ひょっとこ

日々のことば 映え/背伸び/友情

ある日突然、この世界からありとあらゆるラーメン屋が姿を消したとしても困らないくらい僕はラーメンという食べものに思い入れのない人間なのだが、以前スタッフから教えてもらった有楽町の交通会館にある「ひょっとこ」の柚子ラーメンだけはちょっと食べてみたいと思っていた。

その後、何度か思い出して行ってはみたのだが、店はいつも満席で、しかもカウンターで食事する人たちの背後には二重、三重に待っている客が張り付いている様子を目の当たりにして

無理!

となったきり、すっかり忘れていた。ところが、先日たまたま数寄屋橋の泰明小学校のちかくに支店があることを知り行ってみたところ、やはりカウンターのみだがとても空いていて、ここは本当に支店なのだろうか、もしかしたら「ぴょっとこ」とか「ひょっこと」とかそんなニセモノなのではないかとつい看板を二度見してしまうほどだった。

なんだろう。みんな支店の存在を知らないのかな? それとも味が本店とぜんぜん違うとか? あるいは、並んでいるうちにじわじわ胃液が分泌されてよりラーメンがおいしくなるので並ばなきゃダメなんだよ! とか、そういう話なのか? いや、さすがにそれはないだろ。

とにかく、出てきた柚子ラーメンはさっぱりして美味しかったし、銀座にもかかわらず値段も良心的だったので、突如ありとあらゆるラーメン屋が姿を消したとしても数寄屋橋の「ひょっとこ」だけはブラックホールに吸い込まれることなく残ってほしいとちょっと思った。あと、むかし渋谷にあった「チャーリーハウス」が甦ってくれたら最高だな。

では、日々のことばの10〜12です。

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10.映え

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