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日々のことば #78-#81

78.気を吹き込まれる

これはよく知られるところだが、「他人からありがたがられない話」第一位といえば自分がみた夢の話である。だが、夢の話のやっかいなところは、そうと分かっていても話さずにはいられないところにある。

何日か前のこと、巫女のかっこうをした女性から首のうしろのツボに「気」を吹き込まれる夢をみた。そのツボの位置にはだるまのシールが貼られていて、巫女さんはそれを剥がしてから僕の両肩に手をかけ、呪文を唱えながらフーーーッと勢いよく「気」を吹き込む。あとになって調べたら、それは「大椎」というれっきとしたツボであった。

夢だなとわかるのは、絶対に見えるはずないのに僕にはだるまのシールがきれいに剥がれていないのが見え、施術されながらもずっとそれが気になっていることだ。ふと、頭をあげると

施術料三千円〜

目線の先にそんな張り紙がみえる。数回「気」を吹き込んだ後(「気」を吹き込まれると、そのたび全身に電気が走り寒気がする)、巫女のかっこうをした女性によって料金システムの説明がある。

一応、最低三千円となっているが、この施術の価値がわかっていればまさか三千円ということはないでしょうね、といったことを遠回しに言いつつ(たぶん三千円〜という張り紙を見ていたことがバレている)、そちらから料金は提案するよう促される。なかなかいやらしいシステムだ。そして、逆に提案しろという意味なのだろうが、その巫女さんのかっこうをした女性は厳かにこう言うのだった。

「では、逆さまにお願いします」

「じゃあ、五千円で」

ぼくがそう答えるとうしろでフッと笑ったような気がし、そこで目が覚めた。

他人の夢の話は退屈というが、これは荒唐無稽でちょっと面白いのではないかと思い、先日会った知人にさっそく話してみたところ

大丈夫ですか? なんかあったんですか?

と真顔で心配されてしまった。

やっぱり夢の話なんてひとにするもんじゃないと思った。

79.インドア酒場

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