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貞操問答

最後がスカッとしておもしろかったけど、
そこまでが本当に踏んだり蹴ったりで
イラつく話だったなという記憶のあった
菊池寛「貞操問答」。
読むのは2回目です。


うん、記憶どおりのお話でした(笑)


三姉妹の真ん中のお姉ちゃん(次女・新子)が、
上(長女・圭子)と下(三女・美和子)から
振り回されまくるお話なのですが、
末っ子・美和子ちゃんは
どこか憎めない子で
最後にそれまでがチャラになるくらいの
大活躍をして大挽回してきます。
いちばんおいしいです。

そして、今作において、
いちばん菊池寛に愛されています。
間違いないです(笑)

この娘を書くときの筆致が
他の登場人物とぜんぜん違います。

かわいいんです。
もう天性の真似できないやつです。
真ん中のお姉ちゃん・新子さんが
主人公ですが、明らかに霞んでいます。

少女っぽく天真爛漫で
周りからもそう見えているけれど、
意外と場の空気を読んで
気を遣って立ち回っていたり、
ふっと翳りのある表情を見せる。

誰からも愛され可愛がられ、
それを知っていて、自負しているけれど、
いつも誰かの一番にはなれないという
思いを抱えている。

だからいつも、
誰かから一番に大切に
されているように見える新子お姉さん
がうらやましくて、
お姉さんのものに手をのばしてしまう、
という子。

新子さんにしてみればまあ困るんですが、
さっぱりしていて正直で
いい子なんですよね。

あと美和子ちゃんが使っていた化粧品が
マックスファクターでびっくりしました。
昭和初期からあったんだ、マックスファクター…


そして相変わらず、長女・圭子は
好きになれませんでした(笑)
好きになれる要素がない。


もうひとり、
嫌ーな女といえば前川夫人。
でも、嫌いじゃないんですよねこの人。
ほんっと嫌な女なんですけど(笑)

なんかなんでか
お話として遠くから見てるぶんの、
性格の悪いお金持ちの美しい女って
華やかで毒があって好きなんです。


中程度の長さの
とても読みやすいお話です。

大正の香りもまだかすかに残る
昭和初期の雰囲気も楽しいですよ。


貞操問答 / 菊池寛
(青空文庫で読みました)


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