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大腸憩室症とつきあっていく私のこと

本当に50代になってからどんどん「身体の不調のこと」を話題にしてしまう。本音では自らに怒りと呆れた気持ちを込めて「あっちが痛いとかこっちが怠いとかばっかりで、調子のいいところから先に言わんかい!」とツッコんでいるのだけれど、体調に問題がないときやその場所はその有り難さに気持ちすら向かないのが人間の愚かなところで・・・・

いつも痛いだのなんだの言ってないで、すこしは持ってる知識と共に世に役立つように書かんかい!と自分に渇をいれてみるのだけれど、良い教科書なら世の中にいくらでも転がっている。・・・なぁんて言い訳してるとまた書かないままになるので、一応「最新の」「世界中でも有名な病院メイヨークリニック」の「大腸憩室炎Diverticulitis」を参考にしながら書いてみようと多う。とはいってもさすがのメイヨークリニック、的確に分かり易く書かれているから英語が多少読めるならそっちを読んだ方がいい。

目的は「持病と上手く付き合っていくこと」、そしてそのための習慣をつけることを怖がらないようになること。実際習慣というものも特別なことではなく当たり前の事なんだと改めて思う。丁寧にすごし、ちょっと気をつけるだけ・・・

*今回は他に大腸憩室炎に関してのいくつかの有名な論文にもあたっている。どれにも、まだ推測の域を出ていないけれど「統計としてこういう関連性はありそう」という結論が沢山ある病気だということだけ、記しておく。


大腸の憩室症とは

大腸という「土管」の壁に、外側(便宜上、大腸の中、うんちが通るところを内側、大腸と隣り合う他臓器側のほうを外側とします)にぽこっと飛び出た小さな部屋ができた状態、ここのことを憩室と呼びます。とても「ありふれた」状態で、当然そこに炎症がおきる大腸憩室炎はこれまたよく見る病気です。

でも最初に書いておくと、憩室炎も憩室症も実はあんまりよく分かっていないことが多いのです。なので「なぜ」「どうして」のはっきりした答えはあまりありません。

原因は「年をとること(腸の壁が弱くなっていく、と考えられている)」そして「いろいろ圧がかかること」といわれています。だから便秘の人がなりやすい・・・かと思いきや、ある時期から「毎日複数回の排便があるひとがなりやすい」という報告が出始めました。

今は「排便回数の多い人」のほうが憩室を持ってる、というほうが支持されてるんじゃないでしょうか。ちなみに私は出産後あんまり便秘にはなりにくくなってまぁ毎日1回、って感じでした。

人間ドックなんかで大腸内視鏡を受けている方のなかには「憩室がありますね」って言われたことがある人もいるかも。憩室は1つでも見つかったら「大腸憩室症」という名前をもらえます(嬉しくない)。でもまぁ、それが問題ってことじゃなくて「白髪、ありますね」的な表現。それにばりばりお仕事をされている年齢の方で数多くの大腸憩室をみる、というのは少ないんじゃないかと。うん、やっぱり「加齢」って大きな生成要因なんでしょうね。


何が問題?

虫垂もそうですが、ただそこにあるだけなら問題ないんです。でもその憩室という「小部屋」に炎症がおきると虫垂炎と同じ様になり「大腸憩室炎」と呼ばれます。腹痛、吐き気、熱が出て全身が怠い・・・とか。炎症がひどくなると、菌が全身に回って菌血症、さらに酷いと敗血症なんかをおこすので注意が必要。そもそも若くない人が患者さん(免疫系が強いともいいきれない)です。他、リスクファクターにあげられているのは太っている(私だ!)とかタバコ吸い(血流ふくめあれこれ弊害が出やすい)、偏った食事内容(繊維質を取ってないとか、赤身の肉ばかり食べるとか、大酒飲みとか)、普段から運動してない(肥満につながるし呼吸機能も落ちがち)、他にもビタミンDレベルが低い(2015年のJAMAに載った有名な論文があるのですが、先にも書いたように「そういう関係がある」ことが分かっているもののなぜその関係があるか、ははっきりしていません)とか、ある種の抗炎症薬剤を(いつも)とっている・・・とか。

なぜ炎症を起こすか、については実はまだ分かっていないのです。昔は、憩室炎の患者にはナッツ類、種子類、ポップコーンを避けるよういわれていました。でも最近の研究では、これらの食品は憩室炎のリスクを増加させないことが示されているし種子や一部のナッツ類は食物繊維の良い供給源となります。

そして治療・・・虫垂なら切り取ってしまえますが(もちろん抗生剤で「散らす」こともよく行われます)、そもそも憩室って1つだけ、じゃないですし手術は基本的にしません。というか外科医もそれはやりたくない、というほうが正しいかな。

ここから下は 読んだだけで怖くなってしまう方もいるかもしれませんが、そこまで酷くなることは珍しいということだけ先に書いておきますね。

例外は炎症をおこした部分から出血してしまったとき。まずは内視鏡で止血してみたり、血管内からアプローチして出血ポイントを詰める塞栓術なんかも行われます。どうしてもお腹を開けないと、っていう事態もあるかもしれませんが、そもそも炎症をおこしている消化管は繋ぎにくいので、まれに一時的に人工肛門を置いて、2回目の手術として炎症のおちついた腸をつなぐということもあります。(やりたくないですよね・・・)


合併症

大腸憩室は大体15%くらいに合併症がおきるといわれていて、

  • 膿瘍(膿がたまってしまう)

  • 大腸の閉塞(というか、炎症で腸が動かなくなったり部分的に狭くなったり・・・などで詰まってしまうんです)

  • 他の臓器との間に穿孔(穴があいてつながってしまうこと)をつくる

  • 憩室や大腸が破けて腹膜炎という命に関わる状態になること

  • 憩室出血

なんかがそれらです。・・・こっわ!
ということで、現状「こういうことをしていると炎症・合併症をおこしにくい」といわれているのは・・・

  • よく運動すること

  • 食物繊維をしっかりとること

  • 健康な体重を維持すること

  • 水を沢山飲むこと

  • 禁煙と、お酒を控えること(ほんの少しにすること←これは私の勝手な解釈ですが・・・適度なお酒は大人の楽しみですからねぇ

あんまり目新しいものはないですね。でも「持病と付き合う」って結局、そういうことなんだと思うんですよ。


憩室症(憩室持ち)のひとがお腹が痛くなったら

一般的なことはここまでで、では憩室があることが分かっている私が調子が悪くなったときに実際なにをどうやっているか、の話。

私の目標は「できるだけ自宅療養で、普段通りに少しでも早くもどること」です。入院なんてしたくないしお腹も切られたくない。

でもちょっとストレスがふえるとか外食が続くとかがあると、明らかにお腹の調子がかわります。
私の場合は まず一時的に変に食欲が増します。こういうときは気をつけて「水分だけ」沢山とります。食事も煮込んだ野菜みたいな、腸に負担の少ないものを。

その次 私は「全身倦怠感=だるさ」に来ます。もう高熱を出せない年齢なので、多分だるさとして感じるのが一番早い。そして大抵、熱自体は低いけれど発熱してくる。お腹は動いていることも全く動いてないこともあります(吐き気まではそうそうない)が、もう最近は「熱がでる=多分憩室炎起こしてる」と見切り発車で、固形物をとるのをやめます。まぁ幸い?熱が出る頃には食欲が落ちてるので水分だけでも辛さはないです。

(体力温存のためタンパク質を、と助言をくれるひともたまにいるんですが、外科病棟だったら憩室炎のひとにタンパク質なんて与えるより腸の安静が第一です。手術室に行きたくなければ多分これがベスト)

人間、水分を充分に取れていればまぁ平気です。普段2.5リットル飲む私はこういうときは4リットルを目指します。なぜかというと、腸って炎症を起こすと激しく浮腫んで血流も悪くなるし(当然細菌と戦ってくれるものが届きにくくなる)、炎症系のサイトカインの仕業で関係ないところもめちゃくちゃ浮腫む(あちこちに水が溜まってしまう)のです。体内の水循環が悪くなって良い事はなにもない。水をとっていれば低い熱でも汗をかけます。1日最低でも3〜4回トイレ(小のほうね)にいくのを目指します(おしっこの色も目安)。そうそう、熱がそこまで酷くないときはヤクルトも朝晩と、倍量で飲み続けますよ。(←商品名だしていいのか・・・(^_^;)

この腸の安静と水分摂取で、大体2日もあれば回復してきます。回復の目安は2つ、「腸がうごく(お通じがある)」のと「オシッコでトイレに駆け込む回数が増える(1日5回以上)」こと。どちらも炎症がおちつくことで起こる身体の反応で、お通じがあるということは腸が普段通りに動こうとしてきたということですし、炎症サイトカインが出なくなるとthird spaceに逃げていた水(浮腫みを作っていた水)が一気に血管内に戻ってきて、どんどん尿として排泄されるからです。

熱が下がるとか、怠さが減る、というのは上記2つの前後に起きますが、ここを我慢して布団のなかで休んでおくと治りが早い。

抗生剤が手に入れば当然怠さもすぐ取れて熱も下がりますが、私は抗生剤に弱くて(2日も飲むと酷い下痢を起こす=また腸内環境がめちゃくちゃになる)こうなるとまたまた憩室炎を起こすので使わない選択をします。
抗生剤を使わないとダメかな、というときは入院も覚悟・・・なので、何が何でも水と睡眠で直してやる!になるんですよね。


持病の憩室症と仲良くする

まぁそんなわけで、できてしまったら一生付き合うしかない憩室です。自分なりのコントロール法を探しながら仲良く共生?するしかありません。

私は幸いストレスの少ない生活をしているし、もう閉経しているので(ホルモンの影響でカルシウム吸着ががっくん、とおちる)カルシウム+ビタミンD3のサプリを忘れないように毎日飲んでいます。女性は20歳以降どんどん骨が弱るので、早い時期からこの「カルシウム+D3」サプリは取った方がいいです。(私は滅多にサプリや薬を勧めないですが、これは妊婦さんに葉酸サプリを勧めるくらい、本気でイイと思う)

先にも書いたけれど毎朝最初にヤクルト1本(これは個人差があると思います。トシをとって私にはヤクルトが結構合う!と気付いただけです)。野菜たっぷりの食事。運動。ある程度規則正しい生活。

こう書いてみるとびっくりするくらい何にも特別なことをしていない、それでも大事な習慣です。
多分「○○を取らなきゃ」「△△は避けなきゃ」みたいに神経質にしなくても、自分のお腹の調子は気にかけていればなんとなく分かってくるもの。そして上の方でも書いたけれど「なぜ炎症を起こすか」はいまだに謎なんだし、ありとあらゆる考察をしてくれる専門科が分からないって言ってるんだから私がキリキリしたって無駄です。実際何をしてたってしてなくたって具合が悪くなるときは悪くなるんです。もうそうなったらおとなしく水だけ飲んでおく。


私が大腸憩室症とわかったのは、強い症状で救急室を受診し「急性虫垂炎で手術が必要かも」と言われ術前検査のCTをとったところで「あ、虫垂炎じゃなくて憩室炎ですねっ」って病院から即リリースお家に帰ってねされたことからです。3〜4年前かしら。

その後あそこまで酷い痛みと熱に苦しむ事はありません。もちろん早めに腸を休ませる、熱に抗わない、みたいなポイントを抑えている、というのはありますがね。

大腸憩室症をもっているひとはたっくさんいるはずなのに、皆さん別に苦しまないんだろうか、あんまりそれに関しての投稿って見ません・・・いやいや、外科外来にはよく「またお腹が痛くなりました」ってひとが来てるからなぁ。きっとみんな「持病のことで文句をSNSに書くのは」っておもってるんだろうなぁ。

絶対これでなんとかなります、とはいわないけれど、薬を使わなくても2日〜3日あればなんとかなる、と思えるようになったら大分この病気(?)とのつきあい方も気楽になるんじゃないでしょうか。

どなたかへの、多少の参考になりますように。

サポート戴けるのはすっごくうれしいです。自分の「書くこと」を磨く励みにします。また、私からも他の素敵な作品へのサポートとして還元させてまいります。