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降り注ぐ萩を見上げて、万葉人に思いを馳せた日。

10日以上も更新が滞り、いよいよ10月に入った。少し振り返って書いて見たい。            

第四十八侯 秋分末侯【水始涸 みずはじめてかるる】10月3日〜7日          Farmers drain water
稲刈りに備えて田の水を流し出す。いわゆる「落とし水」の時期。実際にはこの辺りの田んぼの稲刈りはほとんど終わり、新米も味わった。

萩祭りの鑑賞】                          季節の花が盛りの時によく「〇○祭り」と言うのが催されるが、正直あまり好きではない。でも今回は気になって最終日に滑り込んだ。以前もご紹介した仙台市の「野草園」。二週間の制限期間の閉園が解除されたので今年の名残りと思い行って見た。我が家からは少しあるが、街中からはさほど距離はなく、駅からバスで15分ほどで着いた。途中パノラマ的な景色が広がる、その名も「萩が丘」というバス停を通った。夜景はさぞかしと想像した。

仙台駅から南へ向かい、広瀬川、愛宕山を隔てた大年寺山の北西側に野草園はある。標高は約120mほど。山全体が公園になっていて東側には伊達家の墓所がある。元禄の頃、伊達家四代藩主綱村が黄檗宗の僧を招き、大年寺を造営した。これ以降江戸で死去したものを除き、ここが墓所となった。  初代政宗から三代藩主までは、仙台城から広瀬川を挟んだ経ヶ峰にある瑞鳳殿が廟所。しかし明治に入り、廃仏毀釈の影響で伊達家が仏式から神道に改めたため、大年寺は荒廃し現在は惣門が残るのみである。昭和になって黄檗宗が大年寺を再興し現在の大年寺となっている。

萩の鑑賞ツアー】                         さて、横道にそれてしまったが、萩祭りに戻る。ボランティアのガイドさんによるツアーもお目当てだった。10人もいなかったけれど、時節柄二つのグループに分けられたので、少人数でありがたかった。          参加者は野草が大好きでたまらないと言った面々で、ガイドさんの話に目を輝かせながら進んだ。ちょっとでも疑問に思ったことや分からない草花の名前など、聞けば何でも答えてくれて、ストレスがない。ガイドと言うものは何でも分かっていなくてはいけないものだ、と改めて感じ、自分に照らし合わせ刺激を受けた。ガイドさんは萩以外にも今咲いている珍しい花などを案内してくれた。

木レンゲショウマ

キレンゲショウマ。初めてみたが、名前は印象に残っていて、どんな花が気になっていた。宮尾登美子の小説『天涯の花』、テレビドラマにもなったが、徳島の剣山にこの花の群生があると言う事だった。あぁ、これがキレンゲショウマ、とわかり嬉しかった。

テンニンソウ、野草園

名札も付いていず、園路に咲いていたテンニン草

サンカクヅル

実が青く色づいていて,葡萄の種類かと思ったがサンカクズルとのこと。

ツルドクダミ、野草園

これも名札がなかったツルドクダミ。ドクダミもいろいろあるものだ。

ナンバンギセル

ナンバンギセル(南蛮煙管)。ススキの株元に寄生していたのをガイドさんが教えてくれた。珍しいものを見ることが出来た。

山路のホトトギス

ヤマジノホトトギス(山路のホトトギス)。紫の斑点があって渋い魅力。

柚香草

夏の終わり頃から園内のあちこちに咲いていたユウカギク(柚香菊)だが一段と大きく華やかに花びらを広げて目についた。数えきれないほどある野菊の中で大好きなもの。柚子の香りがするのだろうか。

萩尽くし

いよいよ萩のトンネル、ハギの道、ハギの滝、芝生広場の大きな萩のブッシュ、日当たりの良いところは様々な萩が咲き乱れていた。園内のハギは15種、1300株と言う。ガイドさんからそれぞれ説明を受け、細かく特徴を教わったが、あとで写真も見てもなかなか区別がつかない。有名なミヤギノハギ,ツクシハギ、ニシキハギ、シロバナハギなどなどは何とか判別できたかもしれない。薄紫、ピンク、濃い紫、白とピンクが混じったもの、真っ白な白萩は地味かとおもいきや、群生していると華やかなものだ。

ハギのトンネル

ハギのアーチ

萩のシャワー

シロバナハギ

枝垂れる野草園の萩

枝垂れかかる萩

紅白の萩

ツクシノハギ、野草園

ハギの道を歩いているうちに別世界に迷い込んだ。           山上憶良が秋の七草を詠み込んだ歌で真っ先に挙げたハギの花。万葉の時代には可憐で美しい花の代表だったのだろう、万葉集で一番多く詠まれているのは萩の歌だと言う。141首とも142首とも言われている。(次は梅の119首、松の88首と続く。)                       萩が咲き乱れる園を巡っていると、一瞬、万葉人になったような気がして優雅に歩いてみた。当時はさぞかしゆったりとした時間が流れていたに違いない。

秋の野に咲ける秋萩秋風に靡ける上に秋の露置けり(巻8-1597)    大伴家持は4回も秋を重ねて詠んでいる。

枝垂れかかる萩

今日はこの辺で。




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