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アニメ『ダンジョン飯』感想(14話まで)


大ガエルの水着
水着ファリン・マルシル・ナマリ

 
ひさびさドはまりしてるアニメです。

 というか、アニメで見てる段階で「あ、これ原作がそうとうレベル高いぞ」って感じたんで、我慢できずに原作一気買いしたのは前に描いた通り。案の定おもしろすぎて一晩で読破して、最近二週目も終わりました。
 お話や設定がよく練り込まれておもしろいのはもちろん、作者の人柄がこんなににじみ出てる作品もそうそう多くはないなぁと。

 多くの方がご存じの通り、この漫画は主に海外のTRPGの世界観をベースにしてあり、そこへ独自の解釈を盛り込んだ作品~と書くと、そういうのが今までもなかったわけじゃないって気もしますが、その考えこまれてる質と量が半端なく、日本どころか海外のファンからも「この解釈はすごい」という感想をよく聞くレベル。
 それに加えて、単にゲームの設定や世界観を深掘りしたってのではなく、それぞれに愛情が感じられるところが独特ですね。
 漫画の中だけじゃなくとびら絵とか副読本に描かれたアイデアスケッチなどからもわかるように、この世界観の人間たち、しかも各部族や職業などそれぞれのキャラの風俗(ヱロい意味じゃないですよ)が、生活感が感じ取られるくらいに描きこまれてる。おそらくこういう土地でこういう環境で暮らす人たちは、こんな服を着てこんな家に住んでこんな食事を~という想像を巡らすのがすごく好きな方なんだろうな~って。もちろんゲーム内で描かれた世界観に加えて、そのゲームの世界で描かれてることを手掛かりに、ゲームでは描かれていない部分の風俗・地理・歴史などを、史実上のそれらを参考にして「こうだったんじゃないかな」って想像していく感じ。

 この漫画ではモンスターの料理法が現実っぽくてすごい!っていう評価をされますが、それは魔物食だけじゃなくて世界観の構築全般に言えることで、その中で一番面白くわかりやすくピックアップされてるのが魔物食ってだけなんですよね。
 これは私が大好きな映画『まいまい新子と千年の魔法』に出てくる「千年の魔法」、つまり現在残されてる史跡や道・河川などを手掛かりに想像力を広げて千年前の平安時代の文化風俗、その時代そこで生きる人の生活までに心を飛ばす「魔法」。その想像力の魔法をファンタジーRPG世界に飛ばしたのが本作なんじゃないかって。 それもあってか、単にデータを解析した結果というよりも、その世界の人たちに寄り添ったやさしさというか温かさが感じられます。
 一見グロテスクでもある「魔物食」に、悪趣味以外の良さを感じられるのはその辺なんじゃないかって個人的には思います。
 あと、西洋ファンタジー世界でありながら根幹に日本的な死生観が垣間見られるのもいいですね。食べることに敬意を払う。

 その洞察力や想像力はキャラクターメイキングにも反映されているなぁと特に感じたのが、マルシルとファリンの出会いのエピソード。アニメで言うと8話。
 それまでもマルシルは作中で「どんくさ」と称されるほどダンジョン攻略に適応できてない。ただしこの作品世界では魔法はそれなりの専門知識が必要な技術職であることもこの時点で匂わされてる。(マンドラゴラのエピソードなど)
 マルシルは過去に魔法学校で優等生どころか特別待遇クラスの才女であり、しかしながら基本理論派で実践経験は少なく小規模な屋内実験が関の山という感じでやや頭でっかちなタイプ、対するファリンは実戦派のフィールドワーカー…というと聞こえはがいいが、勉強が苦手で「行ってみてやってみて」体得するタイプで、しかも理屈より感覚の天才タイプで、秀才タイプのマルシルとは真逆。この構図だと優等生のマルシルがファリンを見下しそうなものだけど、マルシルの性格と育ちの良さ(と、のちに判明する悲しい過去)からかそういうこともなく、むしろ自分に出来ないことができる、そして自分が気付かなかったことに気付かせてくれてた人物に敬意を持つし、一方のフェリンもどうやら魔法学校で劣等生扱いで孤立してた様子で、初めて自分の話をまともに聞いてくれた「初めての友達」マルシルに心を開く。 …このエピソードだけでもものすごく丁寧にこの二人が魅かれあう過程が描かれています。
 さらに、のちに語られるトーデン兄妹の過去話などからもファリンが孤立してたり兄を溺愛してたりの背景がわかる描写があり、「このキャラはこういう性格です」という以上にその世界で生きてるんだなぁという実感をわかせてくれる。ここまでキャラの背景をしっかり、それでいて説明っぽくない形で描写されてる作品はそうそうないんじゃないかと。現在のマルシルの「どんくさ」も、現場を知らないホワイトカラー社員が現場で体験調査してると思うとなんかしっくりきます。

 おかげでこの『ダンジョン飯』という作品にほれ込むと同時に、腐女子に多く見られる「関係性萌え」の傾向が強い私としては、ファリンとマルシルの絆とトーデン兄弟の仲にすっかり参ってしまったという訳です。
 しかも、この話では本当にファリンの登場シーンは少ない(しかも序盤はほぼ回想シーン)にもかかわらず、彼女がどういう人物なのか、パーティにとってどれだけ大事な存在だったのかってことが雄弁に描かれてて、とくにこの魔法学校の話と「ソルベ」のエピソードで私はすっかり惚れ込んでしまいました。自分の価値感に頑固なセンシが「重要な人物だったらしい」と人のことを評する所なんかたまらんですね。

 この辺の話の構成の巧みさは話し出すとキリがないですが、とくに素晴らしいと思うのが、単なるギャグエピソードだと思ってたものが後々大事な要素につながることが多くて、これやっぱり行き当たりばったりじゃなくて最初から作りこまれてたんだろうなぁって感じられるところです。原作二回目読んでてホント感心しました。

 
 2クール目で雰囲気ががらりとかわりOPとEDも変わりましたが、こういう私なんでファリンさんの存在が減ってしまったのがちょっと残念なところ。まあ、今後の展開を考えるとその理由もわかるので仕方がないところですが。
 でもちょっと明るすぎるというか、ギャグっぽいシーンでもなにかしら影のある作品だ思ってるので、これはちょっとやりすぎかなぁ…。『SPY×FAMILY』のOPかと思った。(『SPY~』を下に見てるのではなく、あくまで雰囲気の話です。『SPY~』も大好きですし。)
 あと、個人的に引っかかったのが、センシの「ニコニコ目」の安売り。センシは基本表情が見えないキャラで、作中滅多にニコニコ目やきりっとした顔(眉毛有り)が描かれないので、その分それが出たときの希少性を感じてるので、OPであそこまで使うのはちょっとなーって。
 まあでもEDはまたもや久井先生の描きおろしイラストが見られてすごいうれしいですね。

ただ、一期EDの『Party!』は私の脳内でマルシルとファリンの絵が浮かんじゃうので、変な思い入れがある分変わっちゃったのは寂しいです。
 あの歌、歌の主格である人物が、パーティの主役である人物のことがものすごく大好きで、さらにその仲間内の間でもその子のことがいかに大事かっていうはち切れそうな感情が駄々洩れしてる内容で、もうマルシルが主体でファリン主役のパーティを開いてる絵しか浮かばんのです。しかもマルシルの方がすっごくはしゃいでて、ファリンはむしろきょとんとしてる感じ。最後の「いいから飛んじゃって!」がその辺り。

 これからはこれまた私が大好きな和風キャラ、東方群島のパーティが出てきますし、それ以外にもアクの強いキャラがどんどん出てきてより複雑で重苦しくなってきつつも、やはり持ち前のギャグテイストで楽しく見られると思うと楽しみです。
 よく炎竜編以降路線が変更したなんて意見も聞かれますが、上でも述べた通りその辺も最初から想定内で、すでにそれまでに不穏の芽はふき出てたんですよね。
 あと、どんなにシリアスな展開でも滑稽さが出てしまう、みたいな価値観も大好きなところです。これは現実世界でも実際そうだと思います。こういう部分にも作者の価値観がにじみ出ますよね。
 特にマルシルは、現段階でも今後もいつもものすごく真面目で必死なんだけど一番面白いですし、そんな彼女が愛くるしいですよね。

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