見出し画像

宮原健斗とジェイク・リー〜2つの強さの意味〜

このnoteは全日本プロレスTVの6.19大田区総合体育館大会のメインイベント煽りVを見ると更に面白くなります。一ヶ月間は無料視聴できますよ。
該当箇所は3:04:40付近からです。

宮原健斗は強いレスラーです。身体能力、スタミナ、サイズ、技術。どれをとっても超一流です。それらのなかで、私が特に彼を凄いと思うところ。それは自分の弱さを見せないところです。己を最高と語り。どんな相手と対戦しても自分の方が輝いている。そうした自信あふれる姿は観客を魅了します。「宮原がいれば大丈夫」「やっぱり最後は宮原が締めてなんぼ」。近年の全日本プロレスはそうした、宮原による己の弱さを見せない超人的世界観によって支えられてきました。

プロレスラーは超人であり選ばれた人間である。絶対的な存在でなければならない。そうした考え方がある一方で。プロレスにおける強さにはもう一つの価値観があります。それは己の弱さをさらけ出すことです。

相手の強さや凄さを認める。もしかしたら自分を上回っているかもしれない。そうした部分をしっかりと自分で受け止める。そしてそれを隠さない。一見弱気な姿勢に写ります。ですが己の弱さをさらけ出すにはとてつもない勇気が必要です。誰だって自分の弱さを認めたくありません。相手の凄いことを認めずに。あいつは〇〇だからと逃げ道を作りがちです。

しかしジェイク・リーはそれを行いました。6.19大田区総合体育館メインイベントの煽りVでは対戦相手の宮原の凄さや強さを認めた発言をしています。宮原の強さを自分が持っていないということまで認めています。そして自分を信じきれなくなった時期もあるとまで言っていました。なりふり構わず宮原に勝つために。泥まみれになっても突き進む。それは自信あふれるかっこいい姿とは異なるかもしれません。しかし挫折や苦悩は万人が経験していることです。誰もが体験しているからこそ共感性も増します。これは宮原とは別軸の強さです。

はたして試合は三冠王者宮原をジェイクが下し、ついにジェイクが三冠戦での宮原超えを果たしました。これは単なる勝利ではありません。全日本で宮原の作った世界観を崩す。いや別の世界観を築く第一歩が刻まれた瞬間でした。それは試合後のマイクでもそう。「何度も怪我をしてこんな仕事いやになることもあった」「あんたらだってそうだろ?」「でもそんなときは俺の生き様を」「全日本の他の選手の生き様を見ろ」「それでまた明日から元気をだせ!」。宮原による「最高ですか!」とは異なる。しかしそれでいてファンに勇気を与える。そんな新しい景色が生まれた日。それが6.19大田区総合体育館だったと言えるでしょう。2つの柱を得た全日本がこの先どのような光景を作っていくのか?そして9月の日本武道館は?全日本プロレスについて興味の尽きない状況が続きそうです。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?