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映画「君たちはどう生きるか」と米津玄師ライブ「空想」体験記

夏休み明けの9月の話。
やっとこ一人の時間が出来たので「君たちはどう生きるか」観に行きました。

宣伝なしってどんなプレミアムな感じなのか、あえてネット情報もみないで、
何も知らないまま映画館へ。

以下、まだまだ観てない方はネタバレ注意


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まず驚いたのは
原作本として売らてれいた「君たちはどう生きるか」は、全然関係ない物語であること。

てっきり小説の主人公コペルくんが出てくるものだと思っていたので、
映画の主人公の真人(まひと)が出てきた時には
あれ?違う??

ストーリーは完全オリジナルで、
気持ちに蓋をした主人公が
その蓋を開け、前に進む物語。

以前、宮崎駿監督の
千と千尋の神隠し公開当時のインタビューで、
僕の映画の主人公に女の子が多いのは
女の子の方が強いからだよ、
うちの会社の新入社員も女の子の方が
芯が強いと言っていた記事を読んだことがある。

でも、
最後の長編作品となってしまうであろう
この映画の主人公は男の子。

千と千尋から23年も経っているので
時代の変化からなのか、
心境の変化なのか。

主人公の真人は
とても聡明な男の子でした。

全編を通して言えるのは、
アニメという表現に取り憑かれた
職人のすご技で
作品が作られていること。

僕はこれを(アニメ)やって
生きてきたんだよ。
君たちはどう生きるのかな。
そう聞かれている感じ。

エンディングテーマは米津玄師
「地球儀」

米津玄師さんの作曲時のエピソードや
宮崎駿監督との対談の話は
この配信で聴くことができます。

この映画の主題は「人生は生きるに値する」なんだそうです。

でも私、正直なとこ、わからなかったな。

私が特に感じたのは、
全女性への尊敬の気持ちです。

出てくる女性はみんな
強くて、優しい、深い愛がある。
美しい。

命が女性から生まれることへの
感謝と尊敬が感じられるような
シーンや、
そのたくさんの命を守る女性がいて、
80歳を超えたスーパーアニメ職人翁は
きっとお母さんが恋しいのかも、
結局女性には敵わないよ、という気持ちがあるかもなんて思いました。

でも言いたい。
私、一応母親ですが、
こんな素敵じゃないわ。
男性からみた理想の女性像なんでしょうか。

こんな女性にはなれない。
もっとあたふた、
埋めてしまいたい過去ばかり。

それにずっと命を育んだり、
面倒をみてたいわけでもないのです。
もっとエネルギーを一点に集中させて
わがままに何かに打ち込んでみたいとも思っているんだからね。

ジブリ映画の老人は
なんで目が大きくなるかな。
老けると眼球も水分を失って
縮んで小さくなるような気がするんだけど。
宮崎監督のお祖母さん、
目が大きかったのかしら。

米津さんが
宮崎監督から主題歌の作曲を頼まれた時に、
子どものころ、お姉さんと一緒に
お父さんの運転で映画館に行き、
「もののけ姫」を観たことを思い出したそうです。

その時の映画館の座席の下に置いた
マックの茶色の紙袋が印象的に目に焼き付いていている。
日本人ならそれぞれに宮崎アニメに
何かしらの思い出があって、
大人になった自分が
その国民的アニメ映画の主題歌の依頼を受けたことが、
信じられなかったそうです。

マックの紙袋の思い出は親友の
菅田将暉さんとの対談でも話してました。

(映画の試写を見終わって
エンドロールで声優に菅田将暉の文字を
見つけてびっくりしたそうな。
関係者も情報を知らされてなかったのね)

椅子の下のマックの茶色紙袋。
印象的な絵と断片的なその時の気持ちと
その思い出から
空想を膨らませて曲作りをしていくのでしょうね。

今年(2023)の春から始まったライブツアー

も「空想」と名付けられていました。

前々回ツアー(2019年)
「脊髄がオパールになるとき」の
映像が初めて円盤化されて
おうちでライブ体験が出来、
演出やセットリストがツボすぎて、
いつかいつかライブに行きたいと思いをこめて応募。
一次落選、二次抽選を平日に変えて当選。
運良く6月29日の横浜アリーナに参加することになりました。

この日はライブ初体験の
高校生の長男と参加。

音楽に人間の声はいらんという主義で
普段はインストメタルやゲーム音楽、
たまにボカロを聴くことが多いらしい長男に、
生の歌声ってもいいんだぜ、
と教えたかったのです。

チケットを取れたことを伝えると
「お母さんてライブとか行く人だったんだ!
意外。」
と言って驚いてたけど、
そんなこと言われた私も意外。

君と一緒に水族館や博物館、
プラレール博やら、
色々行ったけど、それは君が好きなところ。
自分じゃチョイスしないようなものが観られてよい経験だったけど、

お母さんがお母さん業しか
しない人だとは思わないで。
これからガンガン行くよ。

何の曲が聴きたい?ときくと
「アイネクライネ」と
「砂の惑星」なんだそう。
いいね、私も聴きたい。

砂の惑星は今回はセットリストになく、
アイネクライネは
1日おきに「Flamingo」と入れ替わるようで、日にちを数えてみると、
私たちが行く日はアイネクライネの日。

学校まで息子を車で迎えに行き、
そのまま新横浜へ。

今回の演出は
一つの映画をみるような展開で、
銀河鉄道のような線描のイラストの
オープンニングアニメーションが映し出され、
一曲目の「カンパネルラ」へ。
ドラマチックなはじまり。

ペールブルーのセットアップで
主役登場。

長男が私の顔をみる。
そうそう、本物がステージにいるよ。
やふぅ!

とりあえず、全力で楽しみたいので、
長男の存在はここで忘れることにする。

それから「迷える羊」「感電」と続いて
MC、横浜のみなさんへのご挨拶。
こちらこそ本日はよろしくお願いします。

セットリストを前もって確認した時に
7曲目に「Lemon」が入っていて、
これだけヒット曲がたくさんあるのに、
Lemonを入れてくれるの律儀やなぁなんて思ってた。

Lemonが爆発的に売れた時に、
町のどこでもLemonが流れていて、
この歌を聴きたくないのに聴かされている人がいて、
えらいことになったぞと思ったと
米津さんが話していたことを思い出した。

曲が一人歩きしていて、
勝手に遠いところまで行き、
自分にとっては普通に出しただけなのに、
みたいなことを言っていて、
もしかしたらコンサートにくる人は
Lemonを期待していているから入れないとマズイなんて思ってるのかしら。

リリースすれば全部ヒット曲だし、
良い曲ばかり。
私も特別Lemonが好きな曲なわけではない。

でも違ったな。
不思議な曲です。 
手を止めて聴いてしまう。
空気をガラッと変えてしまう魔力がある。
演出的にもここで必要な曲でした。

8曲目の「M七八」は
MVで聴くよりも
ステージで聴くとより遠い空を感じて、
水色のライティングがすごく綺麗だった。
LemonからのM七八。アリです。
感動。

そしてMC。

米津さんのMCって
正直、
何言ってるかよくわかんないんですよ。
ラジオとかもそうだし。
低い声でボソボソ、思いつくままに話して、
あ、何言ってるかわかんなくなってきた、
とご本人も言うくらいで。

でも今回のMC、面白かった。
あるゲームにハマっていて、
そのゲームにいかにハマり過ぎてるか
という話。
そのせいで作業遅れちゃって、
ぜーーーったい間に合わないってわかっている積んだ状態でステージで
今、歌ってます、とのことでした笑

楽しいお話の次はお楽しみタイム。
「Loser」
からはじまり「KICKBACK」までノリの良いやつ。楽しい。 
KICKBACKはMVもばかばかしく可愛いくて好き。

次のMCはなんで空想というタイトルにしたかの説明。考えながら話すので、
収集がつきにくくなる。
いつものわかりにくい話になってた笑
自分の作曲には全て幼いころの空想がベースになっているという話。

17曲目の「かいじゅうのマーチ」
可愛い。ほんと好き、この曲。
18番目は「馬と鹿」
シリアス。

エンディングに近づいちゃう。
もったいない。一曲一曲、一生懸命に聴く。

アンコールは5曲。
名前の決まってない新曲と
「POP SONG」
「placebo」
「アイネクライネ」
「LADY」

アイネクライネの前奏が流れると
長男が目を合わせてニコッと笑う。

あたしあなたに会えて本当に嬉しいのに
当たり前のようにそれらすべてが悲しいんだ
今痛いくらい幸せな思い出が
いつか来るお別れを育てて歩く

誰かの居場所を奪い生きるくらいならばもう
あたしは石ころにでもなれたならいいな
だとしたら勘違いも戸惑いもない
そうやってあなたまでも知らないままで

次男の小学校の個人面談に行ったら、
まだまだ女学生のような担任の先生が
今日は次男の人柄の良さについて
お話しようと思ってますと言って下さった。

活発たけどおとなしい次男は
なぜか先生やクラスメイトからも愛される存在で、
どうやってお育てになったんですか?
なんて聞かれてしまうと、
叩いたこともあるし、
ずるずるひきづったこともあるし、、、
私が感情をおさえられないことが多かった次男の幼児期。

あなたにあたしの思いが全部伝わってほしいのに
誰にも言えない秘密があって嘘をついてしまうのだ

賞賛されればされるほど
自分の中の暗い何かが浮き彫りになる。


今回の全国ツアーの会場リストをみると、
小さな会場もあり、
日本全国を細かく巡っているのがわかる。
小さい子も参加できるようにファミリー席も用意してあった。
動員数で考えれば
ドームでどーんとやったって満員に出来てしまうだろうに。

自分の作った作品が世に出される時
大々的に宣伝され
情報の海を渡っていく姿は
作者にとって痛みを伴うのかもしれない。

聴きにきたい人がいたら
どうぞ聴いて下さい。
国民的歌手の代表のようにされても
立っている場所は一人の作り手として
始まりの場所にいたい、そんな気持ちの表れかも。

「君たちはどう生きるか」の
上映情報が非公開なままだったのも
もしかしたら宮崎監督の
もうたくさん盛り立てられるのは疲れたよ、という気持ちからかもしれない。

最後は「LADY」
ライブの最後はいつも寂しくなる。
当選した2月からずっと楽しみにしていたから。

例えば僕ら二人 煌めく映画のように
出会いなおせたらどうしたい
何も謎めいてない 今日は昨日の続き
日々は続くただぼんやり

LADYはありふれた日常を愛おしく思う歌。

ステップを踏むようなリズムと温かさが
今夜はここまですが、
明日からも日常を楽しくすごしましょうね
とのメッセージだと受け取る。

2時間の物語はハッピーエンドを迎え、
駐車場へ長男と二人、機嫌よく歩く。

「お母さん、横浜アリーナは
成人式ぶりかも」というと
「お母さんにもそんな昔があったんだねぇ」
なんて言われてしまう。

ほんと、こんなにも時間が流れたんだ。

君は今日のライブのことを
私が死んだあとも
水色のライティングと一緒に
母との思い出として
いつか鮮やかに思い出すのだろうね。


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