魔法使いは、愛を遣う
言葉のことを想うと、
ふいに、つつうっと、
何かを手繰り寄せるように
言葉が身を寄せてくれてね。
ああ、
わたしにとって言葉って、と、
ひとりでに文の脈を繋いでくるものだから、
急いでそれらを
書き留めようとするのだけれど、
気付けばそれは姿を消していて、
中途半端な糸屑が
いつも辺りに散らかっている。
はて、
それらを掻き集めたものが
わたしの人生なのか、
はたまた、
全く異なる糸らしきものが、
知らず知らずのうちに人生を紡いでいるのか。
どちらにせよ、
わたしにとっての言葉というもの、
その正体を、
また、言葉というもので表し損ねて、
もう一度損ねて、
そしてついに表し切ってしまった時、
わたしの小説(ジンセイ)は、
漸く続くことを許されるのだろうなと、
そんなふうに思ってね。
『貴方の言葉に触れる度に、
小説の1頁目に舞い降りた、
そんな気分になります。』
そう、
夕焼けがゆっくりと
深く呼吸をしたような、
それはそれは美しく、
甘美なもの寂しさと懐かしさを
閉じ込めた瞳を持つ彼女の声を、
それらに乗って
わたしを訪ねてきた言葉たちを、
一年、二年、
いや、五年ほど勿体ぶって、
時間を、手を、目をかけて、
輪はかけず、
わたしという夜に馴染ませてみたいなと、
人知れず朝に宣言をしてみた次第。
言葉に生かされることを続けたわたしが、
言葉をことばで生かすことが出来たとき、
それらをわたしは遺書とするのだ、と、
今宵ばかりは祈ることはせず、
誓うことだけをしてみるから。
、
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?