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たんぽぽの恋

たんぽぽの綿毛が旅をします。
空をゆき、住み着く街を探して、旅をします。
風に舞い、木の葉にはじかれ、ツバメの背に乗り、旅をします。

丘を越え、川を下り、見知らぬ街へ
ネコの鼻に乗り、町外れの小さな森の
お菓子のような家へとやって来ました。
女の子をギュッとしたのは、小さな可愛いおばあちゃん。
おばあちゃんのメガネにぶら下がって、庭先へ。

庭にはすっくりと伸びた菊の花が、空を見上げて誇らしく咲いています。
綿毛は一目で恋をしました。
「そうだ、ここで暮らそう」
そう決めた綿毛は、のっぽの黄色い菊の横に舞い降りました。
自分も同じ黄色い花を咲かせて
一緒に風に揺れる日を待ったのです。

春が来て、たんぽぽは黄色い可愛い花を咲かせます。
けれど隣の菊は、もうその花の季節を終わらせていました。

2度目の秋が来て、
菊の花はまた、雄雄しく花びらを広げます。
けれどもたんぽぽは、もう姿を見せることが出来ません。

「会いたかったのに・・・」

隣で再び綿毛になったたんぽぽは
風に乗って、菊の花びらにふわりと舞い降りました。

「会いたかったよ・・・」

菊の花は微笑むように綿毛を抱きしめ
ふたりは静かな秋の日の風に揺れていました。
いつまでも、いつまでも

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