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社会人学生としての振り返り その3

自己紹介

本記事は社会人学生Advent Calendar 2021の1日目の記事です.まずは今年のアドカレを立ち上げた人間として,ご参加くださった執筆者の皆様,読んでくださる皆様に感謝を申し上げます.
そして,初めましての人は初めまして,Twitterで絡んでくれている人はいつもありがとうございます.去年の社会人学生アドカレに引き続きまして今年も執筆いたします「望月紅葉さんと幸せな家庭を築きたい」です. 
 軽く自己紹介をいたしますと,私は2019年4月から東京工業大学の博士後期課程に入学し,民間企業で働きながらの社会人ドクター(以下,社D)をやっております.この記事では3年目になった社D生活を振り返るようなお気持ちでやっていきたいと思います.
(今年はネタを仕込む余裕がなさそうなので,単に回顧録っぽくなります)

概要

このアドカレでは以下の3つの内容について触れたいと思います.
D論執筆開始
2021年は社D生活が3年目になり,学位取得に向けたD論執筆を開始した
卒業要件の達成
卒業要件の「2本海外雑誌への採択」を達成するのがD論の審査へエントリーするタイミングの直前だった
反省点
博士課程への入学を考える際には卒業要件と博士審査のスケジュールを綿密に考えるべきだった.入学する前に卒業要件の定量目標を達成できそうなネタを温めておいて,入学と同時に全てのカードを投稿すると楽だったかもしれない(自戒)

2021年の博士課程関係の出来事

国際雑誌投稿
2021年の冬(1, 2月)は定量目標の国際雑誌2/2本目を通すための実験がメインでした.国際雑誌の内容を考える上で出てきた副産物を査読なし国際学会に投稿したり,CVPRのワークショップに投稿したりしました.国際雑誌は3月頭に投稿して,7月頭に1回目の査読,そして10月中旬に採択が決まりました.
中間発表
私の所属コースではD論の研究内容に関する中間発表を2回やります.その2回目の中間発表が2021年8月に実施されました.
博士の審査へのエントリー
10月には博士論文の審査にエントリーするか否かを決定して指導教員へ宣言します.(このタイミングギリギリに国際雑誌の採択が決まって冷や汗でした)
D論執筆
ゴールデンウィークくらいからちまちまと書き始めました.

最終発表会等は現時点では行われていないため,今年話せる内容としては「中間発表」と「D論執筆」の二点です.

博士論文の中間発表(2回目)

2回目の中間発表では,最終試験において審査を行う先生方が聴講します.つまり,審査員の先生方がどのような考え・技術背景を持つのかを最終審査の前に知っておく会です(たぶんそう).
 学会発表と博士論文の中間発表で最も違う点は「異分野との交流」です.学会発表であれば口頭発表を聞きに来るのは基本的には自分の専門分野に近い方です.しかし,私のコースでは同じようなトピックではあるが少し専門性が違う先生が審査員になることが多く,様々な分野の地雷を回避する必要があります.
例えば私の踏んだ大きな地雷ですと,「分野Aと分野Bにおいて同じ単語でも全く違う意味を持っていた」です.なので,事前に言葉の定義を明確にすることが重要です.
 私は上記の内容を中間発表後に身をもって理解しましたので,最終審査の際には言葉の定義,質問者の先生の背景を考慮した応答を心がけたい.(この話は前回のアドカレでもしていた気がするので,進歩が無い......)

D論の執筆

ゴールデンウィーク頃からD論を書き始めました.入学してからの国際会議や国際雑誌をまとめるだけなので楽だろうと思っていたのですが,D論の自己完結性を高めることや,異分野の人でもD論を読んだら理解できることが審査員の先生から求められました(審査員の先生の意見に依存しそうですが).
したがって,私の審査員の先生方に対してD論のアピールをするには,単にこれまでの出版物をまとめるだけでなく,背景・関連研究・手法の説明を異分野の人向けに詳しく執筆する必要が出てきました.
また,ある審査員の先生に言われたのは「D論を読んだだけで手法を再現できるように」とコメントされたので,アルゴリズムのI/Oのデータ型(例えば専門家が見れば自明でもフーリエ変換の出力が複素数であればそう明示的に書く)なども詳しく書く必要が出てきました.さらに,D論のまとめの章に対しては「大型予算を取るとした場合の背景のような博士の研究の先にある風景を書くべき」とのコメントも審査員の先生に頂きました.
 その他にも細かなコメントを頂いたので要点をまとめると:
・D論内での自己完結性を高める
・D論ないの矛盾をなくして論理展開に綻びが無いようにする
・異分野の人にもわかるようにできるだけ詳しく書く
・まとめの章では大型予算を取るような気持ちで野望を大きく
・言葉の定義を明確にする(例えば「非線形な現象」と書く場合,何に対して非線形なのかを書くべき.また,自分野と異分野で言葉の定義が違う場合もあるので,用語集を作っておくと誤解が無い)

あと,D論のタイトルは最終審査でも変わったりして提出の最後の最後まで変わる可能性があるので,頻出する用語はマクロで組んでいた方がいいです.タイトルに出る単語は確実に本文でも言及回数が多いので.


反省点(社Dになる前に考えるべき点)

備忘録として,個人的な反省点を書いておきます.
反省点は「授業の単位数」と「定量目標」の事前確認です.
授業の単位数
私が入学して2年目以降はCovid-19の影響を受け,授業がオンラインになりました.従って,東工大のキャリア科目4単位・文系教養科目2単位の取得難易度が下がりました.実際に教室で受講する場合でこの2年を過ごしていたら難しかったと思います(実際,1年目の授業では大学に行く休みが取れずに単位を落としました).
定量目標
東工大の私の所属コースでは「国際的に認められる雑誌にて論文採択数が2本」です.つまり,国際雑誌2本なので査読期間を考えると実質的に研究に使える時間は2年弱になります.実際,D2の冬に投稿して採択が決まったのがD3の秋なので,査読スパンの長さが命取りになります.
もしこの記事を読んでいる社D希望者の方がいらっしゃったら,私のような後悔をしないための戦略を書いておきます.安心して社D生活を送るためにはD論の中に入れられそうなネタを定量目標の数だけ用意しておいて,入学と同時に投稿する戦略が無難かもしれません.(同じ研究室の社Dと話をしてこの結論になりました)

今後の予定

1月初旬に博士論文の発表会があり,その後,発表会でもらった意見を元にD論の修正を行った後に最終試験があります.
はたして来年の私は博士号は取得できるのでしょうか......
ついでに,D取得後のキャリアもどうしようか……(学振PD落ち並みの感想)

次へのバトン

明日のアドカレはカイヤンさんです.東工大に社会人ドクターとして同じタイミング(2019年春)に入学した同期みたいに思ってます.
25日まで引き続きこの社会人学生アドカレをお楽しみ頂けましたら幸いです.


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