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あかねぐも

14連勤中の帰り道。ふと見上げた空にため息が出る。北風に飛ばされた茜雲が、まるで金魚のように泳いでいるではないか。なんだかごほうびを貰った気分でホクホクしながら家路を急いだ。

小自然

よく、こういう話をするとポカンとされてしまうのだが、海であれ山であれ、リゾートというものに対するあこがれがまったくない。

一連のロメール作品や『ぼくの伯父さんの休暇』など観れば、人並みに海辺のバカンスもいいもんだなどと考えたりしなくもないが、実際にそういった場所に行ったところで2日もすれば飽きてしまうだろうことが自分でも分かっているので行く気にはなれい。ただ、概念としての「バカンス」が好きなだけなのだ。

じゃあ、自然というものが嫌いなのかといえばそんなことはまったくなくて、自分で言うのも変だが、仕事の行き帰りなどにぼくほど月とか雲とか、植え込みの雑草とかをいつも眺めている人間はいないのではないかと思っている。

つまるところ、ぼくの場合、都会の片隅で不意討ちのように出くわす自然が好きなのだ。いわば、大自然に対する「小自然」とでも言おうか。

それで、思い出したのだが町中華でチャーハンを注文した後に後悔する感じ、にそれはちょっと似ている。

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