見出し画像

シカゴポストロック再訪 Oval/Systemisch

オヴァルといえばドイツのユニットだけれど、なによりもシカゴのスリルジョッキーが配給しているのと、ガスター・デル・ソルでの客演ながあり縁は浅くない。

初期の「システミスク」やep「エアロ・デック」など、今の耳で聞くと思ったよりもリズムや和音があり、ポストオルタナティブみたいなノイジーさは希薄に感じる。

エレクトロニカといえばオヴァルと言う人も少なくないのではないだろうか。

エレクトロニカというジャンルがかつてもっていた可能性は、従来のリズムや和音から離れつつも、出音は何故か聴きやすいという新たなポップのフィールドを開拓したところにあると思う。この「システミスク」の時点で、その点はクリアしていたと感じる。

その後、90年代末からオヴァルことマーカス・ポップがソニーの出資で作り上げようとしたソフトウェア「オヴァルプロセス」は結局、暗礁に乗り上げ当初の形ではリリースされなかった。
オヴァルプロセスは誰でもオヴァルの音を作り上げることができるというコンセプトのもと作られていた。
これが暗礁に乗り上げたのは、マーカス・ポップがオヴァルプロセスを説明するセミナーが日本で行われ、そこで議論されたことがきっかけだったのかもしれない。

セミナーの細かい内容までは覚えていないものの、マーカス・ポップと数人の教授だか、批評家(佐々木敦氏が壇上の仲を取り持っていた)に対してオヴァルプロセスを説明していた。
しかし論壇が時間を重ねるごとに険悪なムードに包まれていた。

要点を得ないオヴァルプロセスの説明にマーカス・ポップが突っ込まれたのは、彼が掲げていた「誰でもオヴァルの音が作れる」というテーマに対して、最初からそういった音が組み込まれているなら、オヴァルの音になるのは当然ではないか?という内容だったと思う。

対してマーカス・ポップは「オヴァルはパンクロックだ」と主張していて、両者は最後まで平行線を漂っていた。アカデミックなものを求めている人たちと、「これはアカデミックではない」と言いたげなマーカス・ポップ。
(佐々木氏は両者の間をなだめるように挟まれていた)

オヴァルプロセスは十年近く後にアルバム「DNA」のオマケのような形でリリースされたものの、恐らく当初のイメージとは違った形になったのではないかと思われる。

青山スパイラルで展示されていたオヴァルプロセスに一度だけ触れたことがあるが、結局のところこのソフトウェアがはっきりと何をしたいのかが不明瞭なまま印象があり、それは今に至る。

オヴァルプロセスが頓挫したのはエレクトロニカの可能性のひとつが潰えたトピックのひとつだったかもしれないし、逆にそこまで大きな存在ではなかったとも言えるかもしれない。期待の大きさに嫌気がさした結果なのかもしれない。

https://itunes.apple.com/jp/album/systemisch/1169216481

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?