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大人気ザリガニ料理、麻辣小龍蝦

写真提供:友人様&自分の写真

 初回の記事にて、ザリガニプロジェクトと謳っていながらウシガエルを捌いて調理するというイレギュラーなスタートを切った私のnote。今回はちゃんとザリガニを使った中国料理、麻辣小龍蝦(マーラーシャオロンシア)について書いていく。

麻辣小龍蝦

 まずこの料理なんぞや、と思う人の方が多いかと思うので軽く。わかっていると思うが中国発祥のザリガニを使った料理のことである。麻辣とあるように多数のスパイスを使って辛めに味付けする料理。ザリガニは過食部位が少ないし殻を剥くという作業が入るため、口に入るより遥かに大きな本体が盛り付けられた大皿は"圧巻"の一言に尽きる。もちろん食事の際は、大きなズワイガニを囲む正月の親戚の集まりの如く静かになる。そこに男も女も関係なく、ザリガニの殻をバキベキと音を立てて破壊する野生的なグラップラーと化す。

 …書いてるうちにちょっと気になったのだが、中国語って日本人的にはかなりニュアンスで理解しやすいと思う。現在大学で中国語をとっている私であるが、老师(ろうし)が先生という意味であったり、公司が会社という意味であったりするように、中国語をルーツとする漢字はやはり通じるものがあると常々思う。なのでこの麻辣小龍蝦という言葉も、「あー、唐辛子や花山椒を使った麻辣味で(ザリガニ)を使った料理なんやな〜」ってなんとなくわかる。小龍(シャオロン)はちょっと日本人の私には難しいけれども、ザリガニの髭が龍に喩えられてるのかなぁという考察もできないことはない。あくまで小籠包とは漢字が少し違うので、中国料理全般を指し示す言葉ではないようだ。

 とりあえずの余談であったが、中国語かじった程度の小僧にも少しならわかるの面白いなぁってだけ。

ザリガニ獲るぞ

 さてさて、前置きはこのくらいにしてまずはいつも通りザリガニを獲っていこう。

 狙い目は田んぼ脇の用水路の壁際や、水草が密集するところである。とはいえど、夜になれば我が物顔で水路の真ん中に鎮座していることも多いため、夜行性の風格がここに極まっている。まさに怖いもの無しの外来生物である。

 このように、夜はむしろ物陰に隠れている方が珍しいくらい。しかも結構数がいる。要注意外来生物かつ田んぼに穴を開ける等の行動はて忌み嫌われがちではあるが、侵略性というのを除けば、生き物としてのたくましさや適応力が感じられる素晴らしい生き物だ。あと雑食性で好き嫌いがあんまり無いのが良い。食べ物の好き嫌いがあんまり無い人間は私大好き。

 まぁそんな私も好き嫌いがあんまり無い人間…というより普通の人が食べる物食べない物の境界が曖昧な人間なので、ザリガニよ、お前を喰う。だから蛙でも鰐でも蛇でもなんでも食います。可能な範囲でリクエスト募集します(謎宣伝)。

 そしてざっと2時間ほど…

 びちびちに獲れた!上の写真のザリガニプロジェクトは自分含めての7人で臨んだ。おそらく100を超えるほど獲れたのでは無いかと思われる。

(いっぱい具合を見てほしい)

 ザリガニプロジェクトはかれこれ2、3年ほど前から何度かやっているので、今回の記事では今まで撮った写真をごちゃ混ぜにして使用するかもしれない。突然キッチンが変わったり分量が前後したりするのはご容赦いただきたい。

 そして容器に入れて新鮮な水の中へ。獲ってすぐ食べるというわけではなく、ここから一週間程度毎日水を取り替えて泥抜きをしていく。

 ザリガニはデトリタス(腐植)食性というものを持っており、自然界では底に落ちた堆積物を主食とする。要するに枯葉や生き物の死体を食する大きな分解者である。そんなこともあって泥抜き(内容物排出も含む)しないと臭いが残ってしまう可能性があるため欠かせない。もう調理は始まっているのだよ。

 そして忘れちゃいけないのは、ザリガニは共食いをする生き物。脱皮途中や自分より弱い個体を積極的に襲ってしまう。多頭飼育するにあたって餌を十分に行き渡らせたり隠れ家を増やしたりという工夫は出来るかもしれないが、泥抜きのため来るべき日までは絶食させる必要がある(カボチャ等を与える人もいるらしいが、水質悪化による大量死を考慮してうちでは与えない)。そのため少々残酷ではあるが、ハサミの稼働する関節の根本付近をニッパーで落とす必要がある。

この程度じゃザリガニは死なないので、美味しく頂くために覚悟を決める。もう!調理は始まっているのだよ!

 そうして差し迫る調理の日。泥抜きしたとはいえ、田んぼの泥水に住むザリガニの外殻は割と汚い。そのためうちでは1匹1匹歯ブラシを使ってゴシゴシと洗っている。特に腹部の関節は泥が溜まりやすいため、丁寧に洗う。ゴシゴシ擦って水につけてを繰り返すと、水が茶色く濁って何故かケミカルな香りが漂ってくるので美味しく調理するには大切な過程だと思う。もう❗️調理は始まっているのだよ❗️

 こうしてもこに印の安心安全なザリガニが出荷されます。

調理編、ようやく始動

 お待たせしました調理です。まずは出荷の様子から  #支離滅裂な文章 #早く調理しろ #ばか


(最後の触れ合いの時間)

 発泡スチロールに入れての移動。特に大した工夫はない。

 次は本当に調理。まずは食材の紹介。
材料
・ザリガニ(好きなだけ)
・玉ねぎ(50匹に1個半か丸1個くらい)
・料理酒(多めに用意しよう)
・醤油(200ccくらい。好きにして)
・水(醤油より少なめで。お好みで)
・コチュジャン(好みに分けて豆板醤でも良い)
・ごま油(主に炒めるときに)
・乾燥唐辛子(入れすぎ注意)
・花山椒(お好みだが私は少し多めに)
・ローレル(一枚あればいい)
・八角(1個あればええやろ)
・にんにく(好きなだけ。私は5トンいれます)
・生姜(1個半で充分)
・コーラ(隠し味に入れたり、調理中に飲んだり)

相変わらず写真は無い。変態お料理記事なのでその辺がちゃんとしてたり分量バッチリであったりするワケがない。エンタメ寄りだし…

1.臭い抜き

 まずはザリガニの臭い抜きから。また余談だがザリガニドブ臭いとかよく聞くけど、あれはザリガニが臭いんじゃなくて水が臭いんだからね。あいつら餌を撒き散らしながらチミチミ食うので水質悪化し易いし、そもそも住んでるところが汚いとかだよね。だから別にザリガニは臭くない。 

 じゃあそんなに擁護しておいてなぜ臭み抜きするねん!って思うそこのお方。おい!いいだろ!!なんかにおいそうじゃん!!!なんとなくわかるだろ俺の気持ち!!!!その辺の肉や魚でも臭い消しするんぞザリガニが怖くないわけないじゃないか、しかも田んぼの水路!

 寄り道はやめよう、まずは背ワタを抜く。五つの弁がある尻尾のことを総じて尾扇あと呼ぶわけだが、左右2つを尾肢の真ん中にある尾節をペキっと上方向に曲げて、ぐりんと回すと綺麗に背ワタが抜ける。

 ここが臭いの元になるので全部やる。一番時間がかかる行程。背ワタを抜いた後も少しの間ザリガニは何事もなかったかのように動くので脱走には気をつける。

 そして次は料理酒に漬ける。いやでも多めに使うため、2本は用意必須(まず100を超えるほど一度に調理する人間あんまりいないが)。そのため安い料理酒を使ったほうがいい。

全体的に浸っていれば構わない。酒が浸からないところは定期的に混ぜておけば良い。背ワタを抜く作業に時間を要するので同時進行でやっていくのが良いだろう。

2.食材用意、タレ作り

 臭いが消えたところで調理に向かう。この作業は人さえいれば1と同時進行した方がやりやすい。

 まずはザリガニ。酒の匂いが強いと素材の味を希薄にしたり雑味に変わったりするのでよく流水で洗い流す。3で炒める際に油を使うため、面倒だけどキッチンペーパーなどで水気はよく取っておく。


 次は一緒に炒める玉ねぎやタレに使うものの用意。包丁を持とう。玉ねぎとニンニク2片程はみじん切り、残りのにんにくや生姜は皮を取って擦り下ろす。私は今回、材料欄にあった通り、にんにく5トン使ってるので全部やり終わるのに1ヶ月くらいかかりました。実際は1個なので5分程度で終わりました。

 タレを作ろう。麻辣小龍蝦は四川風の煮込み料理なので、煮込みの素体を作る必要がある。今更ながらそれはタレとは言わない気がする、適切な言葉が全く思い浮かばない。では煮込みを包括する概念と呼ぶこととする。決して包括的所得概念の話では無いので読者は間違えないようにしなさいよ、わかった?

 つまんない洒落は置いといて煮込みを包括する概念を作っていく。まずは醤油を入れて、醤油より少なめに水、水の同等以下の料理酒、水の半分以下のコーラ、コチュジャン、おろしニンニクおろし生姜、花山椒、輪切りの唐辛子を入れてよく混ぜる。

 醤油とコチュジャン、花山椒ベースに味を決め、濃すぎないよう水で薄め、コクや水っぽさを低減するために料理酒や隠し味のコーラを加える。味に奥深さを出していくため生姜にんにく唐辛子をいれる。これで四川風の煮包念(略)の完成。

3.炒め、煮込む、煮詰める

 舞台は揃った、美味しい匂いが漂う料理の醍醐味であり中核となる部分だろう。

 まずは熱したフライパンにごま油を引いて、みじん切りしたにんにくを炒めて香りを出す。美味いのに後々臭い、でも良い匂いで、悪魔が作り出したとしか思えないこのギルティな食材は加速度的に香ばしさを表出させてくる。弾ける油の痛みさえ愛おしい。その後に玉ねぎを大量投入。水分がじんわり滲み出るようになったらザリガニを投入。強火でしっかり炒める。

 正直この料理作るたびに玉ねぎとザリガニの順番が気分で前後してるのであんまりこの人(筆者)の言う事を信用しないほうがいい。

 ほら、もうすでに間違えてる。無意識的に証拠を押さえられてしまっている。でもいい写真を撮ってもらったので使うぞ。

 この時、ザリガニが焦げ付いたり火が行き渡らないことがあったりしないように炒める。殻が全体的に綺麗な赤色になったら火の通った合図となる。

(ザリガニで美味しそうを伝えたいの図)


 この色味になるまで炒めると、ザリガニの持つ旨味が引き締まって香ばしさがプラスされるので大変おすすめ。

 最後に煮込んで煮詰めていく。炒め終わったら煮込みを包括する概念を入れて、強火のまま蓋をして、水分量が少なくなるまでよく煮詰めていく。このときにローレルと八角を入れるのを忘れないように気をつける。

 この泡がシュワシュワして鍋蓋を覆う水滴がぽたりと滴れては絶え間なく続くのはすごいわくわくする。こうして10分程度煮詰めてザリガニがしっとりとしてきたら完成。ローレルや八角は食べられないので取り除く。では盛り付けを!

完成

 パパパパパパパパッパッパパッパ~♪
せっかくだから今までのザリプロで作ってきた麻辣小龍蝦の写真をほぼ全て載せる。

 じつは麻辣小龍蝦以外にも料理してるので、その記事はいつか書くかもしれない。

 圧巻だ、最初一人でちまちまやってたザリガニプロジェクトだが、もう2.30人は私の周りの人たちが関わってくれているんじゃなかろうか。ザリガニ以前からの縁だったが、ザリガニを通してさらに強く結ばれた奇妙な縁といっても差し支えない。うん、奇妙だ!

 ザリガニと友人方の協力に感謝を込めていただきます。

 美味しい!食べかけの食い物を写真に収める趣味はないため身の様子が全く写真に残っていないのだが、見た目は完全にエビ。主な過食部位である尾の身はとても小さいのだが、その小ささから想像がつかないほど繊維の一つ一つが太く、旨味が突出している。それに絡む煮込みを包括する概念のピリ辛く痺れる味わいがザリガニという食材に非常にマッチしている。エビで同じ料理を作ろうとしても、甘味や繊維の太さの違いで合わないため、完全に適材である。ただ身が、小さい。

 だがまだだ、実はハサミの肉もちゃんと食べられる。尾の身が手で剥けるのに対し、ハサミは硬い甲殻に覆われてマジで武器。躊躇せず歯や蟹鋏で破壊しよう。この部位はまるで蟹の味わい。尾の身に対して繊維っぽさはなく、舌で簡単にほぐれる柔らかさで食感も2度楽しめる。

 最後にミソだ。カニもエビもあるあのミソ、田んぼのミソはうまいのだろうか。結論、とても美味。カニやエビとはやや異なり、旨味が突出しているというよりあん肝のようなクリーミーさが際立っており、辛味の強めなこの料理では良いアクセント、箸休め、閑話休題、豊洲市場って感じになる。身たちが「辛いんです!」って言ってるのに対してミソは「辛くありません!」とぶつかり稽古を始めるのだ。

食後

 一つの食材で3つの味わいがある素晴らしい食材、皆さんも機会があれば試してみるのはいかがだろうか。ただし下処理の大変さ、過食部位は見た目より少ないし、食後の殻がかさむのが難点であるが…

 最近だとネットでも購入できるので気軽に試したい人はそちらを、お金を払わず食べたい、もしくは野生に飢えている方は捕まえてみるのもいいだろう。

最後に

  野生動物を食すのは全て自己責任です。現地で何を食べ、どんな土地を踏みしめてきたのかは個体差があります。くれぐれも中途半端な下処理や調理をしたり、ましてや生食をしたりするのはやめて下さい。あらかじめ毒性の有無などを調べることも大切です。
 今回のアメリカザリガニは特定外来生物には指定されておりませんが、本来であればそれらに該当するほどの脅威を持っています。現在は飼育規制による現飼育者の遺棄を懸念し、指定が見送られている段階です。ザリガニを獲ったら別のエリアで放流しない、飼育をしているのであればむやみやたらに手放さないなどのモラルと管理の意識が必要です。ザリガニは子どもから大人まで広く親しまれている生き物ですが、その侵略的な二面性を忘れないようにしましょう。
 今後ザリガニと関わる機会がない人にとっても、知っておいて損はないですからね!

あとがき

 私、ザリガニめっちゃ好きでたくさん飼ってるし作品も作ってるしなんなら食べちゃうんですけどね(もちろん飼育しているものを食べているわけではない)、よく聞かれるのが

「ザリガニ好きなのに食べれるんですね」

っての。全然食えるけども。でもまぁ、意識の違いってのがここにあってですね、飼育しているのには思い入れのあるけども、さっき捕まえてきたのには思い入れは感じられないわけですよ。あえて冷たい言い方しましたが、みんな大好きってなったら食べられませんよね。というより食べることを前提として捕まえてきているので、その辺の棲み分けができているんです。命はみんな平等なのは確かですが、人によって優先順位が変わるんですよ。蚊がいたら潰すでしょ。だから徳川綱吉の「生類憐れみの令」が悪政と言われるわけですよ(何の話)。

 人間は骸の上に立って生きています。食べるために生まれてきてしまった動植物や私によって食べられることとなってしまった生き物に今更かわいそうとか戯言をほざかず、ただただ感謝して…

いただきます。

 皆さんもちゃんと感謝してかつ美味しくご飯食べましょうね!最後に前述のうちの子や作品の写真を置いて終わりにします。

青の子、コバルトクラーキーという品種


白いひげと棘が特徴の古参。5年はうちで生きてる


日本一バズったうちのザリガニ


シルバーリング、多分100gくらいで装着不可能


「浪漫機構」という題名で制作。ここが原点として鍛金をやりたいと思うようになってきた

 最後まで閲覧ありがとうございました!!
ザリガニということもあってか、色々詰め込んだ回でした。

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