『25時』第4話 決心


本当の自分はどこにいるのだろうか
本当の自分とはいったい何なのだろうか
夜になると自分だけの世界が広がる
誰も知らない世界を見ることができる

毎日のように夜を歩いた


いつからだろう
何も感じない。
夜を歩くことで得られた刺激、高揚感

気づけば機械のように夜を過ごしていた
夜に補完された自分に慣れてしまった

彼女はどうしているのだろうか
美しい音色はどこへ行ってしまったのだろうか
あの日からめっぽう姿を見せない

心に住み着いた好奇心が行き場を失った
というよりも彼女に住み着いたというべきか


いつものように大学の授業が終わり帰路につく
家に入り、テレビをつけた

彼女だ。
あの美しい音色を奏でていた彼女は
テレビの向こうの大舞台で輝いていた。
夜を飛び立ち、太陽の照らす世界を舞っていた。

憧れた
彼女の、その大きな姿に憧れた

夜を歩きながら己を振り返る

今までの自分は新しいものに縋りつき、
発見だけに関心を向けてきた

そんな生活を続けていても何も変わりはしない
自らが羽ばたかなければいけない

自分のため    どこかの誰かのため
次は自ら光を放とう

そう決心し、見上げた公園の時計が指し示していたのは、25時

今日はもう少しだけ夜を歩こう

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