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2023.12月読了【星を編む】


楽しみにしていた「汝、星のごとく」のスピンオフ。
本書を読む前に汝、星のごとくの方を再読したけど何度読んでもいいなあ。


櫂と暁海の物語以外にもたくさん気になる、濃度の濃そうな登場人物たちばかりだから読む前から期待値が高かった。
個人的には櫂のお母さんとか、尚人くんの話が出てくるとばかり勝手に思っていたのでそこか~!?と思いつつ確かに言われてみれば気になりすぎる点だったな?と納得した。


以下は各作品の感想をわけて。





「春に翔ぶ」
スピンオフとしておくにはもったいない、若かりし北原先生の物語。
前作の北原先生は、「効率化」の権化みたいな印象だった。シングルファザーで、互助会としての結婚を提案したり、この人は「世間」と戦っているなというイメージ。人と人というより世間という大きなテーマに挑んでる人だった。あまり人間味がないとすら思っていた。
でもこの作品を読むと、先生のたんたんとした会話や心情のなかに切なくなったり、優しさが溢れていたり‥効率的な生き方をしているようで実は最も非効率的な人だなと思った。
あまりにも献身的で、それは彼が不満を持っていた両親の生き方そのものだった。その中にも、結ちゃんの成長に感動したりそこに人間らしさがあって、こんな先生がいたから、暁海は自由になれたんだな。
今一番幸せになってもらいたい人物ナンバーワンかもしれない。



「星を編む」
残された、植木さんと二階堂さんが櫂と尚人と一緒に消えていった彼らの作品を世に出す物語。
前作のときから好きだった植木さんと、なんか濃そうな人物が出てきたなと思っていた二階堂さんの奔走。作品を生み出す側と、世に出す側。世に出す側の苦悩がそこにあって、あまりに簡単な感想だけど二人ともすごいなと思った。
あの時助けられなかった気持ちが残る二人の後悔や絶対世に出すという信念が混ざり混ざって、一瞬男女の仲になりそうになる危うさもあったりしてそこからまた立て直していくのがよかったな。
この二人のタッグは櫂と尚人くらい強力なものだなあと思った。



「波を渡る」
汝、星のごとくよりも、星を編むよりも先に描かれる暁海と北原先生の物語。
見たかった櫂と暁海のその後があっという間に過去になっていって‥気持ちは櫂になるけれど、それを含めての愛になっていく過程がよかった。
彼を失って、物語ならそこで終わって完結するけれど、暁海の人生は彼のいない世界をずっと生きていかなければならない。どれだけ嫌でも進まざるを得ない。生きてる限りひとは変わり続ける。
ここでもまた、北原先生に癒されたりした。胃もたれを心配しながら天丼を食べる北原先生、かわいい。
前作よりも心は忙しくなくて読みやすい(前作が読みにくいというわけではないけれどあまりにも濃厚な前作だったので)。
幸せな部分も多く、支え合ってる部分もよくて、暁海はこの世界で生きてるんだなと思ってすこしホッとした。
結の生き方も、北原先生らしく自由で、その子供のセレーナも自由で。北原先生はたくさんの人を自由にしたんだなあと改めてそのすごさを実感した。
櫂は花火で、北原先生は海。花火をも受け止める海。言い得て妙。



前作も今作も通じて感じたのは経済的に自立していることへの安心だった。
同じ女性として、わたしも経済的に自立はしていたいな、それが自分への安心材料になるわけだし。
今作での暁海のお母さんとか瞳子さんとか思わされることが多かったな。当たり前だけど、女性の生きる道もたくさんある。
世間の的外れは意見など、はやく跳ね返せるようになりたいな。

ああ、そうか。私たちは幸せだったのかもしれないね。と暁海が確信する瞬間は美しかったな。
”孫”である存在の「わたしはわたしのやりたいことをする」って宣言も良かった。
救いのある様でなかった前作から、ようやく救われた。
汝、星のごとくを読んで、その後に今作を読むと本当の意味で完結できるなと思った。

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