心理学の信頼性研究部会

というのが設立されました。(受動態)

これは日本認知心理学会の研究部会制度に基づいています。以下にこの団体の概略をお示しします。

部会名称:心理学の信頼性研究部会
設置目的:
研究結果の再現率の低さや研究不正の発覚などにより,心理学の信頼性は近年大きく低下しています。また大衆によるポピュラー心理学への選好,統計の不適切な使用といった従来から存在している要因との複合的な効果によって,名実ともに科学としての心理学の根幹が揺らいでいます。そこで本研究部会は,当事者たる研究者同士によるこのような状況を改善するための議論,研究,実践を促進するための装置として発足しました。
本研究部会の活動は主に以下の事柄に関連します。
1)研究結果の再現性問題
2)研究公正
3)サイエンスコミュニケーション
4)研究者養成
5)学術出版
本研究部会はこうしたトピックに関しての活発な議論や取り組みの機会を提供していきます。
代表者:山田祐樹(九州大学)
事務局:佐々木恭志郎(早稲田大学)
部会サイト:https://www.facebook.com/pg/psycre/
問い合わせメールアドレス:yamadayuk@gmail.com
活動形態:
・国内外の研究者による定期的な研究会の開催
・国際/国内専門誌,プレプリントサーバーでの論文や解説文などの出版による誌面上の議論
・国内外の様々な学協会との共催による研究集会
・Slack等チャットツールあるいはTwitter等SNSを用いた研究者間での情報交換

以下に詳細説明をしますが,山田の個人的な話も含みます。

誤解を受けやすいので第一に明らかにしておきたいのは,我々は別に不正(QRP)警察や取締部隊ではないということです。あくまで「研究」部会ですので,その主眼は研究にあります。概略の目的にもありますが,近年の趨勢から,再現性問題に関する研究や議論が増加してきております。一方で,国内ではそれを議論・研究報告するプラットフォームやチャンスというのは単発の雑誌特集号やシンポジウム等に限られます。このような状況に際し,ある程度安定的なコミュニティが必要であると考えました。そもそも少なくとも私の近隣領域・分野ではこうした機能を持つ公式団体は存在しないため(多分...),設立に至りました。どうぞよろしく。

扱うテーマは正直言って心理学に限定する必要はまったくないと思います。団体の位置づけ的に心理学を掲げてはいますが,あらゆる領域分野の話を取り上げたいです。

関連テーマにサイエンスコミュニケーションがありますが,これはプレスリリースやサイエンスカフェ,出前授業等で,いかにスピン(粉飾)せずに正確に研究成果を広くわかりやすく伝えていけるかという問題と関連しています。そういう意味では研究だけでなく実践も活動範囲に含んでいます。研究者養成,つまり学部生・大学院生教育も実践的なものの一つです。

それと,学術出版というテーマを入れているのは,主に学術学会誌・専門誌・総合誌を中心に,査読(研究費審査含む)や論文の公表・評価手法に関わる話もしていこうということです。Google Scholarとかのサイエントメトリクスの話も含みます。

今のところ,何か○○とかでバリバリ活動してやる!というような具体案は用意していませんが,少なくともバリバリ活動する人を全力で応援します。また部会絡みで国際査読誌にこうした議論をどんどん発信していきたいなとも思っています。

ひとまず部会サイトをFacebook(↓)に作っています。利用頻度や目的や更新確認手段などについていろいろ考えたのですが,どうも特設HPやブログやnoteやTwitterやmixiやResearchmapやインスタなどよりはマシかなという結論に至りました(全部実際に作ってみて試しました)。適宜情報流しますのでフォローしていただけると幸いです。誰でも書き込めるようにしているのでご自由に議論していただいたり情報提供していただくのもかまいません,というかありがたいです。ちなみにフォローしていただいた数は成果報告等で利用させて頂く可能性がありますが,名簿等は作りませんのでご安心を。

山田は2015年頃からこの問題に注目してきており(理由は忘れた),もっと前からこの問題に取り組んでいらした方々から見ればまだまだ浅学です。上述のように,かなり広い範囲の研究や実践,研究者研究,国際比較などなど明らかに必要であるにもかかわらず,これらを個人でやることに限界を感じており,さらに私の能力的にも手に余るテーマが存在します(先進的な統計学の議論など)。また研究者の皆さんは十人十色で様々な研究慣習をお持ちで,その研究生活の中で様々なことを考え,「見て」こられたと思います。そうした知識や経験の集積も個人では難しいことです。そこで,この研究部会にはできるだけ広い範囲からの同志が集まっていただけたらなあと期待するばかりです。そして願わくはこの,どうしても暗くなりがちな議論をできるだけ建設的なものにしていきたいです。



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