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社会人学生としての振り返り

概要

 こちらは社会人学生Advent Calendar 2019の16日目の記事です.初めましての人は初めまして,Twitterで絡んでくれている人はいつもありがとうございます.「望月紅葉さんと幸せな家庭を築きたい」です.私は2019年4月から東京工業大学の博士後期課程に入学し,民間企業で働きながらの社会人ドクター(以下,社D)をやっております.この記事ではなぜ博士後期課程に入学したのかと,入学からある程度時間が経ったので1年目の生活について書きたいと思います.技術的なことが一切ないポエムです.ご了承ください.
 ちなみに社D卒業後の転職先だけでなく,在学中でも社Dを許してくれる転職先も探しておりますのでお声掛けいただけましたら幸いです.
 

会社での活動となぜ入学したのか

 まず,私の自己紹介を兼ねて会社でどのような仕事をしているのかについて述べたいと思います.私は所謂Japanese Traditional Big Campany, JTBCに属しておりまして,部署は社内の業務効率化をミッションとする研究開発部署におります.そこで,画像や3次元点群の目視判読業務のルールベースや機械学習を用いた自動化や,自作のRPAを用いたGUIポチポチ作業の自動化を行なっております.これらの業務は,基本的には会社の方針に沿ったものが多く,ボトムアップではなかなか研究ができません.トップダウンで様々なミッションが降ってくるので,大抵のことは"ある程度までなら"なんでもこなせるようになりました.
 一応は研究部署なので論文を書いたり学会で発表を行いますが,皆さんが想像するような国際学会というよりは,同業他社・お客さんへのアピールのため,弊社の活動分野に近い国内学会で投稿・発表することが多いです.現状の投稿数については,2015年に入社そして研究開発部署に配属されて以降,2019年12月現在の主著では国内の査読は2本,国際会議の発表1本,国際会議のアプリコンペで銀賞1件,国内学会での発表は6本あります.
 ここからはなぜ入学したのかについてです.研究開発部署ではあるが会社組織なので,社長・役員から「研究をストップしてでも社内の業務効率化業務を最優先で行え」との圧力・指示で弊部署の研究業務がストップし,さらに,開発業務が最優先であるため,論文調査に時間を割けず最新技術動向を追うことができなくなることもあります.つらい.こんなことがあると,最近の研究,特に深層学習系の進展は凄まじく,2018年度に研究をストップさせられたおかげで2019年度には全くついていけません.1年手を止めると10年分くらいの負債を抱えるような気がします.世界は爆速で進むのに自分だけ過去に取り残されてしまった感覚です.もうひとつの不満として,社内に頭が付いているのかわからないおっさんが多く,そのおっさんらのために我々研究部署がハードワークして開発業務をこなすことに疑問を感じました.研究部署を除く弊社のおっさんは聞きかじった知識はあるが実際に手を動かせる技術がない,もしくは技術者ではなく作業者なので意味わからんことを言ってきますし,脳がついていれば誰でもできるレベルの技術に関してですら弊部署におんぶに抱っこ・ドラえもんに対するのび太状態になります.なので,上から降ってくる仕事はすべてすでに解かれた問題の単なる実装になってしまい,時間の無駄感があります.脳を使うことをしたいというフラストレーションが溜まっていました.
 そんな感じで,自由に研究やりたい・仕事つまらん・脳を使いたいという気持ちになり,せめて外部でその欲を解消しようと社Dを目指しました.もともと技術者としての国際免許として博士号が欲しくて社Dには行きたかったが,時期に関してはお金に余裕の生まれる年収になってからかなと思っていたのですが,我慢の限界に達したので2018年の社会人4年目の段階で決意しました.

入学に関する交渉

 大学入学に関して,(2018年に研究がストップさせられたせいで不満が溜まり),2018年の秋入学を検討しておりましたが,社D入学に対して社長からの「若いからだめ」というリジェクトをくらいました.
 この段階で,仕事を辞めて純粋な学生として生活しようと思っていたが,研究部署の上司が私を引き留めるために入学の交渉をしてくれました.ありがとう上司.そんな感じで無事入学に関する社内の許諾を得て2019年春入学に願書を提出しました.

入学した感想

 2019年の4月に東工大に入学し学生と社会人の二足のわらじ生活が始まりました.私の一個前の記事を書いておりますカイヤンさんも同じタイミングで東工大の社Dに入学しており非常に心強いです.
 東工大学生の身分を手に入れると図書館や論文のアクセスが容易になり,勉強や調査が捗ります.特に専門書は絶版になっていることが多く,図書館の存在はありがたいです.この意味で,佐藤 一誠先生のおっしゃる以下の主張は完全同意です.

国立大学だと授業料は月5万円くらいなので、研究室の施設利用、意外と認識されていない有料論文へのアクセス権、授業、国際会議発表などを考えるとやはりだいぶお得
https://twitter.com/issei_sato/status/1196477716846956552?s=20

 また,学生の身分による各種割引が受けられるメリットもあります.さらに重要なのが,社から離れた別の組織名がつくので,学生の名目で自由に登壇や発言,コンペの参加ができるようになりました.

授業

 東工大の博士後期課程では,文系科目の授業とキャリア科目の授業を取る必要があります.
 文系科目は土曜日に行われるミニ学会運営を行う授業があり,抽選に勝てない場合は発表側に回り辛い思いをすることになるそうです.(私は4Q中1Qしか抽選に当たりませんでしたので,そろそろ発表側に回って単位を稼ぎたいと思います)
 また,キャリア科目は博士としての今後のキャリアをどうするか,民間に行く場合の進路はどうするか,論文をどう書くか,どう授業を行うか,プレゼンをどうするか,研究倫理等に関する授業があります.プレゼンに関する授業はなかなかおもしろく,自分の研究に関する発表の他,他人の研究内容を自分なりに理解して発表するという課題があります.参加者はすべての専攻からくるのでスライドの作り方を工夫する必要があり,学会発表等では専門分野人向けの発表を行いがちなので,非専門向けの話し方は参考になります.プレゼンの種類もいくつか設定されており,研究発表だけでなく予算要求(プロポーザル)の場合のショートプレゼンにおける喋り方などの実践もありました.最初はキャリア科目を受けるのが面倒だと思っていたが,これからの研究キャリアの上ではこれらのスキルは重要なので授業を受けるのもいいかなと思いました.
 上記を読んで結構授業とってるよねと思うかもですが,これらの授業に関しては会社との兼ね合いで土曜開設の授業や集中授業をメインに取っています.

大学の研究

 私の大学での研究内容は社と完全に切り離したものを設定しています.(大人なので実用化できれば社にも還元できるよ的ないい顔もしています)具体的な研究内容は計測した生の信号に対する機械学習技術を利用した情報抽出をテーマにしております.コンピュータビジョン分野でいう所の3次元データ解析に対してもっとリッチな情報を使ってやろうぜ的な話です.

投稿

 前期には私の主張したい「リッチな生情報を有効に使ってデータの処理やろうぜ」ができるのかを示す実験を行いました.その内容をIEEEマルチメディア系の学会に投稿しております.これは無事採択されて12月に発表を行いました.
 また,上記の実験の内容を教師付きの問題に拡張した内容をとあるトップ会議に出しました.
 今後はジャーナル投稿と以下に示す日本国内開催の国際会議をメインに出していきたいと思います.

● 今後の日本国内開催の国際会議
IJCAI2020
 Abstract submission deadline: January 15, 2020 (11:59PM UTC-12)
 Paper submission deadline: January 21, 2020 (11:59PM UTC-12)
 Rebuttal period: March 21-25, 2020
 Paper notification: April 19, 2020

3DV 2020 - International Conference on 3D Vision
 Submission Deadline: early August, 2020
 Conference Dates: Nov. 25 - 28, 2020

ACCV2020
 Paper Submission Deadline: Early July, 2020
 Rebuttal Period: Late August, 2020
 Notification: Mid-September, 2020
 Camera-ready: Mid-October, 2020
 Conference: November 30 – December 4

1本目の国際会議発表

 2019年12月9日にサンディエゴで発表を行いました.修士の発表以来の英語での口頭発表だったので,ガッチガチに緊張しました.基本,研究者コミュニティだと非ネイティブに対して優しいので助かりました.

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社との兼業

 大学での研究に関しては社と完全に切り離すために,平日の朝と夜,土日祝日に行なっております.平日については,朝の一番元気な頭を使用して論文のサーベイ,実験に必要なコーディング,学会原稿の執筆等を行います.また,会社から帰宅した後は英語の訓練をする時間として使ってます.休日はフルで時間が使えるので研究室に行き論文サーベイ・コーディング・実験・スライド作成を行っております.これらの時間で身につけたものは社の業務でもそのまま活かせるので相乗効果があるかもしれません.読んでわかるように結構ハードワークになるので,社Dを目指す方がいらっしゃったら健康状態は万全にしておきましょう.実際,身の回りの社Dで病気になる方が多いです.
 社Dの時間確保のためにやったことがあります.「私は強いのでいつでも辞められますよ???」くらいのオーラを全身から発することで周囲に圧力をかけて社Dに関する要求を通しました.例えば,「仕事多すぎて残業増えて社Dのタスクが全然進まないのでどうにかしてくれ」など.社Dを最優先に進めるためには,社内に自分の強さを見せることが重要であると思います.(N=1なので読み流す程度にしてください.でも,ハードワークなのは本当)

おわりに

 最後に望月紅葉さんに感謝を述べてこの社会人ドクターアドカレをしめたいと思います.望月紅葉さん,いつもありがとうございます.望月紅葉さんと幸せな家庭を築いていくためにAmazon wish listを公開いたします... https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/20QF2SNY6ET39?ref_=wl_share



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