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【余談1】宮城野コンフィデンシャル

 本編だけだと息が詰まるような気がしますので、時々「余談」を挟むことにします。

 本編6で書いたように、仙台時代に『宮城野コンフィデンシャル』という新聞を発行していました。

 30年以上も前の新聞ですが、すべて保管してあります。

 久しぶりに読んでみたのですが、「支社活性化施策」のためということだけではなく、別の動機もあったことを思い出しました。

 仙台に赴任した私は、地元の皆さんと早く仲良くなりたかったため、若手社員たちに声を掛け、さくらんぼ狩りを企画しました。しかし、なぜか上司たちの抵抗に遭い、残念ながら集まったのは私を含めて3名のみだったのです。それで若手社員間の関係作りのために…と新聞の発行を始めたのでした。

 その時の思いを「創刊に際して」というタイトルで、私は新聞発刊の目的を綴っていました。

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創刊に際して

 桜桃狩りの失敗は、企画力の敗北であった以上に、私たち若い文化力の敗退であった。私たちの文化が権威に対して如何に無力であり、単なる徒花に過ぎなかったかを、私たちは身を以て体験し痛感した。西洋近代文化の摂取にとって、明治以後百二十年の歳月は決して短すぎたとは言えない。にもかかわらず、近代文化の伝統を確立し、自由な批判と柔軟な良識に富む文化層として自らを形成することに私たちは失敗してきた。そしてこれは、各層への文化の普及浸透を任務とする言論人の責任でもあった。

 1601年伊達政宗により仙台藩が開府して以来、質実剛健、自由闊達といった藩風が培われ、現代まで延々と引き継がれてきている。これは、それまでの混沌・未熟・歪曲の中にあった奥州の文化に秩序と確たる基礎を築くという意味では真に画期的であった。反面、保守的な風土に如実に表れているように封建的思想が肥大化し根深く息づく結果を招いた。

 我々は、このような地元の文化的危機にあたり、微力をも顧みず再建の礎石となるべき抱負と決意をもって出発したが、ここに創立以来の念願を果たすべく『宮城野コンフィデンシャル』を発刊する。

 これまで刊行されたあらゆる新聞冊子漫画類の長所と短所を検討し、古今東西のオピニオン・トピックス等を多くの人々に提供しようとする。しかし私たちは徒に百科全書的な知識のディレッタントを作ることを目的とせず、あくまで祖国の文化に秩序と再建の道を示し、この新聞を我々の栄ある事業として、今後永久に継続発展せしめ、娯楽と教養の殿堂として大成せんことを期したい。多くの若き技術者たちの愛情と忠言と支持によって、この希望と抱負とを完遂せしめられんことを願う。

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 今読んでも、なかなか格調高い文章だとは思いますが… これが角川文庫のパクリでなければ。

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