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ArcGISで遊ぶ(1) 多重リングバッファ

・序

 「GISを扱う」ということは、どうもハードルが高いように聞こえます。私は学校でGISを勉強したことがあるのでそこまで使うこと自体は可能ですが、未だに「解析・考察」といった堅い印象を抱えています。
 諸事情で昨年から自由にArcGISにアクセスできるようになったので、時間つぶしの趣味がてら(あわよくば、覚えたことを卒論でも使えないか、という模索も)、色々と遊びつつ、したことを備忘録としてまとめておきます。 今回は、多重リングバッファという機能について。

・機能

 指定レイヤーに含まれる各フィーチャを中心としたバッファを作れます。また、点データを中心にする場合は円状のバッファが作られます。
 今回のテストデータでは、鉄道駅のポイントデータを使用して1km、2kmの円状バッファを作成、鉄道空白地帯を簡易的に可視化することを目標としてみました。
 ○データの出典: 国土数値情報(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-N05-v1_3.html)

・下準備

 上記のデータをインポートすると、「鉄道駅」「鉄道路線」2つのレイヤーが追加されます。今回使うのは鉄道駅のデータのみなので、路線レイヤーは便宜上チェックを外してあります(図1)。

図1, 駅データ

 データ自体は令和2年のものですが、この中には廃止された駅も含まれています。今回は現存する駅に限って解析していくため、これらを除外する必要があります。
 ということで、属性データをいじります。テーブルを開いたら「属性条件で選択」より、抽出したいデータの条件を指定します。
 駅データには事業者や路線名、駅名などの属性が入力されていますが、「N05_005e」という列には駅の廃止年が入力されています。不明な場合は999、現存している場合は9999が入力されているので、この値を利用して現存する駅データのみを取り出します(図2)。

図2, 属性条件の入力

 データを抽出できたら、新規レイヤーとして保存しておきます(ここは説明すると長いので、省略) ここまでで、ようやく下準備完了です。

・解析

 「多重リング バッファー」という名前でツールが実装されているので、メニューを開きます。場所がわからなければ最上部の検索欄に丸ごと入力すれば見つかります。

図3, バッファの設定メニュー(画面右側)

 今回作成したいバッファは半径が1000mと2000mなので、「距離」欄に内容を入力した上で「距離単位」をメートルに合わせます。ちなみに、距離単位はメートル以外にもキロメートルやセンチメートルなどがあるので必要に応じて使い分けできます(マイルとかデシメートルも用意されてるけど、いつ使うのだろう?)。そのほかのオプションとしては、オーバーラップの有無(バッファ同士が重なったとき境界線を維持するか、というもの)を変更しました。それ以外のオプションは今回使う必要がなかったので、説明は省略します。
 設定が完了すると、それぞれの駅を中心としたバッファが生成されます(図4)。

図4, 半径1km, 2kmで作成したバッファ

・観察してみる

 実際、「鉄道が使いづらい地域」というものはいろいろな要素(地形、運行頻度、etc.)から成り立っています。この解析で明らかにできる「鉄道空白地帯」は距離要素のみに依存しているので実態と離れている可能性が否めないですが、観察していると中々面白いですね。ちなみに、首都圏ではありますが私の地元はちゃんと真っ白でした。

図5, 東京23区の鉄道空白地帯

 地図をみると、やはり東京の交通資源というものは段違いです。最寄り駅から2km以上離れた場所がおよそ赤丸の4ヶ所しかなく、面積にしてもかなり狭いことがわかります(図5)。面積最大とみられる南部の埋め立て地も、未開発もしくは工業地帯で占められていることを考えると東京23区大半の住民は「歩いて行ける範囲に必ず何かしらの駅がある生活」を享受していることになります。同じ首都圏ながら、どうもピンとこない世界です。

・結語

 今回の解析はバッファを作成してただ観察するというなんともとりとめの無いものではありましたが、これを活用した考察なんかもできそうですね。
 バッファで色のついた面積を算出できれば自治体ごとの鉄道空白率を計算して人口との関連を求めることもできますし、駅アクセスの良さが年齢の偏在にどんな影響を与えているのか・・・なんてこともできるのでしょうか。
 操作する中で、改善できそうな点(複数路線の乗り入れる駅はポイントが路線ごとに設定されているので、実際の駅数よりポイント数が多くなる、etc.)もあったので、もう少し検証してみたいですね。


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