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Guinga & Monica Salmaso Japan Tour 東京公演を観て

練馬文化センターで行われたギンガとモニカ・サウマーゾのライブを観てきた。

なんて豊潤な音楽なんだろう。演奏から立ち込める情景と香り。まるで映画音楽のような雰囲気があった。
ギンガの弾くヴィオラォンが会場全体を包み込みながら、モニカの歌とテコ・カルドーゾのソプラノサックスとバスフルート、ナイロール・プロヴェッタのクラリネットとソプラノサックスが織りなすアンサンブルの大らかだけれど息があった演奏に目頭が熱くなった。

ブラジル音楽の特徴として、前景は主旋律は単旋律が主で(所々2声になっていた)、後景に豊かな和音が奏でられる。そこから立ち上がる音のパースペクティブは押し付けがましくなく、奥ゆかしい立体感を生み出している。押し付けがましい表現は皆無で、あくまでも四人がそれぞれ役割を担いながら最高のパフォーマンスを引き出しているのが、冒頭一曲目から現れていた。

何より感銘を受けたのがモニカが叩くトライアングルの音色とグルーヴ。もちろんパンデイロも素晴らしかったが、トライアングルの響きが心地よかった。四者ともリズムを引っ張る事なく、余裕を見せる所に凄まじいテクニックが裏打ちされた表現に圧倒された。
モニカの歌も素晴らしく、包容感のある歌声とブレることのないリズム、低い音程も歌いこなす表現に心を揺さぶられた。

ギンガのヴィオラォンは形容しがたい。聴いていてショーロやジョアン・ジルベルトの影響を感じつつもそれらとは異なる表現がありつつ、ブラジルらしい和音が奏でられていた。バーデン・パウエルのようにクラシカルな表現は皆無で、ジャズのようなあからさまに洗練されたコードに頼る表現とは違い、独特の演奏を奏でていた。アナライズしにくいプレイであるものの、音がぶつかるような開放弦を頻繁に使用したり、オルタードを使うような不協和音はあまり見受けられなかった。
単音フレーズを織り込みながらも、和音フレーズの中に潜むメロディは他のメンバーが補いながら、わかりやすい形で奏でられている。ギンガ以外の3人のインテルプリチ(インタープリター)としての素質がよくわかる演奏だった。

欲を言えばギンガのヴィオラォンがピエゾのライン取りだったので、出来ればマイクで集音して欲しかった。個人的にピエゾの音色は好みでないので、押弦するたびにピエゾ独特のノイズが気になってしょうがなかった。あのアンサンブルで安パイをとれば仕方ないことなのだけど。

キーのメジャー、マイナーに止まらないサウダーヂの奥深さを感じることが出来た素晴らしい演奏だったと思う。感情の機微を捉えた明るさの中の暗さや、暗さの中に潜む希望を表現するブラジル音楽の奥深さの一端に触れる幅広さに脱帽。
しっかり堪能してきました。

公式のツイートでセットリストが出ていたので、貼り付けておきます。




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