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【ラブライブ!】アニメ「幻日のヨハネ」の感想【嗚呼、あなたは何がしたい?】



はじめに

「幻日のヨハネ」。元は雑誌で展開された、「ラブライブ!サンシャイン!!」の外伝企画である。
沼津っぽい異世界「ヌマヅ」、それとファンタジー色強めに仕立て直したAqoursのメンバーという物珍しいテイストなのだが、ファンからは好評だった。
コロナ禍で供給が少なかったのもあるが、活動が一段落したAqoursの「新しい冒険」に、好意的な目を持っていたのもあると思う。

好評を受けてか多角展開も行っており、コミカライズも実現。そして、待望のアニメ化が……エイプリルフールで発表された。つまりウソ(一発ネタ)だった!
しかし、2020年のエイプリルフールで発表された謎のグループ「シャゼリア☆キッス」のCD化が実現したように、アニメ化も叶うのではないか、水面下で進めているのではないか……と期待されたのである。

そして、2022年6月のAqours6thライブ・東京公演にて。5万人の観衆の前で告知されたのは……

「幻日のヨハネ、アニメ化!」

「うおおおお!!」

東京ドーム中が大歓声に包まれた。一方であいきゃんの目には涙が…。

私も当時、熱狂の渦の中にいたのだが、本当に嬉しかったんだ。

Aqours、6年ぶりのアニメ化なのだから!!厳密にはAqoursの物語ではないのだが、それでもいい。彼女らの新たな活躍が見られれば、それでいい!

Aqoursは止まらない。アニメ化の実現とともに、これからも走り続ける彼女らの気概もまた感じ取ることができたのである。私はアニメを見られる日を心待ちにしていた。

感想

薄い

まさかこんな、何の印象にも残らない作品になるとはなぁ…

申し訳ない。私だってサンシャイナー(死語)だから、こんなことは書きたくない。だが、嘘つけないのだ。しょうがないのだ。

「このアニメはクソだ」と言いたいのではない。面白い要素はあるのだが、ただただ物語が薄っぺらい。つまり、「ひたすら退屈な時間が流れていく」ということになる。

雑誌連載時やアニメのオープニング、楽曲からして、私は以下の内容を想像していた。

・異世界でのAqoursの絡み!
・ヌマヅの良さ!美しさ!
・ファンタジー要素!ちょっとバトルもある!

まあ、なくはなかった。しかし薄い!これらの要素を金箔並みにペラペラにしたのが幻日のヨハネだったんだよ!
SNSや掲示板では、1話の時点で「ラブライブ!じゃなかったら切ってた」「虚無」と言われていたらしい。だが私は「いやいや、結論出すの早すぎだろ」「ラブライブ!だからこそじっくり見せてるんだろ」と思いつつ、根気強く見たつもり。いやはや、まさかなぁ…。

思ったこと

私が「ん?」と思ったのは3点。

まず、探しものが多すぎる。
なんで、あんなになくなる(いなくなる)んだ??杖なくして、ヨハネがすねて、ライラプスがいなくなって、ヨハネがすねて、ライラプスがいなくなって、ヨハネがすねて……の繰り返しってお前!おつかいクソゲーか!!私には時間稼ぎに見えてしまった。
捜索に時間を遣うのもいらない。特に、8話で杖をなくしてからの9話でライラプス捜索は、本当にいらなかった。以降もなにか失くしてたし。
回想もあんなにいらない。探したり思い出したりするのに時間を遣わなければ、キャラのやり取りやヨハネの成長要素を増やせたのではないか?

次に、異変の影が薄い。
「ヌマヅを襲う脅威」「歌が大事」と、やりたいことは理解できたのだが、もっと効果的に使えなかったのか。ただただ、次の話に影を落とすためだけにしか使われていないじゃないか!
敵も鹿だけで、大した脅威に思えなかった。異変をもっと強調していればバトルやタクティカルもできたはずで、残念きわまりない(OPの魔王マリはなに?)。負傷を描けないとかの事情があるのかもしれないが、ファンタジーらしいぶっ飛び方を見せてほしかった。鹿以外の動物は愛護で描けないのなら、魔物を描けよ!
しかし、最終回でマ◯ロスっぽいものが見られたことだけは満足している。そうだよ、歌で全てを解決すればいいんだよ!これをもっとやってくれたら……

最後に、キャラクターが普通すぎる。
元々9人にはそれぞれ口調や癖、関係性などが設定されており、原作アニメではしつこい、いやウザいほど強調されていた。
しかし、「幻日のヨハネ」ではかなり漂白されている。たとえばダイヤの「ですわ」口調はないし、ほかも代表的なセリフをほぼ失ってしまっている。厳密にはAqoursではないから、そこは問題ないのだが……

ただ、これらの個性をなくしてしまった上に、ヨハネの出番が多すぎてモブに成り下がってしまっている。これじゃ原作以下の普通のひとだ。仕事を持っていたり妖精だったりするのだが、それも人間的な個性まで獲得するに至っておらず、役割を「演じている」感がつよい。いかんせん我々が彼女たちを下手に知っているだけに、普通の会話をしたって驚きも少ない。

中盤の方は割と絡みがあったように見えるが、次第にヨハネ、ライラプスのやり取りが中心となっていき、8人が居るだけの探しもの要員と化していた。
私はリトルデーモンだからいい。だが、ファンが見たいやり取りが見られていますかね…。

たぶん、全てにおいて淡々として、中身がないからこその「虚無」なのだろう。異世界なのだから、もっとぶっ飛んだものが見たかったし、できたはずだ。なんでうっすら日常系アニメになってしまったんだ!

「Aqours」について

また、時々あった「Aqoursっぽいヤツ」はあまり評判が良くない。9人揃って歌ったり踊ったりするアレである。

異世界で話を進めているのに「Aqours」をやっちゃおしまい、という意見はそこそこ見受けられる。確かに、私ももったいないと思う……が、Aqoursで話を回しているのだから、どこかでそれはあるだろうとも思う。全員揃ったらAqoursだし。

私がそれ以上に問題だと思うのは、その「Aqours」に必然性が見受けられない点である。この9人である意味だったり、歌う意味だったりがいまいち感じられなかった。「Aqours」がグルメスパイザーと同じものに見えて仕方ない。
言い換えれば、「この歌をどこか作中に出してください」という、大人の事情が透けて見えた。これは「スーパースター!!」でも言えることだが、やりたいこと(やってほしいこと)を押し付けられて、不自然な流れを作らざるを得ないのだろう。今のラブライブ!は背負うものが多いのだろうか…。そこは同情を禁じえない。
特にヨハネは熱量でごまかすこともできないから、物語を組み立てるのは難儀しそうだ。しかし、なんとかならなかったものか。

よい点

ここまで酷評してきたが、褒めるべき点もある。

アニメの作画と、Aqoursが提供する楽曲は安定して良い。要はまたキャストとキャラの力に頼りきった作りである
作画に関してはかなり力が入っているようで、変なカットは一つもなかったのではないか。毎秒彼女らが可愛らしく、Aqoursが好きな人にはたまらない。
楽曲についても異世界の設定を活かしたものが多く、これまでのAqoursにない曲調が多い。異世界設定、そして厳密にはAqoursではないことを上手く活かした新たな冒険だと言える。また、原作にあった先輩後輩、ユニットといった関係性を再構築し、これまで見られない組み合わせで作られた曲もある(まあ、ヨハネソロも多いのだがそこは目をつむろう)。

また、ストーリーについて酷評してきたが、5話あたりの展開と12話、13話は面白かったと思う。私の見たかったものが詰まっていた。しかし、終盤については薄い話を続けた後に駆け足で状況整理した、というだけに過ぎないのでもっと面白くなる余地があったのだろうと思ってしまう。全体として、90分くらいのボリュームに収めればよかったと思う。

おわりに

「Aqoursに動きがあればいい、別に面白くなくていい…」

と、放送が始まる前はそう希求していた。供給が少なかったから、とにかく飢えていた。「元気な姿を見られたらいいわぁ」という、実家のおばあちゃんのごとく。
確かに、作画が安定しており、楽曲も素晴らしいものになっている。「Aqours」というコンテンツにおいては評価されてもよい。

しかし…やっぱり面白さも大事だよ!
Abemaで先行配信をしている間、ニコニコ生放送ではその前の回を配信していた。熱心なファンはAbemaを見るので、特異な層が残っているのを念頭に置くべきだが、アンケートの結果が毎回悲惨なものであった。ニコ生でもたいがい、好評な意見が80%を超えるのだが、幻日のヨハネに関しては60%台をウロウロしていた。この放送形式でなければ、さすがにもう少し高くてもいいと思うが…。

何が言いたいのかというと、幻ヨハは本編のラブライバー以外にたいする訴求力はあまりなかったのだと思う。ファンを満足させるなら易いが……正直、ファン以外は見るに堪えない作りだった。現代だってコンテンツの面白さと話題性で勝負して、新規ファンを獲得する例もある(生半可では厳しいが)。内輪だけの面白さだったのだろうか。

本当に、Aqoursに引導を渡しかねない作品だったと思う。
2期があるのであれば…もう少し中身のある作品であってほしいと思う。





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