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”Accent II" に集録されたクロード・T・スミス作曲『華麗なる舞曲』 について

クロード・T・スミス (Claude T. Smith) という作曲家がいます。

彼がアメリカ空軍バンドのために作曲した『華麗なる舞曲』(Danse Folâtre) という吹奏楽曲があり、これが(おそらくは)日本で特に人気の曲になっています。疾走感にあふれる、およそ「舞曲」とは思えない曲なのですが、めちゃくちゃカッコイイ。かなり技術的に難しく、かといって確実に演奏できそうなテンポにするともっさりしてダサいというタイプの曲。吹奏楽のボリュームゾーン?の中高大くらいの世代だとガッツリはまると思います。

年齢がバレそうですが、私が中高生の頃はあまり全国や世界の情報などは入ってこなかったのですが、アンテナ感度の高い先輩たちは日本吹奏楽コンクールの全国大会を見にいったりしていて、そのなかで、洛南高校が演奏した『華麗なる舞曲』がとにかくすごかったすごかったとことあるごとに語っておりました。これ以前からも大人気だったのかもしれませんが、私がこの曲の人気と魅力(そして洛南高校という高校の存在)を知ったのはこれがきっかけです。そして、なぜか動画がYoutubeにあるという。

私はトランペットを担当していたため、中間部のピッコロトランペットでのソロがとにかくアコガレで、下手クソながら時々遊びで練習してました(できたとは言っていない)。

吹奏楽ファンはだいぶオタクだし主張もはげしいので、その後のは、洛南の演奏が最高、いや、大阪音楽団だ、いや、精華女子だ、藝大だ、アメリカ空軍だ、などと皆お気に入りが最高だゆずれない論争がそこかしこで発生することになります。

この曲はアメリカ空軍バンドのために書かれたとありますから、当然アメリカ空軍バンドの演奏が聴きたいと思うのですが、当時は音源を探すのも難しくよくわからない状況でした。

そんなある日、行きつけのタワーレコードにいくと、"Accent II The Legacy of Claude T. Smith" というタイトルのCDが売られています。
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/216002389

そこのタワレコはたしかタワレコ全体で吹奏楽部門を担当している方が勤めており、キュレーションは間違いのないものです(その後都心の大型店舗に移られたようでした)。このCDの演奏は "University of Kansas Symphonic Band" と表記されていますが、店内POPには「カンザス大学とあるが、実はアメリカ空軍で、鼻血もんの演奏」のようなことが書いてあった気がします(記憶が改竄されている可能性が高い)。視聴してみると、他の収録曲の音質はくぐもったようになっているのに、『華麗なる舞曲』だけ明らかに録音がはっきりしていて、音の厚みや演奏の質・勢いが全然違うし、とにかく圧倒されてしまったわたしはその場で購入を決め、レジに向かいました。いまでもときどき思い出しては聴いています。Claude T Smith Publications が SoundCloud に音源をアップロードしてくれていてありがたい。リンクを貼りますので、ぜひ聴いてみてください。

さて、この音源がアメリカ空軍のものなのか、カンザス大学バンドのものなのかというのはいつも議論になるのですが、やっぱりCDのクレジット通りにカンザス大学バンドのもののようです、というのがこの記事の本題です。今年になって "The Music of Claude T. Smith" というシリーズが CD 6 枚に渡ってリリースされ、そのうちの1枚に『華麗なる舞曲』が集録されていたのですが、これが私が持っている "Accent II" 版と同じものでした。

こちらのアルバムは "Accent II" とほぼ同一内容なのですが、やっぱりトラックによって音質が違いすぎてなあ、そりゃ誤解するよ、という気がします。

とはいえ、長年にわたる誤解が解けてよかったなあ、という話でした。

一応、「"Accent II" の最初に発売された版にはアメリカ空軍バンドの演奏が入っていたのだ」という話があるのですが、こちらはいまのところ検証できていません(たぶん積極的にはやらないとおもいます)。

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