佐久間友香&村上仁美「曉月 -Twilight on the Horizon-」展イベントレポート

12月20日、冬至迫る金曜日に、佐久間友香さんと村上仁美さんの二人展「曉月 -Twilight on the Horizon-」のイベント「HORIZON」に参加しました。
こちらのイベントは2部構成だったのですが、第1部・第2部とも、とても素敵な会でした。陰が極まり、陽へと転じようとする刻の谷間で開かれた聖餐の様子を、忘備録的にレポートさせていただきます。

■第1部 ミニコンサート&作家トーク
まず、Myth.のお2人による、オープニングソングから始まりました。祝詞「祓詞」を聖歌風にアレンジしたオリジナルソングで、神秘的な響きがありました。お2人の衣装も、真っ白な天使を彷彿とさせるもので、とても美しかったです。歌を聴きながら、テーブルに飾られている村上さんの人魚を模した大皿と、天井から吊るされた佐久間さんの人魚の絵を見ていると、まるで、生贄に捧げられた人魚の魂が、御使いの先導のもと、天へと還っていくかのように見えました。

歌の後は、村上さんと佐久間さんのトーク。
印象的だったのは、春を告げるつばめは、冬の間は魚になると信じられていたという伝承からインスピレーションを得、会場を飾るクリスマスツリー(中村美梢さん制作)のオーナメントの1つとして、魚のように見える鳥を制作したという村上さんのお話。
このオーナメントは、ひとつ1,980円というお買い得価格だったので、私はこの魚鳥ちゃんを含めて、3つお買い上げしました! 佐久間さんの絵と、村上さんの陶をダブルで楽しむことができます。

その後、聖体拝領を彷彿とさせる、パンとブドウジュースのサーブがありました。このパンを包んでいたペーパーに書かれていた佐久間さんの絵(猫耳のミステリアスな女の子? 男の子? あるいは無性?のイラスト)も、かわいらしかったです。陰陽を司る妖精みたいでした。
しばしの歓談に続いて、Myth.のお1人による誘導によって、瞑想の時間へ。本格的な誘導による瞑想は初めての体験でしたが、かなり心が落ち着き、宇宙空間で光の渦に呑み込まれるという、かなり壮大なイメージが湧きました。最後に、参加者も交えて、「Amazing Grace~新しい朝~」を合唱しました。暗闇から光への覚醒、旧い時間が死に、新しい時間が復活する、というイメージの歌詞なのですが、選ばれている言葉のひとつひとつが、とても優しくて、すっと心に染み入ってきました。

■第2部 お茶会
第2部も、Myth.のお2人による、オープニングソングから始まりました。バッハの曲をアレンジし、オリジナルの日本語詞をつけた曲で、この歌詞がまたとてもよかったです! 思わず聞き惚れてしまいました。このお茶会のドレスコードは黒だったのですが、先ほど触れた通り、Myth.の衣装が白だったので、聴衆と歌い手の間にある黒白のコントラストが効いて、空気がきりりと引き締まっていました。

その後、村上仁美さん作の人魚の大型器に盛られたケーキ(人魚の肉を模しています)をいただきながらのお茶会となりました。村上さんの手でケーキが取り分けられ、それをやはり村上さんが制作された器でいただくという、かなり贅沢な時間を味わいました。器の部分は、ちょうど、人魚の腹の部分にあたっていて、それこそ本当に、人魚の腹を切り開いて、その中身を食べているかのような気分になりました。ケーキは、フルーツパーラーゴトーさん作とのことで、生クリームたっぷり、ザクロの実がアクセントになっていて、とても美味しかったです(参加者のどなたかが、「ザクロの実って、人肉の味っていいますよね…」とつぶやいたのも印象的でした! お釈迦さまが、可梨帝母=鬼子母神にこの実を与えて、人間を食べないよう約束させたという伝説から出てきた説です)。お供のお茶は、夜想編集長によるオリジナルブレンドティー。オレンジの、とても良い香りがしました。マグカップには、佐久間さんによる双子の天使のような子供たちのバストアップのイラストが付されていました。

テーブルの雰囲気はまさに聖餐! 神様に捧げた生贄の肉を全員でいただくことで、その聖性を身にまとうことで新たな生へと生まれ変わる、という感じです。同時に、黄泉の国=死の国の食べ物を食す「黄泉戸喫」のイメージもありました。『古事記』にもある通り、「黄泉戸喫」をすると、その人物は死者の国の住人となり、もはや生者の世界には戻りがたくなります。先ほど言及した、ケーキの中に入っているザクロの実は、冥界に連れ去られたペルセポネーが、ハデスの手からもらって、思わず何粒か食べてしまい、このために彼女は、食べた実の数分だけは冥界に留まらざるを得なくなったというギリシャ神話も思い出させます。この、ペルセポネーが冥界に留まる期間が「冬」と称されるわけです。衰滅する暗い冬と復活の明るい春、2つのエネルギーが融合し、共存していたお茶会でした。

このお茶会で使用した佐久間さんのイラストのついたマグ、やはり佐久間さん作の冬至鳥(美人さん)のイラストがプリントされたナプキンペーパー、そして、村上さん作の、コップの縁につけるマスコット(いくつか種類がありまして、私は山羊角さんの1人をいただきました)は、いずれもおみやげとしてお持ち帰り可能という、最後の最後まで豪華な会でした。

不思議なことに、器となって自らの肉を皆に分け与えた人魚は、腹の中が空になった後の方が、より生々しく「生きている」という雰囲気をまとっていました。私は文字通り、この人魚の死と復活に立ち会い、彼女と命を共有したようです。

村上さんと佐久間さんの二人展「曉月 -Twilight on the Horizon-」は、2020年1月20日(月)までやっています。みなさま、是非足を運んで、お2人の作品から、陰陽極まったエネルギーを分けてもらってみてください。

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