葉は死ぬまでに何度も思い出すと思う。それくらい嬉しかったので、ここに書き起こしておく。

Keep being who you are. You are a wonderful people. You have a wonderful country. So don't change too much. I love coming here.

好きな人間にこんな風に言われて泣かないオタク、いますか?本当に涙が出た。どうかそのままでいて。あなたたちは素晴らしい人で、素晴らしい国だから、あんまり変わらないで。ここに来るのが大好きなんだ、って。書いてる今も半泣きです。私は人に誇れるような人格者ではないし、日本のことを正直そんなに良い国だとも思っていないけれど、でもマッツがそんな風に思ってくれているなら、もう少し自分たちのことを愛してもいいかなあと思えた。
これは俳優に限らず、どんなコンテンツが対象であっても言えることだと思うんですけど、何かを好きになることって巡り巡って自己愛に繋がることがありますよね。好きなものや人ができて、そのおかげで視野が広がり思考が柔軟になって、自分の生活もちょっと豊かになる経験って、誰でも多少はあるんじゃないかと思う。それってすごく美しいことじゃないですか?愛も生活も経済も、推しへの気持ちを原動力にどんどん回していこうよ。

16:15

この日は夕方から雨予報で、15時を過ぎたあたりからパラパラと雨が降り始めていた。会場が海のすぐ近くということもあり、結構寒かった気がする。気がするというのは、マッツとの撮影時間が近づくにつれて自律神経がバグり、暑いのか寒いのか今何時なのか、自分がトイレに行きたいのか行きたくないのかもよくわからなかったからだ。友達は撮影チケットを撮っていないので、そこから先は単独行動になるという緊張感もあった。そもそも1人で来ている人からすれば何をそんなと思うだろうが、緊張するイベントの直前に1人になるというのは緊張感に拍車をかける。右手と右足を同時に出しながら待機場所に向かい、撮影ブースのある会場へと入った。

コミコンの3日間でマッツは累計9000枚の撮影をこなしたそうなので、1日あたり3000人弱のオタクが詰め寄せていることになる。何度も撮る人もいただろうから正確な人数はわからないけれど、撮影だけでなくサインやグッズも踏まえると10億近い売上を叩き出しているかもしれない。すごすぎる。
とにかくそのうちの1人として私も待機列に並び、震える手で髪型やメイクを何度も確認しながら順番を待った。列の動きは思っていたよりスムーズで、並んでいたのは30分程度だったように思う。後でnoteを書こうと思っていたはずなのに、時間やそのとき思ったことをメモしておくという思考がすっぽり抜け落ちていた。本当にただただ緊張しながら突っ立ってしまった。ただ1つ覚えているのは、私はここ半年ほど『THE FIRST SLAM DUNK』に激烈にハマっているため、心の中で宮城兄弟の「キツくても、心臓バクバクでも、目いっぱい平気なフリをする」を必死で唱えていたことだけだ。

荷物を預け、10人ほどまとめて黒い箱のような撮影ブースに入れられた。ブースに入った瞬間、もう、いた。普通に正面にいた。オタクは左側の壁に沿って並び、奥の壁の中央でマッツと写真を撮り、右側の出口へ捌けていくという流れだった。
撮影のペースが驚くほど速い。ツイッターでよくベルトコンベアーだと言われていたが、本当にそうだった。ユニバに行ったことのある人にしか伝わらない例えをしますが、ハリポタのフォービドゥンジャーニーに乗る時ってかなり流れ作業じゃないですか。何名様ですか?はいこちらへ、はいアレに乗ってください、と言われて流れていく座席に急いで乗るあの感じ。まさにあれでした。オタクの狂った体感でも何でもなく、事実としてブースにいる時間は30秒もなかったと思う。

心の準備が全く整わないままマッツの前に進み出ると、彼は150そこそこしかない私を見て即座に屈み、肩に腕を回してくれた。片眉を少し上げて「小さい子が来たな」という顔をしていたように思う。他の人の写真も見た感じでは、マッツが真っ直ぐ立ったままか屈んでくれるかはこちらの身長によると思う。本人の気分次第、つまりガチャなので言い切ることはできないが、彼はサービス精神の塊なので小さなオタクには背を丸めて対応してくれている気がする。低身長でよかったとこんなに思ったことはない。
マッツは"Hi"と言ってくれた気がするが、急に顔が10㎝の距離にきたことで完全に頭が真っ白になってしまったので定かではない。あのときに戻れるのなら、自分をぶん殴ってでも一言一句聞き逃すなと言ってやりたい。この時点までで覚えていることといえば、
・マッツの周りだけ気温がなかった(暑くも寒くもなく本当に"無"だった)
・香りも特になかった(微かに煙草の香りがしたと言う人もいるけど私はわからなかった、悔しい)
・彼の周りが白く薄ぼんやりとぼやけていた(完全にエフェクトがかかっていた。私の目や脳が壊れたのでなければ、マッツの周りには白いエフェクトがかかっていた)
の3点だ。

私は唐突に、4次元ってこういうことかと思い至った。人類は「4次元はブラックホールの中にあるんじゃないか」とか一生懸命考えているようだけど、違う。4次元はマッツ・ミケルセンの周りにあった
それから、もしも五条悟が実在したらこういう感じかもしれないとも思った。私は呪術廻戦をふんわり読んでるのでふんわりとしか理解していないのですが、五条悟の周りには「無限」があって触れない(触ろうとすると動きがどんどん遅くなる)みたいな設定ありますよね。相対性理論だか何だか知らないけど、とにかく彼の周りには宇宙的なエネルギーが働いていて、他とは流れている空間が違うらしい。それをマッツ・ミケルセンから感じた。マッツの周りに「無限」があり、近づくと時間の流れが狂い、宇宙のエネルギーを感じた。私は別に怖い宗教とかには入っていないです。

上記のようなことを走馬灯もびっくりの速度で考えながら、それでも私の身体は驚くべきことにマッツの背に腕を回し、きちんとカメラの方を向いていた。マッツにもちゃんと体温があり(当然である)、背中は結構柔らかくて肉を感じた。人間だった。マッツって人間だったんだ。知らなかった。知れて良かった。
ちなみにカメラの場所はわからなかった。難しかったとかではなく、私の頭がもうキャパオーバーで、それっぽい機材を見つめて微笑んだらそれがたまたまカメラで正解だったという感じだ。撮影が終わるとマッツは背筋を伸ばし、私を見下ろして「アリガト!」とハッキリ言ってくれた。「ガ」に強めのアクセントを置いていた。私はサンキューと言えたかもしれないし、蚊の鳴くような声で「ァ……」と言っただけかもしれない。この日のためにHiとThank you、それからI love youをデンマーク語で言う練習を死ぬほどしていたにもかかわらず、私はオタクのちいかわにしかなれなかった。他の人のレポにもよく「何も言えなかった」「記憶がない」などと書いてあるし、それを見た第三者は「しっかりしろよ」と思うかもしれないけれど、あれは本当です。人間はいざというとき本当に役に立たない生き物です。言いたいことも覚えておきたいことも、全然思い通りになりません。他の生き物より少し脳みそが発達しているだけの動物です。本当に悔しい。

約5秒間の撮影を終え、おぼつかない足取りで現像された写真を受け取り(驚きのB5サイズである)、私は目を疑った。私の左腕、右肩、それから頭が、マッツと触れている。3箇所もマッツと接触していた。左腕で触れた感触は確かに覚えているが、あとの2点は全く記憶になかったので普通に「え!?」と声に出して驚いてしまった。叶うなら、写真ではなく動画でデータがほしい。一連の流れを映像で観たいし、辛いけど自分の言動も確認したいし、何よりその瞬間だけは私のために動いているマッツを永遠に手元に残したい。5万くらい払うから映像データも売るようにしてほしいですコミコンさん。

20:00

そのあとは友達と合流して物販で少しだけ買い物をして(マッツのグッズは軒並み売り切れていた)、鳥貴族で晩御飯を食べて帰った。1日フル稼働で本当に疲れたし、天気もあまり良くなかったけど、心の底から楽しかった。ツーショットというハードルや値段に怯まずチケットを取って本当に良かった。
東京コミコンの運営は対応が悪い、情報が共有されていないからスタッフによって言うことが変わる、何とかしてくれ、というようなツイートが事前に散見されていて、そんなになのか?と身構えていた部分もあったけど、大阪では全くそんなことはなかったと思う。私の知らないところでトラブルがあった可能性はあるけど、少なくとも私の見た範囲ではすごく丁寧で親切な対応だった。そもそもあんなに注意喚起のような文言が出回っていたら運営の目にも当然入るはずだから、オタクたちの意見を踏まえた上できちんと対策してくださったのではと思う。大阪で第2回開催があればまた是非行きたい。マッツにまた、会いたい。今度はせめてサンキューだけでもきちんと言いたいし、何かポーズも取ってみたいし、やっぱり愛してると伝えたい。ここで言っても仕方ないけど、でも言わずにいられないので言わせてください。マッツ大好き、ありがとう!また来てね!

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