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JK.ローリングの偏見に満ちた意見にもかかわらず、あなたはまだ彼女の作品がお気に入りなんですか?
「偏見に満ちた意見」とは、なんですか?
Dress however you please.
— J.K. Rowling (@jk_rowling) December 19, 2019
Call yourself whatever you like.
Sleep with any consenting adult who’ll have you.
Live your best life in peace and security.
But force women out of their jobs for stating that sex is real? #IStandWithMaya #ThisIsNotADrill
【翻訳】
みんな、好きな服をまとい、
好きなように名乗り、
好き合う大人同士で共に眠り、
平和と安寧の内に最高の人生を送ればいい。
とは言え、「性別こそが現実だ」と主張しただけの女から仕事を奪うの?
上記の動画の問答で、画面に姿が映らない声だけ出演の若者は最後に陥落し、JKローリングが「トランスフォビック」であるという意見を撤回した。
「トランスフォビック」は「trans phobic」。きちんと訳せば「トランス嫌悪症的」となるが、この動画の字幕では出来るだけ「トランス差別」で通してみた。日本語空間では「トランスフォビア」と言われても「なんとなくまずい感じ」という程度にしか理解されないからだ。そんなわけで、通常は「トランス差別!」とトランス応援団(アライ)に罵られる、あの流通している言葉を優先した。普段の医療・法文翻訳ではそういう文学的な遣り口は意図的に避けている。
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「偏見に満ちた意見」と言われているローリングのツイート(上記参照)は、マヤ・フォーステーターという女性を庇って発せられたもの。
ではマヤはいったい何をしたのか。
マヤのツイートは当時のTwitterルールで違反を取られ、消されて読めなくなっていることが多いので、ジュリー・ビンデル氏(フェミニスト・ジャーナリスト・レズビアン)の記録を紹介する。
【抜粋】
セント・オールバンズでカブスカウトのリーダー補佐をしていたフォーステーターは、2019年にトランスジェンダー政策について保安に関する懸念を表明、それは「女児のための寝床を含む自律的なスペースの終焉を意味する」と主張していた。
また、ツイッターでの議論の中で、彼女はスカウトリーダーのグレゴー・マーレイ:Gregor Murray(ひげを生やした男性)を「they(ノンバイナリー用)」ではなく「he(男性用)」という代名詞で呼んでいた。ソーシャルメディア上の女性たちを「TERF」、「下劣」、「最低のクズ」と呼んだり、プライドで自分たちが見えないことに抗議していたレズビアンたちを「最低のマ◯コ」と呼んだりするなど、マーレイの行動については、スカウト協会に転送された十分な証拠があった。
実際、マーレイはこのような行動により、最近ダンディーの地方議員を停職処分にされていた。しかし、フォーステーターの「罪」は男性を「彼」と呼んだことだけであったにもかかわらず(マーレイが女性を「ま◯こ」と呼んだのとは対照的に)、スカウト協会は彼女に対して2年間の捜査を行ったのだ。
つまり、この男が子供たちが利用する宿泊施設の「女子部屋」に寝泊まりすることをマヤは警戒して、Twitterでレスバトルを展開していたのだ。
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マーレイは「ノンバイナリー(中性)」を名乗っていた。これは「完全な男性ではない」ことを意味しており、それ故に「自分には女子部屋で女子と共に過ごす権利がある」とマーレイは言わんとしていた。これをガールスカウトの関係者だったマヤが阻止したく思うのは当然のことだろう。
しかしマヤは、マーレイを「彼:He」と呼び続けたことで職を失った。
【BBCの記事より抜粋】
2019年:「人間は生物学的な性別を変えることはできない」と発言して職を失った女性が、雇用審判で敗訴した。
マヤ・フォーステーター(45歳)は、人々が自分のジェンダーを申告可能にする政府の政策に疑問を呈する一連のツイートを投稿した後、仕事の契約を更新されなかった。フォーステーター氏は、トランスジェンダーであることを認める証明書を持つトランス女性は、自分自身を女性と表現することはできないと考えている。
中略)
ジェームス・テイラー雇用判事は、「ミスジェンダリングによって引き起こされる甚大な苦痛」を無視する権利はないと述べた。(中略)
フォーステーター氏の考え方は "絶対主義 "であったと、26ページに及ぶ判決文の中で判事は結論づけた。
「たとえそれが相手の尊厳を侵害し、威圧的、敵対的、卑劣、屈辱的、攻撃的な環境を作り出すものであったとしても、自分が適切と考える性別で相手を呼ぶというのが、彼女の信念の中核をなすものである。
「そのようなやり方は、民主主義社会において尊敬に値しない。」
フォーステーター氏は、「トランスジェンダーを受け入れるかどうかの問題を、男性も女性のスペースに入れるべきだという議論にすり替えることは、プライバシーに対する女性の権利を軽視し、根本的に非自由主義的である(ユダヤ人に豚肉を食べることを強制するようなものだ)」と主張した。
作家のJKローリングは、フォーステーター氏を支持することを表明した人々の一人である。
弁護士費用を支払うためにクラウドファンディングで8万5000ポンド以上を集めたフォーステーター氏は、それに対して「私の事件に対する支援と関心に圧倒されています。」と述べた。
「この件に関して私が望んでいたのは、人々が通常の、開かれた、民主的な方法で、性別と性自認(sex and gender identity)にまつわる政策的な疑問について話せるようになることでした」。
この敗訴を受けて控訴したマヤは、2021年には逆転勝利を得る。
【抜粋】
「人間は生物学的な性別を変えることはできない」と発言し、職を失った女性が、雇用審判に対する控訴審に勝訴した。
マヤ・フォーステーター(47)は、ジェンダー承認に関するツイートを投稿した後、就業契約を更新されなかった。彼女は2019年の裁判で敗訴したが、高裁判事は彼女の「ジェンダー・クリティカル(ジェンダーに批判的)」な信念が平等法の保護に該当すると判断した。
ここでGC(ジェンダー・クリティカル)の名がBBCで報道されたことは意義深い。英国平等法は「信念・宗教」も保護下に入れており、この控訴審では「ジェンダー・クリティカル」という信念も保護対象であると認められたということになる。つまり、トランスジェンダリズム(トランスジェンダー主義)という信念と、ジェンダークリティカル(ジェンダーに批判的)という信念は少なくとも等価であって、優劣無しということになったのだ。
これは、なにがなんでもトランス優先だった社会的風潮の中では、女性側の大勝利と言える判決だった。
【抜粋】
フォーステーター氏はビデオ声明で次のように述べた:「法律を明確にし、より多くの人々に声を上げるよう促すという役割を果たしたことを誇りに思います」。
2019年のBBCによるマヤ敗訴の記事と、ローリングのマヤ擁護のツイートは同日に書かれている。どちらが先に報じたのか定かではないが(おそらくローリングが先)、この書き込みよって、JK.ローリングは「トランス差別」の蔑称と共に、焚書や殺害予告などの圧倒的な弾圧を引き受けることになった。
当時、キャンセル・カルチャーを恐れてか、トランス人権運動によって迫害されていく市井の女を庇う有名人は少なかった。その現実に絶望感を抱いていた女たちの心に火を灯したのはローリングだ。
あまりJK.ローリングに関心が無かった私でも、彼女がツイートに記した2つのハッシュタグには胸が締め付けられる。
#IStandWithMaya (私はマヤの側に立つ)
#ThisIsNotADrill (これは演習ではない)
ローリングほどのビッグ・ネームに名指しで激励されて、マヤを応援していた観衆が歓喜に沸いたことは言うまでもない。
そして、SNSでの言論バトルを超えて、市井の女の生活が現実世界での戦い無しには壊されていくことを明確に告げた「 #これは演習ではない 」に、覚悟を決めた女も少なからず存在したことだろう。
2019年前後は、ジェンダーに批判的な書き込みをするアカウントは凍結され、トランスジェンダリズムに言論で抗うWEBページですら運営に消されていくような世の中だった。女にだけ効く巧妙なファシズムに抵抗するには、今よりも多大な勇気が必要だったのだ。
ただの市井の女であるマヤ・フォーステーターは、この戦いの先達を見事に果たし、今は女性スペースを保護する団体「SexMatters 」の中心人物として活躍している。
冒頭の問い、「JK.ローリングの偏見に満ちた意見にもかかわらず、あなたはまだ彼女の作品がお気に入りなんですか?」には、動画の如くこう答えたい。
「”偏見に満ちた意見”とは、なんですか?」
(終)
Sex Mattersは、政府機関や学校、企業が男女別のトイレを「ジェンダー・ニュートラル(男女混合)」なトイレに置き換えたことに対する世間の反発を受けて、ジェンダー(社会的性役割)に批判的な多くの団体や個人の中から、技術的な検討のための意見を提出しました。
委員会の新委員長であるフォークナー氏がフェミニスト運動団体「Sex Matters(生物学的性別の重要性)」に宛てた手紙には、次のように記されている。
「3月にストーンウォールに手紙を出して、会員資格を更新しないことを伝えました。契約はもう期限切れです」
2022年:JK.ローリングが性暴力被害者のための女性専用サポート・サービスを開始した。ローリングによれば、Beira's Placeは、エジンバラで虐待を経験したことのある女性に、無料で支援と弁護士サービスを提供する。
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