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マリー・ローランサンー時代をうつす眼@アーティゾン美術館

グレーの空だから、ちょうどいいね。

ごきげんよう、もくれんです。

東京はとても寒い、一面の曇り空でマリー・ローランサンを見るのにピッタリの1日でした。アーティゾン美術館で開催中の「マリー・ローランサンー時代をうつす眼」展に行ってきました。


私が持っていたマリー・ローランサンのイメージ

勝ち気でココ・シャネルと喧嘩した女。そんなイメージです。あのピンクとグレーの優しい絵の色調からは考えられないくらい、勝ち気で強い女のイメージが有る。その理由は、ココ・シャネルと喧嘩したエピソードの他にが描いたマリー・ローランサンの肖像画の影響が強い。

女性の肖像(マリー・ローランサン)https://www.secretmodigliani.com/1917-w-50.html

モディリアーニといえばさ、黒目のない、どこ見ているかわからない瞳を描く印象があってね

大きな帽子をかぶったジャンヌ・エビュテルヌ

そのモディリアーニをもってして、あんな勝ち気な絵になったマリー・ローランサンはすごく強い女なんだろうなと思っていた。

マリー・ローランサンー時代をうつす眼 展から知った新たな一面

この時代の画家はみんな戦争の煽りをくって苦労してるな~と思った。上野の森美術館で開催していた、モネ展でも思ったが一人の画家の年表をじっくり読み込むと波乱万丈である。モネが2回結婚していて、長男に先立たれていたこと、全然知らなかったもんな。印象派展では一人の画家にフォーカスした年表はあんまり出さないので、モネ展はそういう意味で知らないことをたくさん知る良い展覧会だった。そして、今回のマリー・ローランサン展も同じようなことを思った。この時代に、子どもを産まず画家で有り続けたってすごい。ベルト・モリゾは産んでるもんね。ドイツ人と結婚したことで、敗戦国扱いになりフランスに帰れずスペインに亡命したり、亡命したことを尊敬しているピカソにくさされたり、離婚したり、家をまたも戦争で差し押さえられたり、結構踏んだり蹴ったり。ドイツ人の夫は詩人だったそうで、漫画家のヤマザキマリみたいだなと思った。(詩人と結婚して離婚、彼女も絵で稼いでる。)
舞台美術や本の挿絵など色々手を広げていたようだ。詩を書くのが好きだったと知って、親近感を覚えた。詩にふけり、モンマルトルの画家たちを尊敬し続け(ピカソにくさされても、ピカソのことは好き)、戦争の時代を生きながら優雅な絵を描き続けたマリー・ローランサン。ちょっと友だちになりたい。

マリー・ローランサンの絵には関節がない。

今回の展示は作品の殆どがガラス枠で覆われていたこともあり、近づき放題であった。なので、しげしげ間近で作品を鑑賞したのだが、マリー・ローランサンが描く女性には関節がないなと思った。ふんにゃりしている。比較でわかり易い例でいうと、ドガの描くバレリーナって、みんな筋肉ついてて人間だなという感じがする。


ドガ「舞台の踊り子」

指先までの腕の流れ、ふくらはぎ、筋肉あるなって感じがしない?

一方、マリー・ローランサンの描く絵はさ、


女優たち

ないのよ、関節。この関節のなさが夢っぽさを運んできている気がする。

同じ時代を生きた、藤田嗣治の作品はやっぱり筋肉を感じるもの。

藤田嗣治「仰臥裸婦」

更にこれを描きながら気づいたが、骨もあまり感じない、マリー・ローランサンの絵。全体的にのっぺりした白で身体を描いているのに、なんとなく陰影があり可愛らしく収まっているからすごい。藤田嗣治の絵ものっぺりしてるな、と思ってたけど藤田は筋肉とか脂肪の上に白をのっぺり乗せてるから本当ののっぺりではないんだよね。猫も筋肉質だよ、よく見ると。

なんで眼を黒く描いたんだろう?

モディリアーニの水色の眼と同じくらい不思議なのは、マリー・ローランサンの描く絵は黒目の人がでてくることだ。茶褐色の眼だったのかな。結構、青い目(灰色の目)が多い気がするんだけど、実際はそうでもなかったのかなぁ。そうだとしても、真っ黒の瞳ってアジア人じゃないと珍しい気がしていて(ラテン系だったらあるのかな。)、白・グレー・ピンクの色調の中で黒目はかなり目立つ。目立つけど刺すような印象にならないから不思議だ。小学校の図工でも、肌色の中に黒目を描くとかなりクッキリしてしまうというか印象が強くなる思い出なのだが、マリー・ローランサンの絵の中では黒目が良いアクセントになっていて素敵だなと思った。こういう強い色を優しく調和させるのって大変そうだな、素人だからわかんないけど。

全然男の人を描かない。男社会でどう生きたのだろう。

ピカソもゴッホも男を結構描いてるのにさー、マリー・ローランサンって男性を描いた作品なくないか?今回も男性を描いているものはほぼなし。ピカソを描いた作品はあったけど。wikiを見ると、離婚後はバイセクシャルとして生きたとあるので、絵画のミューズはやはり女性だったのかな。当時は肖像画以外で、男性モデルがそもそも少なかったのかもしれないけど。男社会の芸術界と戦争の時代を駆け抜けたマリー・ローランサンはどんな性格だったんだろう。草間彌生って作品通りの雰囲気持ったアーティストだと思ってるんだけど、マリー・ローランサンもそうだったのかな。文字起こしした人生を見ると「柔らかさ」は全然感じない、骨太さがあるけど。なんとなく同じ時代を生きていたら友だちになれそう、なりたい人なので気になるなぁ。藝大生のTwitterとか見てても「え、こんな雰囲気の人がこういう絵を?」みたいなことはあるので顔や雰囲気はまた違うのかもしれない。

ちなみに同時期を生きた、ルソーの描いたマリー・ローランサンはこちら。

アンリ・ルソー「詩人に霊感を与えるミューズ」

元旦那、優男だな。ミューズっていうより女傑感あふれるマリー・ローランサン。まぁルソーが描くもんなんで、そうなっちゃったのかもしれないけど。

まとめ:行く価値ある。

アーティゾン美術館は企画展が外れても、収蔵展が素晴らしいので絶対損はしない美術館なのだが、キュレーションもよかった。ちょっと前に見た、アーティゾン美術館のパリ・オペラ座展が全然ハマらなかったので「こんなもんかー」と思っていたのだが、山口晃展もよかったしマリー・ローランサン展もよかった。展示替えのたびに行ってもいいかもーと思い直した。

そうそう、アーティゾン美術館の公式アプリが素晴らしかった。

無料で音声ガイドが聞ける!ブリヂストン美術館時代から確実に進化・進歩しているんだなぁと思った。資金も潤沢なんだろうけど、石橋財団コレクションの展示も毎回趣味が良いというかキュレーションが良いのだよな~。センスがないと萎えるけど、安心感ある。友だちも誘いやすい。常設が外れないから。同時開催中の野見山暁治の展示も非常によかった。逝去1ヶ月前に描いた作品を見て、グッときました。亡くなったのも去年だし、それこそ岡田三郎助とかが藝大で教鞭を取ってた時代に藝大に入ってるしね。野見山暁治作品をちゃんと見たことなかったので、とてもおもしろかった。(じゃりン子チエに「野見山画伯」というキャラがでてくるけど、野見山さんのことだと思う。)

おまけ。
マリー・ローランサン、キュビズムに影響を受けていることも今回の展示で初めて知った。キュビズムとは結びつかなかったなぁ。

ぜひグレー模様の季節に楽しんでいただきたい、マリー・ローランサンー時代をうつす眼


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