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“groove”【前編】

人生でいちばん悩んだ。
と云って差し支えない。
非難されても仕方ない。

おれは、長距離を移動して、
ライブコンサートを観に行った。
もう二度と観られなくなるグループの、
最後のツアーの、奇跡的に当選した公演を。

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あらゆるホールの正面は、南側である。
日本武道館。両国国技館。後楽園ホール。大田区総合体育館。

例示がなんだか新日本プロレスの都内会場ばかりみたいになってしまったが、プロレス会場に行くと、いやと云うほどわかるのが、「世界は南側が正面になるようにできている」ということだ。

要するに、「ほとんどの技やアピールは、南側に向けて行われる/見せられる≒魅せられる」ということであり、「ステージ構成は遍く南側からの視点で練られている」ということだ。

で。おれは、南側の、高さのある、ステージ全体を俯瞰できる席から、今回のステージを見ることができた。
これは、冴えない人生をおくるおれに神が与えてくれた、古今稀に見る僥倖だった。

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1曲目、”雨”。

KOHH(千葉雄喜)提供曲。
『STEP』のオープニングトラックとラストトラックは、KOHHが手がけている。
そのことを知った当初、おれは率直に「合わないのではないか」と思った。
そんなおれの安い推測は、見事に覆された。

軽やかさと深淵の、表裏一体なる世界観。
それは、KOHHであり、彼らでもあった。

開演とともに暗転するステージ。
T字型に設られ、Tの横棒部分がメインステージ、縦棒部分が花道かつセンターステージになっている。

花道の幅は、未だかつてないほど広い。
この謎は、のちに解けるのだが、詰まるところ、
「6人が一定の間隔をもって横並びで歩ける幅の花道」で、
要するに「6人が並んで歩く最後の大きな花道」になっている。

花道には、6枚の縦長の紗幕が、左右3枚ずつ、たがい違いに、降りている。
“雨”のイントロのはじまりとともに、暗い花道に、暗い黄金色の煌めきが、1人ずつ加わっていく。
花道には下に通じる、見えない孔が穿たれていて、そこから、まるで魔法のように、各人が花道の上へとあがってくる。

気を失いそうになるほど美しかった。
暗闇に徐々に浮かびくる昏い黄金色。

《死ぬだけ 今まで幸せ》
《死ぬまで 今だけ幸せ》

おれが“雨”の中でもっとも好きなのは、
長野博に割り当てられたこのパートだ。

KOHHのトラックに長野博の高音がこれほどまでに合うとは思っていなかった。
そして、この詞が長野博に割り当てられている意味を改めて考え直しながら、おれは滂沱の涙を流して震えた。


2曲目、”TL”。
(大丈夫です、この調子で全曲書いたりはしません。
 特にインプレッシヴだったところだけ抜粋して書きます)

配信ライブでのインスト+コンテンポラリーな振付があまりにも鮮烈かつ素晴らしすぎた“TL“。
今回は、また違うコレオグラフィで、かつそのコレオが頭を抱えたくなるほどのかっこよさで。
シンクロ度の非常に高い群舞。フォーメーションの美しさ。呼吸を忘れて、ひたすらに泣いた。

ヴォーカル面では岡田准一の天まで駆け上がるようなハイトーンが非常に映えていました。


少し話を変えて、そして誤解を畏れずに書けば、ラストアルバムは、ラストツアーは、岡田准一が創りたまいしものなのではないか、というのが、おれの見解です。

つまり、「あなたが26年間、脱退せずに、退所せずにいてくれたから今日のこの日があり、それをいちばんわかっているのもまた、あなたなんですよね」ということです。

トラックとしての作品性の高い2曲のあとで放たれたのは、“Heart Beat Groovin‘”。
これですよ。このバランス感覚の高さ。TLからのHBGとかいう最高の流れ。
名曲揃いのc/w曲を決して疎かにせず寧ろ強調するファン心理の熟知度合い。
これが、天才・三宅健のいるグループにしかなし得ない最高の選曲順であり、
ライブ冒頭でカップリング曲を重視する伝統を最後まで貫く姿なのであります。

4曲目〜6曲目の名シングル曲メドレーもたまらないものがありましたね。
最近TVでもよく演ってますが、“over”ほど何度聴いても泣ける曲はない。

個人的に“UTAO-UTAO”は、御徒町凧と井ノ原快彦の友情とか、あとおれが世界一好きなロックミュージシャン兼元アイドル兼名優の長瀬智也さんとオカダが主演の、おれが世界一好きなドラマの主題歌だったことに想いを馳せてしまうので、おれはこの日もまた大いに泣いた。
彼らが辿ってきたであろう相当ハードなWAYと、それを乗り越えてきた奇跡を讃えながら大いに泣いた。

そう、《高らかに》。

(※おれは《高らかに》でいつも号泣する。今回ももちろん例外ではない)

そのあとのカミトニメドレーでは、涙腺の大爆発は落ち着いたものの、寂寥感は増した。
こんなにかっこよくてかわいいComing Centuryを、この3人が並んで歌い踊るところを、おれたちは2021年11月2日以降、もう二度と観ることが叶わないからである。
こんな「SUPER GOOD TIME」は、もう二度と訪れないからである。

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★追記:
大事なことを書き忘れていた。
「ラストツアーで観られたらいいな」と思っていたもののひとつに、
「井ノ原快彦のアコースティックギター演奏」があったのだが、
"Dahlia"のギターの音色が井ノ原快彦の奏でるものだと判明した瞬間、
どちゃくそアガりたおしました。ありがとうございました。
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続いては、『STEP』や最新シングルから4曲お届けするゾーン。
おれが『STEP』でいちばん好きなのは、Tempalay提供の”分からないだらけ”。

“分からないだらけ“の演出とコレオに、おれは今ツアーの銀メダルを贈りたい。
寒色のタイダイのスーツ上下を纏ってのコンテンポラリー度が非常に高い群舞。
6人の上に浮かぶ、妖しさ漂う、限りなくオレンジ色に近い、満月のモチーフ。

美しすぎて眩暈がした。
おれがコンテンポラリーダンス好きだから、余計嬉しかったのだと思う。


※そう。おれは今回、「コンテンポラリー色の強いコレオが観られたらうれしいな」という願掛けもこめて、自分がいちばん好きなコンテンポラリーダンスカンパニー【イデビアン・クルー】のTシャツを着て公演を観に行った。

“MAGIC CARPET RIDE“のあの、「どこが『ゆるく踊ります(by森田剛)』やねん」でお馴染みのダンスと、井ノ原快彦によるあの洒脱かつ情感のある、大好きな《見たこともない》が生で聴けたのは感無量であった。

“blue”は、《心地よく吹き込むからGo fly》のオカダのアカペラソロがめちゃくちゃ好きなのですが(あの歌唱はもはや武道だ)、そこでおれは今回最高の爆アガりを記録しました。
当該歌詞のリズムに合わせてペンラを振り切るほどのブチ上がり具合でした。オカダは偉大。

“Let Me”もオカダのファルセットが音源でめちゃくちゃよくて、ライブでも実際よかったので、やっぱりおれにとって『STEP』のMVPは岡田准一なのである。
おれはあまりにも地声で歌ってしまうタイプのシンガーが苦手で、オカダの歌唱に対する苦手意識もそこから来ていたのだか、今作ではファルセットに振り切っていて、それがおれの荒んだ感受性に非常に響いたのである。

そして、いま改めて書きたいのだが、Microという人は天才だと思う。
ことに、彼らに楽曲を提供することにかけては輪をかけて天才性を発揮していると思う。
おれは彼の”Bolero”という曲が非常に好きで、ボレロといいつつ行進曲のような楽曲なのだが、“Let Me“は、「現代的牧歌」のようでもあり。
素朴な音で織り成すメロディックな曲展開の中にシンと伝わってくるメッセージを込めさせたら日本トップクラスの才人だと心底思います。

……すみません、ちょっと酔いが加速しています(呑みながら書いている。350ml缶6本目)。

このあとのMCは非常に当たり障りのない感じで、それが「最後のMC」の重みへの伏線のような、反作用的なはたらきを果たしているのではないかとすら思えた。

MC明けはカミトニ最新曲。
カミは楽曲がいいだけに余計、演出もうちょっとどうにかならんかったかなと思った。
信号の3色、というライティングが安易に見えたし、それならメンカラ3色でよかったんちゃうかと思うなどしました。
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※2021/10/24追記
読者の方から「赤青黄は初期のカミセンのメンバーカラーである」とのご指摘をいただきました。
過去の映像等を見返してみると、カミセンのステージではたしかにライティングが上記3色でした。
不勉強および知識不足からの軽率な発言をお詫び申し上げますとともに、ご教示御礼申し上げます。
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トニはTTTの雰囲気そのままという感じで、アドリブなのかそうでないのか惑わせることまで含めての安定感を覚えました。
御徒町凧×森山直太朗楽曲を歌うにあたって最も重要な「表情豊かな声」と「表現力ある歌唱力(そう、要するに【力】)」を持ちうるトニセンの偉大さを再痛感しました。

ここからの全身純白の衣装も非常に良かったですね。
あの”fAKE”〜”FLASH BACK”で完堕ちした身としては、白が一番高貴な色です。

ちょうどいいや、このタイミングで今回の自担のヴィジュアルに関して述べさせてもらいますと、

◆序盤の髪型(あの前髪が世界一好き。あと、中盤以降湿気を帯びてしまう前の、絶妙な[ストパーをやめたあとの自然な]パーマ感)が120点満点。
◆いつも「タイトなパンツの上に長めのプリーツスカートを半分くらい巻きましょう!」と云ってくださるスタイリストさんに松阪牛ギフトを贈りたい(当人の意向なら当人に松阪牛を1頭贈りたい) ※おれは三重県松阪市育ち
◆純白衣装でも、上着はふんわりボリューミーにすることで、5cmほどしかない身幅に「軽やかな重み」をもたせ、それでいてパンツはややハイウエストかつタイトな先窄みにしてくださってありがとうございます

ーーという感じです。世界一かっこいいのは自担。異論は持っていただいて構いませんが心の中に秘めておいて下さい。おれにとっては上記3点こそが真実にほかならないので。

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というわけで、ここまでで全40曲中20曲の感想終了。
残りのあと20曲は明日以降に書く(はずだ)と思う。