見出し画像

【全文公開】「届ける」と「moicafe.com」について

これを感無量と言わずしてなんと言いましょう。

先日ついにメジャーデビューを果たした「フィロソフィーのダンス」のシングル「Don't Stop The Dance」が、オリコンランキングのウィークリーで第2位になったのです。あのV6と並んでいるとか、ふつうにすごくない?

スクリーンショット 2020-10-01 9.41.28

彼女たちの存在を知ったのは2017年春のこと。以来3年半にわたり、フィンランドにかんするツイートの合間にサブリミナル効果を狙って「フィロソフィーのダンス」のツイートを挟み込むという地味かつ執拗な「テロ行為」を続けてきました。

いやいや、振り返ればその3年半の道のりはけっして平坦ではありませんでした。友人知人のあいだでは「なにやら岩間がアイドルにどハマりしたらしいwww」と失笑を買い、またツイッターのフォロワー数がポロポロと減ったりもしました(オタクのフォロワーはむしろ増えた!)。

しかし、もはやそんなことはどうでもいい!!!

ぼくは、ただただうれしいのです。「これはいい」と信じて推してきたものが多くの人たちの元にたしかに届き、また受け入れられたそのことが。

最高に悔しいのは、「届かない」ことである。

これはジャパネットたかたを創業した高田明さんがどこかで話していたことですが、「これはいい」と思った商品が自分たちのやり方のせいでうまく伝わらず、結果、ないものとされてしまうことほど悲しく腹立たしいことはない。

この感覚、ほんとうによくわかるんですよね。2002年に、おそらく日本で初めて北欧フィンランドをコンセプトとしたカフェを始めたときの動機もまさにそれでした。

当時はまだ、北欧に行ったことのある人というのはちょっとお金持ちの年配の方か、若いひとだと建築やデザインを学んでいるような人が少しいるといった程度。フィンランドを「フィリピン」と言い間違える人がほんとうに多かった。フィンランドより、フィリピンの方がはるかにはじみ深い国だったのですよね。

そんななか、こんなすてきな国があるのに行ったことがない、知らないという人が多すぎるのは悔しい! と東京・荻窪に「moi 」というカフェをつくったのでした。

なぜ「カフェ」かというと、SNSはおろか、まだインターネットさえまともに普及していなかった当時、フィンランドの「よさ」を気楽に知ってもらうことのできる方法として飲食という業態はうってつけと思われたからです。

届いていて興味がない、好きではないというのは、もうどうしようもないことでしょう。でも、どこかにまだ興味を持ったり好きになる可能性のある人たちがいるとしたら? それは、なんとしても「届ける」べきだと思うのですよね。だって、自分だったら「エーッ、なんで教えてくれないんだよ!」と怒り出すはずだから。

いま、ぼくらは「moicafe.com」というフィンランドに特化したポータルサイトをつくっています。ようやく完成が見えてきたところです。

これをやろうと思ったきっかけもまったく同じで、

巷にフィンランドの情報はあふれているけれど、まだまだ本当に必要としている人の元には届いていない、そんな歯がゆさをずっと感じてきたからです。

せっかくいい商品や情報があるのなら、それがしっかりと「届く」ためのプラットフォームをつくりたい。

幸い、20年近く北欧カフェを続けてきたことで、ぼくは日々たくさんの北欧ファンの生の声に触れる機会に恵まれました。と同時に、他方では、北欧が大好きで、「これはいい」と思える商品や情報を仕事として扱っていらっしゃる方々と知り合う機会にも恵まれました。これはもう、いつもの「おせっかい精神」でその双方がわいわいと楽しくつながることのできる仕組みをつくるしかないじゃないですか。

ぼくが、カフェを続けてきて得た結論はじつはとてもシンプルなものです。飲食でも物販でもかまわないのですが、そこで行われていることはたしかにモノの売買なのだけど、実際にはモノの売買を介して思いを「共有」しているのだということです。その理由はとても単純で、ただただ

みんなフィンランドが大好き

だからです。こんないいものを見つけちゃった!/そうそうこんなものを探してた! そんな関係。ぼくらの「moicafe.com」は、その関係を最良のかたちで実現したいのです。

また、ぼくは8年間のサラリーマン生活の中で組織で実現できることの限界を知り個人でお店を始めたのですが、17年間ひとりで経営を続けるなかで思い知ったこともあります。それは、ひとりであるとか、また少人数でできることにもやはり限界があるという現実です。

それは単純に物理的な問題、マンパワーの問題でできないことがあるというだけでなく、人はどうしてもいまの自分(たち)に考えつくことしか実現できないという、当たり前といえば当たり前の事実です。いろいろな考えの持ち主がいる大企業ならいざ知らず、個人であったり中小企業であったりするとその「壁」は想像以上に高く、マンネリ化してしまいがちというのがぼく個人の反省でもあります。

もっとシンプルに、自分にできないことは他人に頼る、反対に、他人ができないことは自分が手助けする。自分がわだかまりを捨てたとき、はじめて見えてきたこと。「moicafe.com」では、そうした信頼関係にもとづくアイデアもまた試していきたいと思っています。

フィンランドが好き、「いいもの」を届けたい、こうした理念が共有されている以上、それはけっして難しいことではないでしょう。

フィロソフィーのダンスに話は戻ります。この4人、ほんとうにキャラも声の質もバラバラなんですよね。よく「同じクラスでも絶対に仲よくならない人たち」などと言われたりしますが。

そんな彼女たちが、ここまでたどり着いた理由はふたつあります。

①「売れたい!」という理念を共有していること
この4人、それぞれシンガーソングライター出身、バンド出身だったり、アイドル活動を続けながらもいまひとつ芽が出なかったり、ひきこもり気味なおたくだったりとルーツからしてバラバラなのですが、それぞれ思ったように結果を出せない人生を歩んできた過去があるからこそ「腹を括れた」のがなにより大きいと思うのです。個性の異なる者たちがひとつの目的のもとに一丸となって闘う、ストーリーとしてもう秀逸じゃないですか。

②バラバラな個性が「武器」に
自由さ、同調圧力のないことがフィロソフィーのダンスの魅力であり、武器であるとぼくは感じています。フィロソフィーのダンスが「変わった」と感じたのは、2017年の夏あたりのこと。ひとことで言うと、それぞれが自分の個性を隠さず、むしろどんどん前に押し出しはじめたのでした。それを互いに牽制したり、諌めたりしたらいまのような成功はなかったでしょう。逆に、それぞれがそれぞれの個性を尊重し、面白がり、またファンも受け入れたのです。アイドルという、どちらかといえば「かわいい」という枠に収まってこその世界とは裏腹に、彼女たちはどんどん自由に、ますます自然体になっています。画期的です。

フィンランドという国も、本当にさまざまな個性をもっていますよね。お客様との雑談のなかでフィンランドに興味を抱いたきっかけを尋ねたりするのですが、返ってくる答えがバラバラですごく面白かったです。

ムーミン、デザインや建築、ヘビメタ、オーロラ、サンタクロース、シベリウス、モータースポーツ、ウィンタースポーツ、サウナ、アキ・カウリスマキ、森や湖といった自然……  まだまだあります。とはいえ、そう答える人たちに共通するふしぎに穏やかな空気感にも気づきました。

それぞれの「好き」はちがっても、「フィンランドが好き」という共通の思いによってつながることのできるプラットフォーム、「moicafe.com」はそれをめざしています。

「いいもの」であるかぎり、それを確実に「届ける」ことはかならずしも困難ではないはずです。もしそこに共通の理念と信頼関係、そして少しのアイデアさえあれば。日本のフィンランドファンが集まったとき、そこにどんな空気が生まれるでしょう。ちょっと想像しただけでもなんだかワクワクするのです。

ここから先は

0字

¥ 100

サポートいただいた金額は、すべて高齢者や子育て中のみなさん、お仕事で疲れているみなさんのための新たな居場所づくりの経費として大切に使わせて頂きます。