ANIPLEX 20th Anniversary Event トークセッション『リコリス・リコイル』のつくりかたレポート

2024年1月7日に有明セントラルタワーホール&カンファレンスにて開催された「ANIPLEX 20th Anniversary Event トークセッション『リコリス・リコイル』のつくりかた」に行ってきたので、備忘録を残しておきたいと思います。
※聞き違いや解釈違いがあるかもです。

当選者数は恐らく600人弱で、当選番号の若い順に好きな座席に座っていきます。
私は比較的早めの番号でしたので、前から6列目に座れました。
出演者は舞台下手から司会の松澤千晶さん、足立慎吾監督、安済知佳さん(錦木千束役)、若山詩音さん(井ノ上たきな役)、アニプレックスプロデューサーの神宮司学さんの並び。
安済さんが髪を千束風に結っていて、安済さんは赤、若山さんは青を取り入れた衣装で大変素敵でした。

簡単な自己紹介が終わった後、申し込み時に募集した質問に答えるコーナーへと移っていきます。

Q1. 『リコリス・リコイル』というタイトルはどのようにして決まったのでしょうか?

松澤「このタイトルは狙ってつけられたのですか?
 最終的にたくさん受け取れる意味があるように思えましたが」
足立「そりゃもちろん狙っていますよ。
 エージェント名が“リコリス”なので、タイトルに入れたいと思っていましたし、鉄砲を扱うので“リコイル”なんてどうかなと。
 調べてみたら“リコイル”には反動や影響という意味もあるので、リコリスによる影響ともとれて良いかと」

※ちなみにスタッフ間では『リコリス・リコイル』案は不評だった模様。

足立「最初喫茶店の名前が“熱気球(ねつききゅう)”という名前だったんだよね。
 それもリコリコで良くない?って言って」
安済「えええええ!?じゃあ“熱気球(ねつききゅう)”の看板娘になるところだった!?」

神宮司「タイトルは最初『ハイ・チーキー』という案が出ていて。
 『ハイスクール・フリート』の柏田の持ち込み企画だし、チーキーには生意気という意味があって、千束に合っていそうだしと言うことでハイフリみたいな感じで、“ハイチキ”と呼んでもらえるかなと」
安済「めっちゃ生意気ってこと!?」
足立「僕はそれは正直ダサいなと思っていて。長く使いたくないなと。
 『リコリス・リコイル』は英語(“Lycoris Recoil”)にするとLとRになるので、バディものだし、これで良いと思いました」

タイトルが決まって、発注したロゴ案がいくつかスクリーンに映し出されました。
まどマギっぽいのから今どきのアニメによくありそうなロゴがたくさん並んでいました。
彼岸花をモチーフとしたものもいくつかあり(安済さん曰く「百合っぽいやつ」)、台本ではそのロゴが採用されていたようです。
リがソに見えてしまうものも結構あり、主に視認性を重視し、足立監督が現在のデザインのものを選んだようです。

松澤「オープニングはClariSさんですが、足立監督が選ばれたのですか?」
足立「新人監督にそんな権限はありません。神宮司さんが決めました」
神宮司「バディものなのでツインボーカルがいいな。
 出来れば女性でと言うことでClariSさんにしました」

安済さんたちはアフレコ時、主題歌がClariSになるのは知らなかったけれど、3話ぐらいからEDの入りをチェックするため『花の塔』が入っていて、その際「誰の曲?」と訊いて、EDがさユりさんであるのは知っていたようです。

Q2. オリジナル作品を作るのに不安な部分や難しい部分はありましたか?
(その後にも質問文が続いていたけど忘れました。多分どんな心境だった?とかだったと思います。)

足立「(限られた人手や予算の中やりくりせねばならず、)戦場を撤退する指揮官の気分でした。
 思いの外成果を出してしまって、お前たち一旦戻ってこいみたいな」
神宮司「まだ引退は許しませんよ!」
足立「それにはアニプレックスさんの兵力や財力をお借りしないと」

他には新人監督が生き残っていくには奇策を考えなければ、と考えられていたようです。

Q3. キャラクターを演じるにあたって、気を付けていたことは何ですか?

安済「オリジナル作品なので原作がなく、アフレコ時にもらった資料と1話の台本しかない状態で、でも『余命あります』とだけ聞いていたので、『そっかー!だから楽しんでんだ』と突っ走りました」
足立「千束のイメージは企画の段階から決まっていました。
 それでデモテープを本当にたくさん聴かせてもらって、安済さんのは真ん中より早い方にあったと思うんですよね」
安済「あいうえお順だから(早く聴いてもらえた)!?」
若山「それだと私めっちゃ遅いじゃないですか!!」
足立「いや、バラバラだったと思うけど(笑)、それで『あ!千束だ!』ってなって」

安済さんから何を意識してたのか振られて、

若山「私は会話することを意識しました。
 作り込みすぎると(求められているものと)違うものを返してしまうかも知れない。
 相手が投げてきたものをきちんと返したいなと」
足立「シットコム(シチュエーション・コメディ)って知ってる?
 『フルハウス』や三谷幸喜さんも最近されていたようなホームコメディね。
 あれみたいに定点カメラで撮って、カメラワークより会話を楽しませる話になれば良いなと思っていたのね」
安済「私は『自由にやって下さい』と言われました」
足立「それが奇策案ですよ」
松澤「余命からお芝居に繋げられた安済さんと、会話を大事に意識された若山さん。
 お二人は(千束とたきなに)なるべくしてなったと言う感じですね」

足立「(安済さんは)どう演じていいか分からないと仰っていたけれど、キャラクターの解像度を上げるのが一番速かった」
安済「最初は分からなかったんですけど、スタジオでエリカ役の八神結香ちゃんと入っていて、掛け合いを聞いているうちになるほど!ってなりました」

安済さんはキャラ同士の会話を聞いてピンときたようです。

Q4. 台本のト書きで印象的だったものは何ですか?

安済「ト書きというよりアニメーターの方への要望が書き込まれていて、そこから読み取って、察して演じていました。
 あとはたきなの関西弁とか」
若山「あのト書きがあるのでたきなの気持ちが読み取れた」

監督的には自分で描いているものが面白いのかどうか分からないので、ト書きで笑いを取ろうとしたようです。
たきなのト書きに関しては特に吉さんに対して(コイツ絶対悪い奴)とか、(アイツ絶対殺す)とかあるようです。

若山「12話でオンエアされた時、きちんとそれが顔に出ていて」(別の人が言ってたかも)
足立「またスタッフが上手に描くんだよね〜」
松澤「吉松に向ける表情がね」
若山「呼び方にも表れていくんですよね」
足立「どんどん雑になっていく(笑)。
 12話で『心臓が逃げる』というセリフがあるんですけど、元々は『アイツが逃げる』だったのを、絵コンテ時に自分で心臓に変えていました」
松澤「心臓に色んな意味が乗っかっていて」
足立「人扱いしないんですよね」

Q5. 泣く泣くカットしたシーンはありますか?

ちょっと聞き違いだったかもですが、4話で武器商人に詳しい老人からウォールナットについて聞き出すカット。
それから8話で千束が家に押しかけてきた真島にコーヒーを淹れるシーン。
ここでカットされた8話絵コンテがスクリーンに映し出されます。

千束がコーヒーを淹れていて、真島が「うちのハッカーがウォールナットを殺したらしい」という話をし出して、千束がボソッと「ロボ太か…」と言ったのを、結構距離がある真島(ソファに座っている)が「そうだ、ロボ太だ」と普通に返してきて、動揺してカップを落としてしまう。
ロボ太のことを知っているのか訊かれ「友達から聞いた」と返すカット。

これがロボ太を知っていることの伏線としたかったが、カット。
また真島の異常な聴力に気づくシーンを見せたかったが、その後たきなの足音に気づくので良いかと思ってカットしたとのこと。
個人的に引っかかったのは、咄嗟に嘘をつくために言っただけかも知れないが、“友達”ってたきな以外にも使うんですね??

足立「劇場版があったら挿そうかな」

それからフキたちを助けるために延空木へヘリでエントリーするシーンもあったとか。
また、2話のカーチェイスシーンでたきながドローンを撃ち落とすまでもあったが、描ける人がいないだろうなと諦めたそうです。
ここでまたも「劇場版があったら挿そうかな」とチラッチラッとする足立監督。
でも基本的にはあまり作画コストをかけたくない足立監督。最小の作画コストで伝わるならそれで良いとの考えのようで、例えば千束が真島に殴られているシーンでは1枚絵となっているとのこと。

あと印象的なシーンか気に入っているシーンについても訊かれていたのだったかな。

足立「千束と真島の最後のバトル、9話千束とたきなのゆうひの丘のシーンで千束が『自分でどうにも出来ないことで悩んでいてもしょうがない』というのが印象に残っていますね」
神宮司「千束と真島のバトルでは敵同士だけど楽しい会話になっていましたね」
安済「アフレコ時はコロナ禍で、たきなと千束は一緒で、他にその時の話に出てくるキャラが1〜2人の、多くて3〜4人でしかアフレコしていなかったのに、それを感じさせない(会話の)繋ぎ方になっていますよね。
 会話が成立している。
 私一度も楠木さん(沢海陽子さん)と会っていないんですよ」

ここで時間が迫ってきていたので、一旦締めようとするが、神宮司さんがまだ未公開資料があるとのことで、それだけ見せてもらうことに。

1話でたきなが機銃掃射するシーンのト書きと、実際に声優さんが演じていたアドリブ部分を赤字で書き込んだもの。
たきながフキに叱られて、

たきな、憮然と(なんやて?)
エリカを覗き込むように(生きとるやんけ…) 「生きてますよね?」
フキ(勝手なことをしやがって…
 当たってたら死んでたかも知れへんやろ!)

こんな感じだったと思いました。
たきなからすると仲間を生かしといたのに何で怒られやなアカンのよって感じですかね。
フキにト書きの通り言われたとしても、「私がそんなヘマするわけないやろ」って返しそうです(そして逆のほっぺもどつかれそう)。
ちなみに声優さんのアドリブはほぼ「…っ」みたいな声にならない声でした。
最後に千束が車に乗り込んだ時ミズキが「ホッホー」って言ってるのはアドリブみたいです。

足立監督が最後にポロッと言っていたこと。

足立「千束とたきなでエチュードをやってみたいんだよね。
 二人の会話を聞いてみたい。
 役になりきって雑談してみてほしい。
 今なら台本がなくても良いんじゃないですか?」

安済「いやいや、台本があって、その隙間を成立させるためのアドリブを楽しむのが好きなんですよ。私や亜美さんは」

この後ドラマCDでカラオケ行く話の時に本当ならミズキに銃を向けることになっていたが、千束さんはミズキに銃を向けんよねと思い、急遽リモコンに変えてボケたアドリブの話をしていました。
若山さんはアドリブ飛び交う中「台本どこに行ったんだろう…」とオロオロしていたみたい。

安済「そうだ!私たちは時間が守れないけど、ドラマCDなら制限がないから(好きに出来るな)」
足立「是非完全アドリブで生ドラマを」
安済「でも私は足立さんや神林さんの脚本が好きだから…!
 アドリブだと自分の感性で発した言葉が千束さんの言葉に、公式になってしまう。
 それで『世界線が違う…』って書かれたら…脚本下さい!!」

足立「新作は鋭意制作中です。良い感じになりそうです」

短い時間でしたが初見の資料を見られたり、お話を聞けて面白かったです。
もしかしたら後日noteかweb記事で出るかも知れませんが、一応今回のイベントは映像化はされなさそうです。「外には出さない」と仰っていたので。それだと何だか勿体無くて、興味ある人にも見てもらいたくて文字起こししました。間違いがあったらごめんなさい。

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